逗子マリーナから荒海に乗り出したノリック(カメラ=遠藤智)
逗子マリーナから荒海に乗り出したノリック(カメラ=遠藤智)
「獲るぞ、日本人初500CC王者」

 21世紀最初のシーズンに悲願のWGP500CCチャンピオンを目指すノリックこと阿部典史が、正月早々、神奈川県・逗子マリーナで誓いの船出――。レーシングスーツでヨットに乗り込み、タイトル獲りへの意気込みを見せた。荒れた海にこぎだしたノリックが正念場の2001年を語る。(聞き手=遠藤智)
 ――21世紀を迎えどんな気持ちですか?

 ノリック「いや、21世紀になっても気持ちはあまり変わらないですね(笑い)。本当は記念すべき時で、貴重な体験だと思うけど、実感がない。何だかもったいないですね(笑い)。後になって、ああ、あの時は、と思い出すのかもしれないですね」

 ――正月にヨット。しかも海は荒れていたし何となく今季を象徴している?

 「そうですね。天気はいいけど強風で海は大荒れ。今季を予感、でしたね。すごい波で、船体が横になるほどだった。でもヨットは絶対に沈まない、転んでも絶対に起きあがるって聞いていたし、満喫できましたね」

 ――これまでもスカイダイビング、ロッククライミングなど正月にはいろいろなことをしてくれたけど。

 「もっと長い間、乗っていられればよかったんですけどね。ずぶぬれになってとんでもない経験ができたかも(笑い)。でも、船に乗るチャンスはあまりないし、海の上に立つのは新鮮だった。しかもレーシングスーツを着てですからね(笑い)」

 ――それにしても今年のノリックはいい顔をしている。初もうででいいことあったんじゃないの?

 「そうなんですよ(笑い)。初めて大吉を引いた。それに去年まで厄年だったんですけど、今年、厄があけたんです。去年の暮れに鎖骨のプレートを抜く手術をして、10年ぶりにきれいな体になって心身ともにさっぱり(笑い)。だから今年はいい年になりそうな気がするし、しなくちゃいけないと思っている」

 ――21世紀の旅立ちにふさわしい言葉。今年は絶対にチャンピオン、ですね。

 「いつも目標は同じです。でも今年は開幕まで焦らずじっくりとバイクを仕上げていきたい。テストではどうしてもタイムを狙うことになるし、その場だけのセッティングになってしまう。今年は本番に向けて、しっかりとしたベースを作っていきたいですね」

 ――今年はフル参戦7年目。ベテランといっていいシーズンになりますよね。

 「キャリアだけ見たら、僕より長い選手は少なくなってきているし、後から来た選手が増えている。いつも優勝を狙っているけど、後から500CCに来た選手には絶対に負けられないという気持ちで走ります」

 ――今年のヤマハは500CCを走る日本人選手がノリックを入れて3人いますね。

 「当然ファンの人は日本人選手の活躍が気になると思うし、興味を持って見てもらえると思うけれど、その中でも、僕に頑張れと声援を送ってもらえるようなポジションをいつも走りたい。今年は開幕戦が鈴鹿。毎年、シーズン序盤にツキのないマレーシアがあってつまずいていたけど、今年はシーズン終盤になったので(笑い)、とにかく序盤からがんがんいきたい」

 ――ノリックが優勝争いをすると、レースは盛り上がる。今年は?

 「振り返れば悔しいレースはいっぱいあるんですけどね。今年はそれを反対にしたいですね」

 ――期待していますよ。それにしても正月から逗子までお疲れさまでした。

 「いえいえ(笑い)。今回ヨットを出してくれた“ファンデーション”のクルーの人たちには、感謝の言葉もありません。世界のあちらこちらでレースをしている人たちばかりなんですけど、みんな、レースをよく見てくれているし、すごく詳しいんでびっくりしました。で、面白かったのはヨットレースはだれも見ていない海の上でやっているけど、僕らはみんなの声援がある所で走っている。それがうらやましいといわれた(笑い)。でも話を聞いていて、チーム全体が力を合わせるという点では同じだなと思った」

 ――倒れても倒れてもヨットは起き上がる。ノリックもこれまで何度も悔しい思いをしてきたけど、今年はそれをバネにして起き上がるシーズン。チャンピオン争いをするシーズンですね。

 「本当にそうですね。そうしたいですね」

 ――今年は正月早々から仕事をこなしたし、きっといい1年になると思うよ(笑い)。

 「はい、絶対にそうなるよう、もっともっと頑張ります」
ヨットの「ファンデーション」スタッフをバックにタイトル獲りを誓うノリック
ヨットの「ファンデーション」スタッフをバックにタイトル獲りを誓うノリック