
今季のラインナップが続々と発表されています。世界耐久選手権(EWC)には、野左根航汰が「YARTヤマハ・オフィシャルEWCチーム」の正式ライダーとしてレギュラー参戦することが発表されました。EWCに若いライダーが挑み、途方もないと思えるほど、サーキットをグルグルと回るというレースは、過酷ではありますが、懐が深い、たくさんのことを学べる場ではないかと思います。走ることがお仕事のライダーにとって、願ってもない環境があるのがEWCです。それは若手だけでなく、レジェンドライダーにとっても同じです。エントリーリストに、かつて世界を舞台に戦ったライダーの名を見つけることは珍しくありません。
そのひとりが、昨年のボルドール24時間耐久に挑戦した伊藤真一でした。現在、伊藤はホンダの若手ライダーの育成のために相談役として全日本ロードレース選手権を訪れています。実は昨年、TSRの藤井正和監督から、24時間耐久参戦を打診されていましたが、難しいと返答していたそうです。ですが、相談役としての仕事のスケジュールを調整することができ、ホンダサイドの了承がとれたのが、まさにTSRの世界耐久選手権(EWC)参戦発表会の日でした。2016年9月7日に参戦が決まり、9月17日〜18日開催の24時間に挑むことになったのです。
「本気?」と電話したら、伊藤は「そうみたいだね」と他人事のようでした。「最近、飲み過ぎで、身体を絞ろうかなと思っていたんだけど…」だって。レース参戦は2014年鈴鹿8時間耐久以来で、24時間に挑むのは初めてでした。「一度は出てみたいと思っていたんだ」と言いますが、準備期間は1週間もありませんでした。舞台は南仏、マニクール。ブリヂストンのテストライダーだった伊藤は、マニクールを何度か走ったことがあり、まったく知らないサーキットではないし、少しは助かるかなと、希望を持って現地入りしたそうですが、耐久コースはテストコースのレイアウトと違い、その希望的観測は打ち砕かれることになります。
フランスのお家芸のような耐久レースは、新参者には辛いタイムスケジュールで、レースウィークに入ってしまうとほとんど走行の機会がなく、本番で速さを磨いて行くしかありません。それは、TSR(伊藤真一/渡辺一馬/ダミアン・カドリン)、トリックスター(出口修/井筒仁康/エルワン・ニゴン)と、このとき参戦した日本人ライダーも同じ。ですが、急遽参戦が決まった伊藤は、多くのハンデを背負っていたように思います。
そのひとりが、昨年のボルドール24時間耐久に挑戦した伊藤真一でした。現在、伊藤はホンダの若手ライダーの育成のために相談役として全日本ロードレース選手権を訪れています。実は昨年、TSRの藤井正和監督から、24時間耐久参戦を打診されていましたが、難しいと返答していたそうです。ですが、相談役としての仕事のスケジュールを調整することができ、ホンダサイドの了承がとれたのが、まさにTSRの世界耐久選手権(EWC)参戦発表会の日でした。2016年9月7日に参戦が決まり、9月17日〜18日開催の24時間に挑むことになったのです。
「本気?」と電話したら、伊藤は「そうみたいだね」と他人事のようでした。「最近、飲み過ぎで、身体を絞ろうかなと思っていたんだけど…」だって。レース参戦は2014年鈴鹿8時間耐久以来で、24時間に挑むのは初めてでした。「一度は出てみたいと思っていたんだ」と言いますが、準備期間は1週間もありませんでした。舞台は南仏、マニクール。ブリヂストンのテストライダーだった伊藤は、マニクールを何度か走ったことがあり、まったく知らないサーキットではないし、少しは助かるかなと、希望を持って現地入りしたそうですが、耐久コースはテストコースのレイアウトと違い、その希望的観測は打ち砕かれることになります。
フランスのお家芸のような耐久レースは、新参者には辛いタイムスケジュールで、レースウィークに入ってしまうとほとんど走行の機会がなく、本番で速さを磨いて行くしかありません。それは、TSR(伊藤真一/渡辺一馬/ダミアン・カドリン)、トリックスター(出口修/井筒仁康/エルワン・ニゴン)と、このとき参戦した日本人ライダーも同じ。ですが、急遽参戦が決まった伊藤は、多くのハンデを背負っていたように思います。

さらにアクシデントが襲います。レース走向中、目に石があたり、視力が奪われ、それを庇うように周回をこなしたことで、夜半に身体が動かなくなってしまいました。一度、チームメイトの渡辺一馬に走行を変わってもらいますが、それ以外は、与えられたパートをきっちりこなし、チームを牽引する走りを見せます。赤く爛れた痛々しい目、容赦なく襲う疲労、寒さとも戦いながらコースへと飛び出して行く彼の底力に、私たちは圧倒され続けることになるのです。
結果、TSRは5位でチェッカーを受け、伊藤は「準備に3ヶ月ほしかったな」と走りに納得しきれてないようではありましたが、思いのほか爽やかな笑顔で「いい思い出が出来たよ」と語りってくれました。「トリックスターは3位だね。井筒も出口も頑張っていたから、負けられないって走り切れたような気がする。おめでとうと言いたい」と、表彰台前に詰めかけた人波をかき分けて、ふたりを祝福していました。出口は「伊藤さんに褒めてもらえるなんて、こんな光栄なことはない」と喜び倍増。井筒は「伊藤さんがおめでとうって声をかけに来てくれた。俺だったら出来ないなぁ〜って思う。伊藤さんは本当に優しい人なんだなって思った」としみじみ。
伊藤が飛び切り優しい人であることは間違いないのですが、耐久レースの過酷さは、人と人を結び付けます。それは、ライバルチームであってもです。同じ過酷さをくぐり抜けたからこそ分かり合える絆、24時間後の同じチェッカーを目指した連帯感が、サーキットを包み、優しい気持ちがあふれてしまうような気がします。また、今年もEWCには、ドラマがいっぱい紡がれるのだと思うと楽しみになりません。
結果、TSRは5位でチェッカーを受け、伊藤は「準備に3ヶ月ほしかったな」と走りに納得しきれてないようではありましたが、思いのほか爽やかな笑顔で「いい思い出が出来たよ」と語りってくれました。「トリックスターは3位だね。井筒も出口も頑張っていたから、負けられないって走り切れたような気がする。おめでとうと言いたい」と、表彰台前に詰めかけた人波をかき分けて、ふたりを祝福していました。出口は「伊藤さんに褒めてもらえるなんて、こんな光栄なことはない」と喜び倍増。井筒は「伊藤さんがおめでとうって声をかけに来てくれた。俺だったら出来ないなぁ〜って思う。伊藤さんは本当に優しい人なんだなって思った」としみじみ。
伊藤が飛び切り優しい人であることは間違いないのですが、耐久レースの過酷さは、人と人を結び付けます。それは、ライバルチームであってもです。同じ過酷さをくぐり抜けたからこそ分かり合える絆、24時間後の同じチェッカーを目指した連帯感が、サーキットを包み、優しい気持ちがあふれてしまうような気がします。また、今年もEWCには、ドラマがいっぱい紡がれるのだと思うと楽しみになりません。

今回は、超人としか思えない伊藤さんが出演しているドラマのお知らせ。私が作らせて頂いた伊藤さんの記念本が少しだけ、登場しているそうです。どこで、出てくるのかチェックして下さい。