新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2度目の緊急事態宣言が発出され、不安な日々が続いています。例年なら、オフシーズンはライダーたちにとってトレーニングやテストと忙しなく過ごす時期ですが、自宅トレーニングが中心で、外出する際には感染対策を考えてオフロードで走るなど工夫してトレーニングしているようです。今シーズンがスケジュール通りに始まることを願いながら、注目のライダーを紹介して行こうと思います。

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 まずは、海外参戦で確実に力を蓄えている浦本修充です。

 JEG RACING TEAMに所属、SUZUKI GSX−R1000を駆り、スペインスーパーバイク選手権(ESBK)ならびにFIM世界耐久ロードレース選手権(EWC)を戦い、今年も同じ体制で参戦予定です。2016年全日本JGP2でタイトルを獲得。2017年にはESBKにスポット参戦し、翌年からフル参戦を開始、活動の場を欧州へと移します。

 ESBKは、スペインの強豪が集う戦いで、スーパーバイク世界選手権(WSB)への登竜門として知られています。ロードレース世界選手権で活躍するスペイン人の多さが示す通りで、国内選手権でもハイレベルな激闘が繰り広げられています。そこで切磋琢磨する浦本は「日本からではなくスペインから世界へのチャンスを掴みたい」と、決意を持って海を渡りました。自身を鍛えられるフィールドであると確認したからです。
 2019年、スペインスーパーバイク選手権では最高位が4位、ランキング5位でシーズンを終えました。同年のEWCでは、ボルドールとセパンの開幕戦からの2戦に参戦し、元モトGPライダーやEWCトップライダーと互角以上の戦いを見せ、その成長を強く印象付けました。浦本はスズキのモトGPのテストライダーでもあり、その力がマシン開発にも生かされ、2020年のモトGPでは、ジョアン・ミルがスズキに20年ぶりのタイトルをもたらしています。

 昨季の浦本は、スペインスーパーバイク選手権での初優勝、そして初のタイトル獲得を目標に、EWCは最終戦・鈴鹿8時間耐久ロードレース選手権までのフル参戦が決定していました。

 スペインスーパーバイク選手権は、プレシーズンテストは行われたものの、その後のコロナウイルスの感染拡大を受けてシーズン開幕が延期となり、第5戦で予定されていた7月25日のナバラ・サーキットでようやく開幕、シーズンは6ラウンド、2レース開催となり、全12レースで戦われることになりました。

 迎えたシーズン初レース、事前テストから参加した浦本は、自己ベストを更新しますが、予選9番手、レース1を6位で終え、レース2は5位で終えました。第2戦はサーキット・バルセロナ−カタルニア、ここも目標タイムを超えるも予選9番手、ですがレース1のスタートを決めて2周目にはファステストタイムを記録、怒涛の追い上げを見せますが、トラブル発生でピットインとなり、悔しさを抱えたままフィニッシュ。その悔しさを次のレース2にぶつけ、見事に初優勝を飾りました。

 浦本は「かなりうれしくて浮かれていますが、気を引き締めて後半戦を戦います」と現地から喜びの声を届けてくれました。日本でも優勝の吉報に多くのレースファンが祝杯を挙げていました。スペインスーパーバイク選手権での勝利は日本人ライダー初の快挙。スペイン人もびっくりの快進撃でした。

 第3戦リカルド・トルモ・サーキットでは、予選7番手で迎えたレース1は3位表彰台を獲得、レース2は6位でした。第4戦ヘレスサーキットでは予選6番手からレース1で4位。レース2は5位チェッカー。第5戦はナバラサーキットでは、レース1で表彰台目前となりながらも幅寄せされて転倒リタイヤ。続くレース2は6位でした。

 最終戦はヘレスサーキット。雨で転倒する場面もありまたが、予選ではポールポジションを獲得します。2勝目の期待が高まったレース1は6位。レース2、浦本は5台によるトップ争いを展開、14周目にはファステストラップを記録し、トップの背後に付けデッドヒートを展開。そして最終コーナーで浦本がトップのライダーを鮮やかにとらえ、そのままチェッカー。今季2勝目を挙げるのです。

 2020年スペインスーパーバイク選手権、浦本は2勝を挙げランキング4位となり、シーズンを終えました。
 全日本時代、浦本は清成龍一宅に居候し、自らを厳しく律してレースに臨む清成とともにトレーニングに励んできました。浦本は「その取り組みがやっと結果に結びついてきたように思う」と語ります。

 「清成さんを目標、お手本に、レースウイークの過ごし方やトレーニングなど盗めるものは盗みたいと思い、一緒に過ごしていました。スペインでもそのときに学んだことを応用してきたつもりです。どのシーズンも懸命に最大限がんばってきたけど、2020年は厳しさの意味が分かったと言うか…。1周1周、ひとつひとつのコーナー、全てを諦めずに攻め続けることができ、それが優勝につながったのだと思います。モトGPのテストに参加していることも大きい。世界最高のバイクに乗れることで、バイクの理想形を描け、スペインスーパーバイクのマシンセッティングもより具体的になりました。進歩できたと思います」
 レースウイークの走り始めから冷静に全力で挑むこと、現状のベストを尽くすことで、見えてくることが多くあったと言います。レースへの執着、熱量が、浦本のレベルを大きく引き上げたのです。

 今季は間違いなくチャンピオン候補としてESBKに挑みます。「見てくれている人が必ずいるとを信じ、結果を引き寄せます」と力強い言葉が響きました。チャンス来ないと嘆くことなく、自分から掴みにいく浦本、さらなる成長が楽しみです。今後、WSBにステップアップして、高橋巧(まだ未定らしいですが)や野左根航汰らと、トップ争いをしてくれたら、こんなワクワクすることはない。そして、鈴鹿8耐に優勝候補として凱旋してほしい。スズキが浦本を大事に育ててくれることにも期待が高まります。新たなスター誕生の予感が渦巻いているのです。