意思を受け継ぐヨシムラ、EWC開幕戦から勝利を!
 今季も、新型コロナウイルスの影響でテストスケジュールなどの変更、カレンダーが変わるなど、まだまだ落ち着かない状況が続いています。それでも、ロードレース世界選手権(WGP)など国内外のレースは開幕に向けて動き出しています。

 世界耐久選手権(EWC)は、ヨシムラが本格フル参戦することで注目度が上がっています。3月上旬には、開幕戦ルマン24時間耐久(4月17日〜18日)に向けた事前テストが開催、出発直前までヨシムラスタッフがフランスに行けるのか?、という不安もありましたが、なんとかヨシムラの加藤陽平監督もライダー渡辺一樹も渡欧して、無事テスト参加できました。

 この事前テストに向け、千葉県袖ケ浦スピードウェイでマシンの最終調整を行い、青木宣篤も参加していました。

 本来なら、スズキのテストコースで確認テストを行う予定でしたが、緊急事態宣言にともなう自粛期間もあり、大きな移動はできないため、袖ケ浦スピードウェイでさまざま活動している青木が助っ人として参加、ヨシムラマシンに試乗することになったのです。

 最終調整テストは短い時間でしたが、「5年ぶりにヨシムラマシンに乗ったけど、以前はそれぞれにポテンシャルは高いが、バラバラな印象があった。それが今はすんなりとまとまり、完成度が上がっていることを実感した」とコメントしていました。
 青木は10歳でポケットバイクに乗り始め、青木3兄弟(長男宣篤、次男拓磨、三男治親)で話題となり、3人が並んでコーナーリングする写真はとても有名でした。そこからミニバイク、全日本と活躍。1993年、ホンダの岡田忠之、ヤマハの原田哲也らとともに、WGPの舞台に旅立つのです。

 岡田、原田はワークスライダーでしたが、青木はプライベート参戦。「トップ争いをしていたふたりが海外に行くなら、自分も」と、その情熱のままに参戦を開始。97年には最高峰500へスイッチ、初年度ながら、王者ミック・ドゥーハンとトップ争いを繰り広げ、類まれな才能を示し、ランキング3位まで浮上して堂々のルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得するのです。

 その活躍が認められ、1998年からはWGPスズキワークスに迎えられました。2001年には、WGP最高峰への挑戦を決めたブリヂストンタイヤのテストライダーをこなし、2002年からはプロトンでWGPモトGP復帰、2005年からはスズキのモトGPテストライダーに。また、鈴鹿8時間耐久ロードレースにもヨシムラから参戦し、2009年には優勝を飾りました。
 近年は鈴鹿8耐参戦をライフワークとしてきましたが、昨年ひさしぶりに会った青木から「今年の8耐を引退レースにする」と聞きました。青木は「順位を追い求めるのがレース、それをここまでやってこられたことが幸せ。ライダーは走るところがなくなって、辞めたくなくても終わることが多い。でも、自分の意志でレースを辞めると決められるのは幸せ」と語りました。

 そして、引退レースを国内でもっとも大きなレース「鈴鹿8耐」と決めました。ここ5年くらい「最後かな」という思いを抱きながら、鈴鹿8耐参戦をしてきたと言います。昨年は鈴鹿8耐が中止となり、引退も持ち越しに。今季はEWC参戦経験も豊富なライダー寺本幸司と、チーム「TERAMOTO@J−TRIP Racing」からスズキGSX−R1000Rで参戦予定です。

 「プライベートでWGP参戦したときは大変だったけど、あの時があったから、雑草根性と言うのか、踏みつけられても立ち上がる、強い気持ちができたと思う。ライダーとして結果が残っている97年だが、心に残るのはテストライダーとして代役で出た2005年バレンシア。追い上げて、追い上げて、マシンが壊れた。がっかりしたが、力を出し切ったと思えたからだと思う」

 1989年、「カップヌードル・レーシングチーム」から参戦する青木3兄弟の活躍は、当時テレビ番組で何度も取り上げられ、広く世間一般に認知され、モータースポーツを広めてくれました。キャンペーンガールがタレントの岡本夏生、ZARDの坂井泉水さんだったことでも話題でした。1997年には「ウルトラマンレーシングチーム」で鈴鹿8耐を走り、子供たちの夢を背負って声援を集めました。

 スズキでの活躍だけでなく、ヨシムラでも躍進。私が最も印象に残っているのは、1997年WGP、オランダ・アッセンで王者ミック・ドゥーハンに次いで2位になったレース。GP500挑戦1年目での快挙、レースに目が釘付けになりました。多くのメーカーのマシンを乗り、タイヤテストもこなし、ライダーとしての豊富なスキルはライダーとしての宝箱のようです。
 青木は「勝ち負けのレースは引退しても、開発テストなどで声がかかれば、いつでも準備はしておく」と言いました。またどこかで、その手腕を発揮してくれる機会は残されていますが、ライダー・青木宣篤のラストレースは、延期が発表されたばかりの鈴鹿8耐(11月7日)になります。その頃には、新型コロナウィルスの影響が収まり、グランドスタンドいっぱいの観客を前に青木が走れることを願っています。

 EWCは4月17〜18日でフランス、ルマン24時間耐久が開催されます。ヨシムラの挑戦も見逃せません。
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