チーム提供
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 海外で活躍する日本人ライダー紹介、3人目は大久保光。今季、大久保は全7戦で争われる電動バイクのチャンピオンシップ、FIM Enel MotoE World Cup(モトE)に初の日本人ライダーとして参戦しています。モトEはロードレース世界選手権(WGP)に組み込まれていて、大久保はWGPバドックの一員となりました。

 マシンは、イタリアの電動バイクメーカー「Energica Motor Company』が供給する「Ego Corsa(エゴ・コルサ)』という電動レーサーを使用、タイヤはミシュランのワンメーク。サーキットではあまり聞き馴染みのない“シューン”という電子音、260kgという車体の重さ、バッテリーの問題もあって周回数は短く、コースの距離によりますが、だいたい7周という短期決戦。YouTubeやTikTokなどをよく見るSNS世代の若者には、短いレースの方が良いという思惑もあるのだそうです。

 そして大久保は、WGPの名門チーム、アジョモータースポーツから参戦しています。大久保ひとりの1台体制で、これまでチームメイトとの対応の違いで苦渋を舐めて来た大久保にとっては願ってもない状況です。しかし、モトEはまだ3年目で歴史が浅いため、セッティングのデータも少なく、タイトなスケジュールで走行時間が少ないなど、ひとりでセットアップを考えるにはシビアな場面が多く、孤軍奮闘という状況のようです。また、ショーアップの意味を込めた予選は、スーパーポール形式。鈴鹿8耐でおなじみの1周限りのタイムアタックがあるようですが、知らないコースではなかなかタイムアップは難しいはず。大久保にとってはチャレンジングな戦いが続いているのです。
 開幕戦は5月2日のスペイン大会、18台で争われました。予選11番手で、4列目からスタートした大久保は、スタートダッシュで5番手まで浮上。そのポジションをキープしますが、残り3ラップで、フロントタイヤのライフが終わり、2台に抜かれて7位までポジションダウン。大久保は「走行時間が短いので、1ラップ1ラップの重要性も感じましたし、独特の予選方式に早く慣れてポジションを上げていきたいと思っています。難しいレースだと感じていますが、レースの面白さやライディングを探求していく楽しさは、これまでと変わりません」と初戦を終えました。

 2戦目はフランスのルマン(5月16日決勝)。24時間耐久でルマンを走った経験はありますが、モトEでは初です。予選はあいにくの雨で、スーパーポールではなく通常の予選形式で行われ、一旦は2番手タイムを記録しますが、黄旗が出たことでその周のタイムが無効となり、結局10番手。天候が回復して晴天で迎えた決勝レース、アジョ監督が「モトEはスタートがとても難しいが、こんな素晴らしいスタートは見たことがない」と感嘆するほどのスタートダッシュで大久保はポジションアップ、遂にトップに立ちましたが、追突されてリタイヤという残念な結果に。
 3戦目のカタルニア大会(6月6日決勝)では、予選11番手。決勝は6位までポジションアップしましたが、マシンがパワーダウンしてポジションダウン。安定してパワーを出し続けることが難しい局面もあり、今大会ポールポジションを獲得したエリック・グラナダも同様のトラブルでリタイヤを喫しました。大久保はなんとかパワーを維持して最後まで走り切り、結果9位となりました。

 4戦目のオランダ大会(6月27日)では、予選10番手から追い上げトップ争いに加わりますが、目の前でドミニク・エガーターが転倒し、そのあおりでトップ争いから離脱してしまいます。そこからさらに追い上げますが、終盤はタイヤのライフがきつくなり8位でチェッカー。
 大久保は「セッティングがシビアだと感じています。マシン重量があるので、(サスペンションの)イニシャルを4分の1変えただけで、別物のマシンになってしまいます。タイヤへの負担も大きく、マネージメントも重要です。課題はありますが、表彰台も勝利も、手の届くところにあると感じています」と語ります。

 結果はまだ残せてはいませんが、大久保は常にファステストラップを記録。第4戦目のオランダでは2番手につけていました。抜群のスタートと本来の速さで、優勝も現実のものになりそうだと感じています。オフの時間にはモトGPのジャック・ミラーや、モト3の鳥羽海渡とミニバイクトレーニングをするなど、スキルアップを図っているそうですよ。


 そして、その大久保が7月17日、18日の全日本ロードレース第5戦・鈴鹿MFJグランプリにエヴァRT初号機 Webike TRICK STARからJSB1000クラスにスポット参戦します。海外で鍛えられた大久保の走りに注目です。