佐藤洋美撮影
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 6月4日、5日に全日本ロードレース選手権第3戦スポーツランドSUGOが開催されます。最高峰クラスのJSB1000は鈴鹿2&4(4月23日、24日)、オートポリス2&4(5月21日、22日)でレースが行われましたが、他のクラス、ST1000、ST600、JGP3は開幕戦(4月2日、3日)から約2ケ月ぶり、ライダーとチームは待ちに待ったレースです。特に、開幕戦で悔しい思いをしたライダーにとっては、リベンジを期して武者震いをしているような気がします。
赤松孝撮影
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 私がそのひとりだと思っているのが、ロードレース世界選手権(WGP)で大活躍したレジェンドライダー岡田忠之の長男、秀之です。2007年、父・忠之が鈴鹿8時間耐久ロードレースにカルロス・チェカと組んで2位に入った頃、まだ小学生だった秀之が姉と一緒に表彰台に上がっていた姿を見て、以降、時々サーキットで顔を合わせることはありましたが、ライダーの彼を知りませんでした。

 父・忠之が「イデミツ・ホンダ・チーム・アジア」のチーム監督としてモト2、モト3に参戦していたころに秀之も同行していたと聞いて、レース運営に興味があるのかなと思っていましたが、「20歳になってバイクに乗り始めた」と言います。それ以来、父とともにスペインのダートレースに参戦するなど、だんだんとバイクにのめり込んでいったようです。翌年にはイタリアのレースも経験し、日本で鈴鹿サンデーロードレースへの参戦を開始。昨年鈴鹿サンデーロードレース・インターST1000クラスのチャンピオンを獲得し、今季全日本昇格を掴んだのです。チームは「AutoRace Ube Racing Team」、ST1000クラスにSUZUKI GSX−R1000Rを駆り参戦しています。チームメイトはスズキのモトGPマシンテストライダーでもある津田拓也です。
赤松孝撮影
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 父と同じライダーの道を選んだ秀之は「純粋にバイクを走らせることが楽しかった。乗り続けているうちに辞められないなと思うようになって…。乗り始めた時期も遅く、ここから父のように世界を目指せるほど甘い世界ではないのは分かっているけど、行けるところまで行きたいと思うようになりました」と決意を語ります。

 また、真剣にレースに向き合うことで、父の凄さをより感じることができたそうで、「父がWGPを戦っていた頃はまだ小さかったので、現役の姿はビデオでしか知らないのですが、WGP500のミック・ドゥーハンやアレックス・クリビーレといった世界チャンピオンと戦っていたことを、本当にすごいことだなと実感するようになり、より尊敬するようになりました。父のことを天才ライダーだと言う人もいますが、僕の周りの人は、努力の人だと言う人が多い。ホンダワークスライダーたちの合同トレーニングを終えた後、ひとりでランニングに出かけたり、見えないところで努力していたと聞きました。その姿勢は自分も真似できるところなので、しっかりと取り組んでいきたいと思います」といいます。
赤松孝撮影
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 プライベートライダーとしてレース参戦する秀之は、大工さんの仕事をしながらのレース活動。プロになれたらという淡い思いはあるようですが「まだまだなので、勉強させてもらいながら、少しでも速く走れるように頑張りたい」と語ります。

 父・忠之は「WGPの現場でレースを見ていたことが刺激になったのか、バイクに乗りたいと言い出したので、最低限のサポートはしようと思いましたが、何事も経験。失敗しないと何が悪いのか学べないので、基本は放任主義です。親離れ子離れ、自分で考えて、自分でやれることをやれば良いと思っています。幸運なことに、全日本で走らせてもらえるチームがあったことに感謝します。でも、この世界は本人次第。どう戦って行くのか、大きな期待はせずに見ていたい」という。
赤松孝撮影
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 開幕戦もてぎは、レース中には雨が止んで徐々に路面が乾いていく難しいコンディションの中、秀之は予選29番手からスタート。結果、ポジションアップして18位でチェッカーを受けました。2世ライダーが続々と誕生していますが、親の大きな背中を追いながらも、自分を見失わずに、バイクやレースに取り組む姿は清々しいものです。懸命に挑み、前を見ている秀之のこれからが純粋に楽しみです。
赤松孝撮影
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