石崎伸樹撮影
石崎伸樹撮影
 「AKENO SPEED・YAMAHA(アケノスピード・ヤマハ)」は、今年の鈴鹿8時間耐久ロードレース(8月7日決勝)に、稲垣誠(46)監督のもと、全日本ロードレース選手権ST600に参戦している伊達悠太(23)、阿部真生騎(18)、菅原陸(22)のライダー陣容を揃え、マシン「YAMAHAYZF−R1」でSSTクラス(改造範囲が狭く、ほぼ市販マシン)に挑みます。稲垣監督は「今年のST600は元気が良くて、ガチャガチャやっていて面白い。そこで戦う若手3人で、初めての鈴鹿8耐を伸び伸びと走ってくれたらいい」と語ります。
 アケノスピードは「元々は4輪のレースチームで、稲垣の父親から受け継いで40年」の老舗チーム。名前は「地元の伊勢市小俣町明野のアケノが由来」です。稲垣自身も2000年ごろからトップライダーとして全日本やアジア選手権で活躍、真摯にレースに向き合う姿勢に皆が尊敬し、ライダー兼監督としても走り続けてきました。

 今シーズンの全日本ロードST1000には南本宗一郎、ST600に井手翔太、伊達悠太が参戦しています。

 南本と井手、アジア選手権ASB1000に参戦する伊藤勇樹は、チーム「NCXX RACING with RIDERS CLUB」から鈴鹿8耐に参戦することになり、アケノスピードとはSSTクラス優勝を目指すライバルになります。鈴鹿8耐に12回連続ライダーとして挑戦し続けた稲垣ですが、今年は監督業に専念し、ライダーを支えることになりました。
 伊達選手は12歳で全日本デビューした天才ライダーで、現在ロードレース世界選手権(WGP)モト3で活躍する佐々木歩夢のライバルとして注目を集めた逸材です。2014年のアジアタレントカップでランキング2位、翌2015年はケガもありランキング5位、また同年はCEVレプソルモト3にも参戦していました。翌2016年からは世界挑戦を見据えて全日本JGP3に参戦。2017年にはJGP3チャンピオンとなり、2019年からST600に参戦を開始。今年は心機一転ホンダからヤマハへとマシンを乗り換え、アケノスピードで走り始めました。

 「ずっとWGPを目標にしていて、鈴鹿8耐を意識することがなかったんですが、2019年に鈴鹿4時間耐久の手伝いで現場を訪れ、そのときに初観戦しました。ジョナサン・レイ(カワサキ)を始め、世界で戦うライダーの走りはすごいなと…。今年は同じ舞台で走れると思うとうれしいですね。この機会に大きなバイクも乗れるというところを見せたい」と言います。
 天才ライダー阿部典史を父に持つ真生騎も、鈴鹿8耐は初参戦。真生騎は「伊達選手とは話したことがなかったけど、菅原選手とは一緒にトレーニングする仲間で知っていました。伊達選手ともすぐ打ち解けましたし、チームはとても良い雰囲気です。みんなで力を合わせて頑張りたい。自分のパートをしっかりこなすことを目標にします」と語ります。

 菅原は、鈴鹿8耐を「全日本ライダーだった父と一緒に出ることが夢でした。でも、2年前に父が亡くなり、その夢は果たせなくなりました。でも、ライダーとして8耐で活躍できるようになりたいと思っています。8耐テストもしんどかったのに、本戦はもっとすごいことになると覚悟しています。そんな大変な思いをするのだから、結果がほしい。初参戦ですが、3人で優勝目指します」と気合十分です。
 7月上旬に行われた8耐事前テストでは、伊達が2分10秒に乗せ、真生騎は11秒台、菅原が病み上がりながら12秒前半、と3人は初の1000ccに果敢に挑みました。「目指すはSST優勝」と語る稲垣監督が、初挑戦の若手3人をどう導くのか注目が集まっています。

 SSTクラスは世界耐久選手権(EWC)でも、近年人気が高まっているクラスです。EWCクラスを含めた総合順位とSST順位が付けられ、表彰式も別で行われます。アケノスピードは2015年総合22位で、SST2位を獲得。16年は総合53位でSST10位、2017年総合51位でSST6位。2018年は総合22位でSST3位と、表彰台に登りました。2019年はライダーのケガで決勝を走ることができませんでしたが、SSTで実績のあるチーム。期待は大きいのです。