〜MiniGPの撮影部隊〜
佐藤洋美撮影
佐藤洋美撮影
 FIM MiniGP World Seriesは、世界中の10歳から14歳までのライダーを対象に、レギュレーションを統一して可能な限りコストを抑えた大会として始まりました。今年は日本でも株式会社P−UP Worldが主催して初開催され、全5戦(10レース開催)のジャパンシリーズを制して年間チャンピオンに輝いたのは池上聖竜。その後、モトGP最終戦と同じウィークに開催されたファイナルレースへの参戦を果たし、総合3位を獲得しました。

 レース後にFIM会長ホルヘ・ビエガスは「モトGPに劣らない素晴らしいレースであり、モト3のようにコンマ数秒以内に10人がひしめく素晴らしい展開でした。これはモトGPへの道のりの第一歩です」と語りました。
 このファイナルレースへの出場権をかけた今季ジャパンシリーズの戦いは、しっかりと映像に残っています。開幕戦・筑波(4月16日)でコースに出て写真を撮っていたら、「空に浮かんでいるあれ何だろう?鳥?違うかな?でもなんか飛んでいるね〜」とプレス仲間たちと目を凝らすと、それはドローンでした。全日本開催のサーキットは原則ドローン飛行禁止だそうですが、特別に許可を取って、空から迫力ある映像を収めていました。

 この撮影部隊を招集したのは京都芸術大学出身、株式会社P−UP Worldのイマジネーション事業部アートディレクター/BX(ブランド エクスペリエンス)デザイナー・藤村翔吾さん。藤村さんは三重県鈴鹿市の近くで育ち、子どもの頃の夢が「レーサー」か「デザイナー」だったそう。

 藤村さんは、今回のプロジェクトに対して「バイクレースを通じて、イベントや企業などのイメージ戦略を考える仕事に惹かれました。シンプルにバイクレースはカッコ良い。その良さを最大限に生かすための戦略を考えました。グッズなどのデザインからSNSなどデジタルメディアを使ったPRまで、あらゆる分野で統一デザインにすることから始めました。その一環で、「最高の映像チーム」で子供たちの成長を残そうとしました。撮影ディレクターの木下昇起さんとは、お互いの考えや感覚がピタッと一致していて、カッコ良い映像ができると確信しました。試行錯誤しながらも良い映像が残せたと思います。これからも、レース業界に貢献できることを、生涯かけて追い求めたいと思っています」と語ります。
 開幕戦では、熱心に撮影するあまり、「そこにいたらバイクにひかれちゃうよ〜」という場所にカメラを設置していて、心配な場面もありましたが、オフィシャルの意見に従って安全な場所での撮影に切り替え、回を重ねる毎に、その動きが洗練されていきました。

 映像ディレクター木下昇起さんは「MiniGPは小学5年生から中学2年生の子どもたちが対象なので、学校の友達に自慢できるような映像にしたいと思っていました。実際にレースを撮影してみて、その迫力やリアルさは映像で伝えきれない部分もあるんだと身を持って体験でき、そこに近いものが残るようにと思いながら、撮影に取り組んでいました」と言います。

 カメラマンとして撮影にあたった映像スタッフの方々も、生のレースに触れ、印象が変わったようです。冨永幸介さんは「楽しい経験でした。子どもたちの人間ドラマに触れることができました。機会があれば、また参加したい」と話し、茨木琢己さんは「小さな子が大人顔負けの走りをすることがシンプルに驚きでしたし、懸命に走っている子どもたちから刺激を受けました。レースが滅茶苦茶面白かった」と笑顔で話してくれました。堤瑛史さんは「子どもたちが切磋琢磨しながら、熱くなって戦っているというのは、素敵なことだなと感じました」と話し、篠原大樹さんは「インタビューを担当させてもらったんですが、子どもたちが自分の考えをしっかり発言することができていて驚きましたし、熱中するものを持っていることがすごいなと思いました」と答えてくれました。

 また、ドローンパイロットのマラカル治大さんは「ドローンはゴーグルをして動かしているんですが、ライダーと至近距離で撮影する場面もあり、臨場感を感じることができました。ものすごい迫力で、サーキットを疾走する感覚がおもしろいと感じました。自分でも走ってみたいなと思ったほどです」と振り返ってくれました。
 藤村さんは「映像スタッフのみんなはレースにあまり詳しくありませんが、そんな彼らと一緒にモータースポーツに関わる仕事ができて、新しい体験や気付きがあり、チャレンジ性ある映像が作れたと思います」と語ります。彼らは普段はファッションや音楽など、モータースポーツとは異なるジャンルで活躍していますが、そんな彼らが「レースっておもしろいし、カッコ良い、楽しい」と言ってくれ、ファンになってくれていました。実際の映像を見ていただけると伝わってきますが、迫力満点の素敵な作品になっています。

 普段モータースポーツに関わりのなかった業界の方にレースを知ってもらうことで、今までの常識や発想とは違うもの生まれて、モータースポーツの楽しみ方がもっと広がっていく。今回はそのヒントが隠されていたように感じました。

 最後に「どこで撮影の勉強をしたのですか?」と聞いたら「YouTube」という答えが返ってきてびっくり。高い学費を払って学校に通うことが普通だと思っていたので、学びの新しい波が来ているのだなと思ったのでした。レース界も、変革の時を迎えていることを実感しつつ、彼らが残してくれた映像が、近い将来、モトGPライダーのルーツとして、世界中に拡散されることを願っています。
映像はこちらから「2022 FIM MiniGP JapanSeries|第5戦筑波サーキット」