赤松孝撮影
赤松孝撮影
 全日本ロードレース選手権ST600クラスに参戦する平野ルナ(TransMapRacing with ACE CAFE)は、7歳からポケットバイクに乗り始め、ミニバイクへと進み、2016年からは地方選手権ST600に参戦を開始。2017年に全日本昇格を決め、ST600クラス唯一の女性ライダーとして戦い続けている。2021年の全日本第4戦筑波大会(6月19日〜20日)で大ケガを負うが、それを乗り越え2022年復帰。来季さらなるステップアップを目指している。

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 −バイクとの出会いを教えてください。

 平野ルナ「子どもの頃、両親ともてぎにインディカーレースの観戦に行った際に、サーキットの施設に展示してあった電動バイクに乗せてもらう機会があり、それがきっかけですね。もともと乗り物が好きで、すごく楽しかったんです。あの頃はテレビでもポケバイレースが取り上げられていたこともあって、見ていたら、乗ってみたいという気持ちが強くなり、親にお願いして、7歳のときに中井サーキット(神奈川県)でポケバイに乗り始めました。同世代の友だちもできて楽しかった」

 −楽しい時間だったのですね。

 「ん〜。それでもレースに出ているので、当たり前ですが勝ち負けがあって、結果が良くないと親に怒られるようになり、頑張れないなら辞めなさいって言われて…。その頃は、バイクは好きだけどレースが嫌いになっていました。人と競うのがあまり好きではなかった。でも、友だちと会えるのは楽しかったので、乗り続けていましたが、中学校に上がったタイミングで少しレースから離れましたが、でもまた走りたくなって戻ってきました」

 −2016年に地方選手権ST600へ挑戦。女性ライダーはJP250クラスやJGP3クラスなど小排気量クラスに挑戦する方が多いですが、ST600を選んだ理由は?

 「250ccクラスのぶつかり合うようなレースが苦手だなと思っていたことと、身体的にも中学校3年生で身長が168cmあったので、小排気量より大きなバイクの方が良いのではないか思い、実際に乗ってみたら、600のほうが合っているなと感じました」
 −その年の地方選手権では3度の優勝、翌年2017年には鈴鹿4時間耐久ロードレースに参戦して14位。2018年には全日本に昇格し、ST600で唯一の女性ライダーとして戦っています。

 「600ccはスピードが出て、乗っていることが楽しかった。でも、全日本はやはり厳しい戦いで、思うようにはいかなくて、成績を残すのが難しい。2018年はポイントを取れましたが、2019年にはHonda CBR600RR車からYAMAHA YZF−R6に乗り換えたシーズンで、マシンに慣れるのに時間が掛かり、結果を残せませんでした」

 −それでも、2019年は「トランスマップ」から鈴鹿8時間耐久ロードレース(予選47番手、決勝29位)にも参戦。1000ccバイクにも挑戦しています。

 「鈴鹿8耐常連チームの桜井Hondaさんでヘルパーを3年くらいさせてもらっていて、お手伝いしながら、ゆくゆくは自分も鈴鹿8耐に出たいなと思っていました。鈴鹿8耐でのライダーの大変さも見ていたので、覚悟はしていたんですが、実際に出てみると、考えていた以上にめちゃくちゃ大変でした。チームがバイクの軽量化のため手作りしていたこともあって、走中の振動がダイレクトにきて乗るのが難しいと感じていて苦戦するなと思っていたら、第3ライダーが予選落ちしてしまい、ふたりで決勝を走ることになり、技術的にも体力的にもきつい戦いでした。幸い大きなトラブルもなく走り切ることができ、大きなバイクはやっぱり面白いと思えたので、良い経験でした」

 −鈴鹿8耐ライダーとなったことで注目度も上がったと思います。しかし、2021年の全日本ロード筑波戦で大きなケガを負ってしまいます。

 「1コーナーでブレーキが効かず、バイクから飛び降りたんですけど、そのバイクが身体にぶつかってきてしまい、脳挫傷で外傷性くも膜下出血の怪我を負いました。それだけではなく、右目の眼底骨折で眼球が落ちかけたり、膝靭帯や鼻も負傷してしまいました」
 −関係者もファンも本当に心配していて…。とにかく元気になってほしいと願っていました。

 「シーズン終盤の第7戦オートポリス(9月18日〜19日)で復帰しましたが、万全な状態ではなく、目の可動範囲が狭く、視野を確保できていなくて…。たくさんの人に心配をかけてしまいましたが、今はもう大丈夫です」

 −レース復帰にかける気持ちの強さには驚きました。

 「非日常的なレースの世界の魅力に惹かれていることもあります。競うことはあまり得意ではないけど、バイクの性能を生かし、スピードに乗って走ることが好きです。それに、小さな頃からこの世界にいて、他にできることがないなと思う。幸いライダーの経験を生かしてインストラクターのお仕事もさせてもらえていたりしているので、まわりの方々に感謝しかないです」

 −大ケガから復帰して2022年、2023年と戦い続け、多くの人に勇気や希望を与えてくれました。これからの計画はありますか?

 「鈴鹿8耐で1000ccに乗ってみて、いつかはスーパーバイクに挑戦したいと思うようになりました。耐久レースにも関心がありますし、女性ライダー限定の世界選手権が2024年から始まると聞いていて、そこにも興味があります」

 −今年のWGPスペインGPで、ドルナ・スポーツとFIAMが「FIM女子世界選手権」を発表しましたね。史上初となる女性ライダー限定の選手権で、2024年からヨーロッパで全6戦を開催。スーパーバイク世界選手権(WSBK)のサポートイベントとして組み込まれる予定と発表されました。

 「ニュースレベルでしか聞いていませんが、世界を目指せる新しい可能性が増えたような気持ちでいます。まだ来季のことは何も決まっていないですが、いろいろな可能性を考えながら、走り続ける道を探します」

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◆平野ルナ
 1999年10月17日生まれ。東京都出身。7歳でポケバイ、2014年2015年はCBR250R DREAM CUP グランドチャンピオンシップに参戦し3位と表彰台獲得。2016年〜17年地方選のST600参戦、鈴鹿4時間耐久参戦14位。2018年〜23年全日本ST600参戦。18年20年ランキング30位。