「危険な戦略や消化レースが増えるだけ」
地元ハミルトン擁護の意図も
金メダル制度を打ち出したエクレストンFOM代表。パッシングに渋い顔だ(AP)
金メダル制度を打ち出したエクレストンFOM代表。パッシングに渋い顔だ(AP)
 F1の権利を一手に仕切るF1管理会社(FOM)のB・エクレストン代表が来季からの実施を提唱している「金メダル制度」に対し、英国メディアが激しい反対キャンペーンを張っている。エクレストン代表はL・ハミルトン(マクラーレン)が優勝5回にもかかわらず、優勝6回のF・マッサ(フェラーリ)を抑えて王座を獲得した現行のポイント制度を問題視。優勝者の価値を高めるとともに、オーバーテーク(追い抜き)がさらに増えるエキサイティングなレースを目指し、来季開幕戦から金メダル(優勝)の数で王者を決める新システムへの移行をあらためて訴えていた。

 しかし英国の主要紙は次々と新制度に反対の論陣を展開している。まずデーリーテレグラフ紙は「エクレストン代表から国際自動車連盟(FIA)に公式な提案がなされた形跡はない。次回(12月12日)の世界モータースポーツ評議会で正式な議題にならない可能性すらある」と指摘したうえで、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンで経済学部長を務めるS・ハック教授の反対説を掲載した。

 同教授は「金メダル制度は非常に近視眼的だ」とバッサリ切り捨て、多くの短所を列挙。「金、銀、銅メダルを争うトップ・チームにしかインセンティブ(やる気)を与えられないのも問題だが、最も気掛かりなのは金メダル狙いの各チームがより危険な戦略を取りかねない点。クラッシュが増えるだけでなく、マシンやエンジン・トラブルが急増し、F1が目指すコスト削減の流れに逆行しかねない。それにタイトル条件が優勝回数だけならシーズンの3分の2の時点でタイトルが決まり、残りレースが退屈になる可能性が十分にある」と批判し、ポイント制度の継続を主張した。

 またガーディアン紙は、匿名を条件に取材に応じたF1チーム関係者の声を紹介。「メダル獲得のチャンスがないチームがオーバーテークに懸命になる理由がどこにある? チャンピオンシップに反映されない以上、リスクを負ってまで抜きにかかるわけがない。さらにオーバーテークの増加を目的に来季から技術規定が変わるじゃないか。すでに対策を施している以上、F1全チームから承認を得られるとは思えない」と不満爆発。さらにタイムズ紙も「全チームを納得させられる状況とは程遠い。たとえエクレストン代表のごり押しが成功しても、実施は早くて2010年の開幕戦だろう」と、来季からの導入は不可能との見通しを示した。

 反対キャンペーンには初タイトルを獲得した地元の英雄ハミルトンを擁護しようとする意図も見え隠れするが、エクレストン代表が自信を持って世に送り出した「金メダル制度」は正念場を迎えたといえそうだ。