どんなコンディションにも適応〜「マシンを感じ取る能力すごい」
「カミュが斬る」
エンジニアからは最大級の評価を与えられた琢磨の走り(AP)
エンジニアからは最大級の評価を与えられた琢磨の走り(AP)
 9日から始まったスペイン・ヘレス合同テストで、佐藤琢磨がトロロッソの3回目のドライブに挑戦する。前2回のテストではチームから高い評価を得たというが、エンジニアは実際、琢磨をどう語っているのだろうか。(パトリック・カミュ=フランス・オートエブド誌記者)

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 バルセロナ(11月17〜19日)で琢磨の速さに驚いたドライバーがいるとすれば、一番に考えられるのはセバスチャン・ブルデーだろう。

 「いや、彼の速さに驚いたわけじゃないよ」とブルデーは言う。

 「タクがすごく速いドライバーだということは知っていたからね。でもあのタイムを出した、彼のやり方にはびっくりした。僕にとって、彼のマシンはほとんどドライブできないものだったから。それでも彼はマシンのバランスに満足だと言っていた」

 STR3がレースに投入された当初、ブルデーはS・フェテルのセットアップも“僕には運転できない”と話していたのだが……。「つまり、同じマシンでもドライバーによって大きな違いがあるということだよ。シーズンが進めば、僕とフェテルの違いはわずかになったし、マシンの分析もかなり近づいた。タクと僕の違いがすごく大きいのは興味深いことだね」。ブルデーは、自分とS・ブエミのほうがセットアップの好みが近いと強調する。

 トロロッソのチーフ・エンジニアであるローラン・メキエスにとっては、琢磨が最良の選択であることは明らかだ。

 「我々はさまざまなコンディションでドライバーを走らせた。ガソリンを搭載したりしなかったり、ニュータイヤを使ったりユーズド・タイヤを使ったり、ショート・ランをやったりロング・ランを走らせたり。どんなコンディションでも、佐藤は快適にマシンを走らせた。F1でレースをしなくなって数カ月もたつというのにね!」

 「ドライバーの能力は、多くのピースが集まったパズルのようなものだ。小さなピースもあるし、大きくて重要なピースもある。1周の速さ、1スティントの安定性、予選アタックのタイムを繰り返す能力、技術的な会話、データの分析能力、仕事に対する理解力……どれも無視できない」

 メキエスにとって琢磨が理想的な候補者であることは間違いない。

 「彼がマシンを感じ取る能力やフィードバックは非常に素晴らしいもので、彼の最も大きな強みのひとつだ。それに、確固たる意志を持っていて、経験も豊富だ。我々は技術的な機密を守ってあまり深いところまで仕事を進めないようテストを行わなければならない制限があった。それでも、とりわけマシンをより快適に仕上げようと思う時、あるいは速さを向上するために何かを変更する場合、琢磨は非常にうまく仕事を成し遂げた」

 他の候補ドライバーと比べた場合の、琢磨のスタイルは?

 「ブエミと佐藤に関して判断するのはまだ難しいね。そのための要素や情報が足りない。たとえば2008年仕様の空力でグルーブド・タイヤを履いた場合のフェテルやブルデーのスタイルなら話せるけれど、グルーブド・タイヤ用のサスペンションにスリックを履き、08年のエアロを09年用にセットアップした状態でドライバーを判断するのは難しいし、僕の言葉が必ずしも正しいとは言えないだろう」

 「レギュレーションが新しくなった環境では、佐藤は少しフェテルに似て、リアがナーバスなマシンにも非常に満足している様子だったけれど……ブエミの場合はよりブルデーに近い反応だね。でも、さまざまな要素があまりに違うことを考えると、これは世間話以上のコメントではない」

 「スリックを履くように造られたマシンで、空力も新しくなり、KERS(運動エネルギー回生システム)を搭載して新しい重量配分になれば、状況は変化する可能性もある。タイヤのグリップが上がったことを考えると、クラシックでより繊細なドライビングが有利になるだろう。08年のF1はマクラーレンでさえ動きが安定していなかったし、急激な操作を要求するマシンもあったからね。今の段階では、その状況が変化しないとは言えないし、マシンの特性が変われば、佐藤とブルデー、どちらのドライビングが有利になるかは分からない」

 いずれにしても、決定するのはエンジニアではない。

 「決定はマテシッツ氏(オーナー)とトスト代表にかかっていて、僕のようなエンジニアが行うわけじゃない。僕の役割は最大限の情報を収集し、それを解釈し、その情報をもとにドライバーと話し合い、エンジニアのコメントを求める人々と話すことだった」

 琢磨なのか、ブエミ、ブルデー、あるいはブルーノ・セナ、それともR・バリチェロなのか……1日も早い発表が待たれるトロロッソである。(訳=今宮雅子・IRIS)