「無冠の貴公子」11年目悲願
 メルセデスのニコ・ロズベルグ(31)=ドイツ=が2位に入り、デビュー11年目で初めての世界王者になった。父・ケケさん(67)との親子チャンピオンは、グラハム、デーモンのヒル親子以来、二組目の快挙。ライバルのチームメート、ルイス・ハミルトン(31)=英国=は今季10勝目を7回目のポールtoウインで飾ったが、5ポイント届かなかった。F1ラストレースだったマクラーレン・ホンダのジェンソン・バトン(36)=同=はリタイアに終わった。

 中東の夜空に祝福の仕掛け花火が打ち上がった。最終戦決着となったタイトル争いを制したのはロズベルグ。ビクトリーランの後は華麗にアクセルターンを決め、激しく巻き上がるタイヤスモークの中で力強くガッツポーズだ。

 「イェー、世界チャンピオンだ。でも、大変なレースだったよ。最後に追い上げられたのでヒヤヒヤしたよ」。2位でゴールしたが、最後まで予断を許さぬ展開だった。トップを走行する僚友ハミルトンのペースが上がらず、フェラーリのセバスチャン・ベッテルに背後に迫られた。一時は「前(ハミルトン)が遅い」と無線で文句をつけるシーンはあったものの、3位以内でゴールすれば、自動的に初王者が決まる。動揺することなくフィニッシュラインを駆け抜けた。

 父ケケさんは1982年のF1チャンプ。グラハム、デーモン・ヒル親子に次ぐ史上2組目の親子王者の誕生が期待されたが、2006年のデビューから無冠のまま11年の歳月の流れた。才能がありながらタイトルと縁がなかったF1草創期のスターリング・モスにたとえられることもあり、それが重圧となった。

 ドイツ生まれのモナコ育ち。何不自由ない暮らしをしてきたことからハングリーさを欠き、大一番での精神的な弱さを指摘されることもある。F1では家族をパドックに招待する選手が多いが、ロズベルグ家はその逆。特に母シーナさんは、余計なストレスをかけまいと1度もF1の現場を訪れたことがない。

 ロズベルグは雑誌の取材で「母は僕にテニスやゴルフの選手になってほしかったみたい。そうすれば2週間ごとに(開催されるF1で)何かないか心配する必要はないからね」。マネジャー兼務でステージパパのような存在だったケケさんもシーナさんにならって昨年からパドック詣でを止めた。すると一気に勝ち出すようになり、今季も前戦ブラジルGPまでに計9勝を挙げた。

 「父と同じことができた」。通算11季での初王座は、13季かかったナイジェル・マンセルに次ぐ史上2位のスロー記録。『無冠の貴公子』と呼ばれ続けた男が不名誉なレッテルを自ら引きちぎった。

 ▼ニコ・ロズベルグ 1985年6月27日生まれ、31歳。ドイツ出身。フィンランドとドイツの二重国籍で、F1ではドイツ国籍で登録している。2005年にGP2を制し、06年にウィリアムズでF1デビュー。10年にメルセデスに移籍した。通算23勝。父は1982年のF1王者でフィンランド出身のケケ・ロズベルグさん(67)。