今季を振り返る、ホンダ田辺TD
就任1年目を終えたホンダの田辺豊治テクニカルディレクター(前列中央)。2列目右端はガスリー(柴田久仁夫撮影)
就任1年目を終えたホンダの田辺豊治テクニカルディレクター(前列中央)。2列目右端はガスリー(柴田久仁夫撮影)
 F1復帰4年目のホンダは念願の表彰台をつかめなかった。トロロッソと初めて組み、開幕2戦目のバーレーンGPで4位入賞を獲得したものの、最終的には製造者部門9位に終わった。頼みにしていたパワーユニット(PU)も信頼性の面では万全とは言えず、来季へ向けて課題を残した。ホンダF1の現場責任者として1年を戦った田辺豊治テクニカルディレクター(TD、58)が振り返る。 (聞き手=柴田久仁夫)

密接

 −現場責任者としてF1に復帰して取り組んだことは?

 田辺TD「考えていたのは、レースをしっかり走り切るにはどうしたらいいか。そのために不可欠だったのが日本の研究所、英国ミルトンキーンズの前線基地、そして現場との間の密接なコミュニケーションだった」

 −3カ所は離れた場所にある

 「求めたのはデータやメールのやりとりだけではない。プラスアルファの意思の疎通。それを私なりのやり方で、徐々に構築できたと思う。とはいえ、それはまだ十分ではないが」

成果

 −今季改良を繰り返したPUは性能ではルノーを抜いたと言われる。ある程度の成果が出ていたのでは?

 「6月のカナダと9月末のロシアと、2回のアップデート(改良)をした。馬力と信頼性の2つはそれぞれ、比較的高い階段を上がれた。『(F1開発部門の)HRD−Sakura』だけでなく、ホンダ技術研究所を総動員して開発したもの。非常に良いものができたと思っている」

 −マクラーレンと組んでいた昨季まではパワーがなく、壊れやすいというイメージがあった。今季はそれを払拭(ふっしょく)できた

 「そう断言したいところだが、最終戦で壊れてしまいましたからねぇ…。できればニコニコ笑って、ビールが飲めるレースにしたかった。最終戦に限らず、今年は開幕戦からポロポロとトラブルが出た。やっぱり、まだまだ足りない」

 −他メーカーは大きなトラブルが少なかった

 「メルセデスを見れば、ボロが出ないでしょう? たとえマズイところまで行っても壊れない。走り切る。PUのせいでクルマを止めない。ホンダはまだまだ、そのレベルに達していない。負けてます」

 −予算規模の違いとか、そういう話ではない?

 「エンジニアのスキル、ノウハウの膨大な蓄積、個々人のレースエンジンに対する経験。それらの厚さと、かけてきた時間の違いだと思う」

二頭

 −ホンダでは浅木泰昭さん(本田技術研究所執行役員)が開発側の責任者を務め、二頭体制だった

 「彼は現場の要望にできるだけ耳を傾けてくれる。ただ、全部を聞いていたら開発が立ち行かなくなる。だから『これはすぐに取りかかれ』と部下に指示するし、現場にも『ここは少し我慢しろ』と返してくる。ただ、これはまずいと思ったことには、すぐに反応してくれた。指示が非常に的確。エンジニアとして非常に波長が合う」

 −来季からはレッドブルにもPUを供給する。どんな心構えでいるか?

 「レッドブルとの具体的なミーティングは始まっている。向こうからは『こうできたらいいのだが。なぜなら…』という言い方。『こうしてくれないと困る』『こういうのを作って来い』とは決して言わない。そういう付き合い方。われわれも同じ言い方で希望を伝えている」

 −ホンダのPUはどこを最も強化すべきか?

 「全て。性能も信頼性も。取りこぼしをしないこと。敵も止まってはいないので楽観視していない。来季は車体規定が大きく変わるから、トップ争いしてきたレッドブルであっても、その競争力を維持できると100%断言はできない。どのチームも大きなチャンスがあるし、コケる恐れもある。レッドブルと組めば楽勝だとは決して思っていない」