90年Round 9 ドイツGP
(90年8月1日掲載)
マシンに乗り込む準備をするプロスト=(C)Chunichi
マシンに乗り込む準備をするプロスト=(C)Chunichi
◆ Round 9 ドイツGP
◆90年7月27〜29日 ホッケンハイム・サーキット
 ▽PP A・セナ(マクラーレン・ホンダ) 
 ▽優勝 A・セナ
【プロストのドイツGP】
 予選初日に1分41秒732(レコード)で走り3番グリッドを確定させた。決勝では15周目まで3位につけていたが、タイヤ交換に手間どり7位まで後退。そこから持ち前のテクニックで20周目に6位、24周目に5位、25周目には4位に。エンジンの調子がもう一つで3位入賞は逃したものの、着実にポイントをゲットした。

「タイトルには表彰台以外のポイントが重要」

 ドイツGPの10日くらい前にも、僕はここ、ホッケンハイムにきていた。プライベート・テストをこなすためだ。テストのプログラムは、ニューエンジンと、新しいエアロダイナミクスをテストするというシンプルなものだった。エアロダイナミクスに関するテストの中には、ダウンフォースを極度に減らしたものも含まれていたが、それは僕たちがテストを始めてアッという間にある事実に直面したことによって、ますます必要なものになった。

 僕はすぐにニューエンジンを2基壊してしまったのだ。理由は全く同じ。ピストンの不適合ということだった。そんなわけで、このニューエンジン「037」をホッケンハイムでは使えないかもしれないことを考えて、長いストレートでスピードをかせげるダウンフォースを減らしたセッティングが必要になったのだ。

 ところで、このようなプライベート・テストはジャーナリストには願ってもないチャンスになる。テストとテストの間はドライバーに時間があり、彼らの質問に答えたり、話をしたりできるからだ。

 僕がドイツの「Sport Auto」誌のために、F1スペシャリストであるジャーナリストの長いインタビューに答えたのは、そういう状況の中でのことだった。その後、僕はこのインタビューを読み返したが、それは正確に僕の言ったことを反映したものだった。ところがグランプリのためにもう1度ドイツに戻ったとき知ったのは、このインタビューの中の言葉が書き直されてドイツの通信社のニュースに載ったということだった。

 「今年のワールドチャンピオンは、僕の目にはセナがもっとも有力だと思われる」「僕は91年シーズンを最後に引退するだろう」といった言葉が、彼らの暇つぶしのためにインタビューの中から取り上げられ、故意に、ある結論に持っていくためにつなぎ合わされている。

 僕は声を大にして、自分の考えていることを言いたい。これはセンセーションを巻き起こしたいがためにありがちな、とんでもないやりかただ。同じように、僕が気付いているのは、F1全体でも1人くらいを除いた多くのジャーナリストが、明けても暮れてもこれと同じようなことをしているということだ。これはまったく憎むべきことで、そのために僕が彼らの質問に対してだんだん答えなくなってくることは間違いない。というのは、僕が今まで彼らの質問にまじめに答えてきたとしても、それは僕のためというよりは、むしろ、前記のジャーナリストたちのためだからだ。

 この騒ぎが静まり、真相がはっきりしたところで、僕は予選にアタックした。当然、自分に可能なかぎりの力でフェラーリをセッティングしなければならない。正直いって、僕は金曜日、土曜日、そして日曜日の朝のウオームアップが終わってからも、とても慎重に考えていた。どうしてもタイヤの選択が決められないでいたのだ。

 というのは、レース用のBタイヤもCタイヤも、有利な点と不利な点が五分五分だったからだ。もし日曜の朝のように天候が曇っていて、気温がもう少し低ければ、この比率は大きく変わっていたに違いない。そして僕は相変わらず、土曜日の午後の決心を変えられないでいた。タイヤはスターティング・グリッドの上で選ぼう……。

 そして僕は、グッドイヤーの中ではセミ・ソフトに当たるCタイヤを選択する決心をした。これは良い選択だった。シャーシは、特にレースの後半では、驚くほど性能を発揮したからだ。そしてだからこそ、僕はマクラーレン・ホンダに追いつくことができるはずだったのだ。

 しかし、残念なことに、僕はそれが無理だろうということがわかった。理由は単純だ。エンジンがそれを許してくれなかったのだ。レースの序盤、僕はいつものように自分の力を蓄えていた。僕の後ろからはマンセルがクラクションを鳴らし続けていた。ところがいよいよ彼を引き離しにかかろうとした時、まずエンジン回転のリミッターが異常に低いことに気がついた。7速のギア比が低すぎたのだ。

 その後、エンジンの回転がスムーズでなくなり始めた。僕は、ゴールまで走り切るためにはとても慎重にならなければならないことを悟った。もしかしたら、チェッカーを受けられないことさえ考えていた。だから、最終的にはこの4位のポジションはむしろいい結果だと言わなければならない。

 みなさんはこれが無駄なレースだったと考えられるだろうか? 僕はそうは思わない。ワールドチャンピオンのタイトルを獲得するためには、この表彰台以外の中間のポイントがとても重要になってくるのだ。(訳・今宮雅子)

(次回はハンガリーGP編を掲載します)