91年Round 12 イタリアGP
(91年9月11日掲載)
ベルガーの“妨害”もなんのその、プロストは3位入賞に笑顔をみせた(C)Chunichi
ベルガーの“妨害”もなんのその、プロストは3位入賞に笑顔をみせた(C)Chunichi
◆ Round 12 イタリアGP
◆91年9月6〜8日 アウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァ
 ▽PP A・セナ(マクラーレン・ホンダ)
 ▽優勝 N・マンセル(ウィリアムズ・ルノー)
【プロストのイタリアGP】
 グリッド5番手からスタートしたプロストは、オープニング・ラップでアレジにパスされるが、2周目にはアレジのトラブルで再び5番手上昇。28周目、パトレーゼのリタイアで4番手、さらに34周目にはセナ、ベルガーのピットで2番手に上がったが、46周目、セナにかわされ、3位でフィニッシュ。

「ポルトガル前には僕は将来を心に決めているだろう」

 フランコルシャンを後にして2日後、ベルギーGPはもう悪い思い出でしかなかった。いくつかのマシンの改良を試すため、僕はモンツァのテストに来ていたのだ。まずエアロダイナミクス面だ。しかし、ディフューザーを排除したリアの新しい構造は、テストの結果、採用されないことになった。

 そしてエンジン面に関しては、何種類かの吸気トランペットと、状況に応じて(例えば難しい追い越しの場合など)、エンジンの回転を500回転増加することのできる構造をテストした。イタリアGPの公式予選のために再びモンツァを訪れた僕にとって、素早く適切なセッティングを決めるのは簡単なことだった。そして心配していたのとは逆に、特にレースセッティングにおいてマシンは安定し、コンペティティブでさえあることがわかった。

 金曜日、僕は特に予選に備えていた。しかし、リミッターぎりぎりのエンジン・セッティングをいいタイミングで使えなかったため、6位のタイムしか引き出すことができなかった。土曜日はレースセッティングを煮詰めていったけれど、その状態でのマシンの速さには自分でも驚いていた。そして予選にも専念した僕は、グリッドのポジションを前に進めようとした。しかし2回のアタックにもかかわらず、それは不可能だった。ジャン・アレジは午前中にもスペシャル・エンジンを試していたけれど、それは満足を与えてくれるものではなかったのだ。そのために僕は、従来型のエンジンでコースに出ていた。それに加えて、タイヤも1周はもたないように思われたのだ。

 結局、僕は5位で予選を終えていた。でもここでは、これはそれほど重要なことではない。何より大切なのはマクラーレンやウィリアムズと一緒にトップグループにとどまること、そしてマシンの耐久性と……ドライバー耐久性を大切に考えることだ。

 予選の2日目は恐ろしく暑く、僕は疲れを感じ始めていた。それは、シーズンが終盤を迎えているせいだけではなく、将来のための数多くの話し合いのせいでもあった。友人たちはそれを僕に指摘した。イタリアGPを前にして、僕が異様に静かで悟りきった様子なのに、彼らは気づいていたのだ。日曜日の朝のウオームアップ、僕は自分のセッティングが正しかったことを証明し、最速のタイムをたたき出していた。しかしそれと同時に、ふたつのことに気づいていたのだ。

 まずひとつめは、エアロダイナミクスの抵抗を最小限に抑えても、リスクを冒さずにマクラーレンやウィリアムズを抜けないということ。それからもうひとつは、これもウイングのせいだけれど、他のマシンのスリップストリームに入ると、フェラーリの運転はとても微妙なものになるということだ。たしかに、スリップストリームでマシンが前に引っ張られる力を利用することは必要だけれど、それは難しくなりそうだった。

 スタートのグリーンランプがつくと、フェラーリはすばらしい力を発揮した。が、その後、おそらくは気温の高さのせいで、その力を失っていった。もうひとつもっと確かな原因は、30周以上もベルガーの後ろを走るはめになったことだ。彼は僕の仕事を難しくしただけではあきたらず、何度もミスを犯しふだんの彼以上に何度もコースサイドの砂の上を走った。おかげで僕のマシンのラジエーターの吸気口は砂ぼこりでいっぱいになってしまったのだ。

 ただでさえ熱くなっていた上に過熱したエンジンを、僕は大事にするしかなかった。結果、マンセルやセナと戦える状態ではなかったのだ。やっとの思いで、僕は――久しぶりに――レースのゴールと、表彰台の3番目にたどり着いていた。

 ほんの少しの満足感ながら、これはスクーデリア・フェラーリを成功への道に乗せてくれるはずだ。シーズン序盤から失っていた道にだ。それはおそらく、シーズンオフの間、謙そんの気持ちを忘れていたせいだろう。

 追伸……読者のみなさんがこのコラムを読むころ、僕は自分の将来について心を決めている最中だろう。答えは……ポルトガルGPの前に出るはずだ。(訳・今宮雅子)

 (次回はポルトガルGP編を掲載します)