今は問題模索中
開幕戦バーレーンGP編
F1準備のストレスで疲労の色は隠せないが、戦う男の充実感を漂わせる亜久里代表(カメラ=神代雅夫)
F1準備のストレスで疲労の色は隠せないが、戦う男の充実感を漂わせる亜久里代表(カメラ=神代雅夫)
 オールジャパン体制で開幕戦(12日、バーレーン)に挑んだ「スーパーアグリF1」には、予想通り厳しい結果が待っていた。だが、鈴木亜久里代表(45)には満足感が漂っている。ゼロからの出発で、常識では考えられない4カ月という短すぎる準備期間を経て、百戦錬磨のヨーロッパのチームと同じ決勝のスターティング・グリッドに2台のマシンを並べることができた。しかも、1台は4周遅れながらレースに完走することができたからだ。大きな生みの苦しみを味わい、それをどう感じたのか――。代表が自らその思いを記す。

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 レースを終えての感想は「ア〜終わった」というところ。でも、本当はもっともっとウチのクルマを走らせたかったんだ。それがクルマを速くし、チームを強くすることにつながるんだからね。

 土曜日の予選は佐藤琢磨が20位、井出有治が21位だったが、クルマが壊れたK・ライコネン(マクラーレン)がテールエンダーだったので、実際には22台の最後の2台がウチのクルマ。それも仕方ない。他のチームが冬の間に何万kmもテストしてきたのに対し、ウチはたったの500km。ボクには想定内の結果だったが、テストも何もなしにバーレーンに来て、走ってくれた琢磨と井出には迷惑をかけたし、しばらくはこのポジションが続くと思う。

 とにかくなるべく早くクルマを速くする、チームを強くすることがボクの仕事だ。いいクルマを造って、琢磨と井出にはノビノビとしたレースをさせてやりたいと思っている。なにしろ何をやってもクルマは速くなる。それほどいまのクルマは遅いってことだ。

 決勝の目標は“納豆走法”で、最後まで走り切らせること。そうじゃないと今後のマシン造り、チーム強化に関して何も生まれてこない。そういうレースを重ねるしかないと思って第1戦を迎えたんだ。

 内容的にはレースじゃなかったね。井出の無線が壊れたり、初めて使った給油リグ(給油口)にトラブルが出てピットがバタバタになったりといろんな問題点が出てきた。でも、これが大事なんだ。今回は初めてのロングラン・テストみたいなもの。琢磨が頑張って完走してくれて、レースを走り切るポイントはつかめたんじゃないかな。

 ボクらはレースの場を借りてテストしなくちゃいけないので、走り切ることでいろんな問題が見つけられる。実際、給油リグのトラブルが出るなんて思ってもみなかったし、何点と聞かれても点数つけられるレースじゃない。点数つけるのはもうちょっと待ってほしい。

 井出は土曜日にトラブルが出て止まってしまい、クルマがバランス取れないままレースをしなくてはいけなくて大変だったと思うが、よく走ってくれた。琢磨は6回もピット・ストップさせてしまったが、落ち着いたレースだった。大人になったし、プロとしての仕事をしてると思う。ドライバーは2人ともよくやってくれた。なにより自分がやらなければならないことをわきまえていたし、ミスもなかった。

 ただ、レース全体を見ると、ほかのチームは安定していて、なかなかあの中に入っていくのは難しいと思う。ルノーもフェラーリも速い。でも、ウチは4カ月前にはチームもなかった。それを考えたら奇跡に近い。ボクに言わせたら「サプライズ!」だ。

 マレーシアの目標は開幕戦同様にレースを走りきること。でも、ドタバタしたピット作業ではなく、きっちりとしたルーティンでフィニッシュしたい。レースって参加することに意義があるのではなく、レースすることに意義がある。そのレースすることにおいて何が問題なのか、いま実戦の中で探ってるところ。強いチームにしていくための準備段階なんだ。こういう形でしか走れないのは本来の姿ではないが、物事は一つずつ進めていくしかない。

 でも、やってて楽しい。ファンのみんなに応援されてるのも分かるし、チームのモチベーションは高い。末永く応援をお願いします。(鈴木亜久里)

 <スーパーアグリの開幕戦VTR> 事前の走行不足を補うように初日フリーから積極的に走りだし、初期トラブルに見舞われながらも、琢磨が34周、井出も36周消化。2日目フリーも“逆ワンツー”だったが、距離を走り込み、予選は20、21番手。事実上の最下位タイムながら、クルマが壊れたライコネンがノー・タイムで最後尾グリッドは逃れた。決勝は試練の連続。いきなりコース上の作業ミスから井出にピット・スルーのペナルティーが科せられる滑り出しで、無線の故障から2台がピットで鉢合わせも。が、琢磨は計6度のピットインを強いられながら18位完走を果たした。井出は給油ポンプのトラブルで35周リタイアも、貴重なデータをもたらすことができた。