早く速いマシン与えるのが使命〜井出はかわいそう
第2戦マレーシアGP編
一歩一歩前進。手応えをつかんでいる亜久里代表(カメラ=神代雅夫)
一歩一歩前進。手応えをつかんでいる亜久里代表(カメラ=神代雅夫)
 不安いっぱいで臨んだF1デビュー戦バーレーンGPを無我夢中で終えたスーパーアグリF1の鈴木亜久里代表(45)は、息つく暇もなく東南アジアに移動して第2戦マレーシアGPを戦った。そして結果は開幕戦と同じく井出有治(31)がリタイアで、佐藤琢磨(29)のみ完走。だが内容は飛躍的に良くなり、大きな前進を遂げたと評価する。しゃく熱のコースサイドでレースを見守った指揮官はどんなことを感じたのか――。

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 「初めてレースした!」。マレーシア・グランプリが終わってのボクの気持ちはこれだった。

 特に素晴らしかったのは、14位完走してくれた佐藤琢磨の戦いぶり。彼はマシンの倍の仕事をしてくれた。正直に言って、ウチのマシンがミッドランドやトロロッソを抑えてあんなに走るとはボク自身思ってなかった。

 今年の琢磨は素晴らしいと思ったのは、レース中にウチより圧倒的に速い3リッターV10エンジンのトロロッソを走らせるリウッツィにいったん抜かれたのに、最終コーナーで抜き返したこと。モニターを見ながらよくぞやった! と興奮した。実のところ、SA05にあれだけのレースができるポテンシャルはない。そのポテンシャルを超えるレースを琢磨はやったということで、この努力に応えるには1日も早く速いマシンを彼に与えることしかない。それがボクのいまの使命だとあらためて実感させられた。

 ウチのピットの壁には「闘志」とスローガンが書かれているのだが、まさにマレーシア・グランプリの琢磨はファイティング・スピリットにあふれていた。遅いマシンで速いマシンを抑えるのだから相当疲れたと思うが、彼自身もいいレースをしたと満足していると思う。昨年の琢磨と今年の彼は全然違う、そう強く感じさせたレースだった。

 井出有治はバーレーンに続いてメカニカル・トラブルでリタイアして、かわいそうだった。原因はスロットル・センサーが調子悪くノイズを拾ってしまい、井出が右足でアクセル全開にしていても、スロットルが戻るような症状が出てしまった。それがだんだんひどくなって33周でリタイアしたのだが、最後は燃料タンクの中の問題で、燃圧が落ちて止まったのだと思う。バーレーンでは燃料ポンプのドライブ・シャフトのトラブルでリタイアしたが、今回のリタイア原因はそれとは違う。燃料ポンプは最後まで作動していた。

 井出はバーレーンの後にモノコックを替えたり、土曜日からフロント・ウイングを琢磨と同じものにしたり、新しい構造のブリヂストン・タイヤをトライしたりと、することが多く、ポイントをつかみきれないままレースをしなければならず、その辺は気の毒だった。

 2台完走させたかったが、残念ながら1台しか完走できなかった。しかし、前回のバーレーンに比べれば大きな進歩だったことは確か。バーレーンでドタバタだったピット・ストップも、決して素早くはなかったもののキチッとできた。それがひとつの目的だったから、これはうれしかった。

 マシンも非力とはいえバーレーンと違いセッティングする段階に入ってきた。しかし、マレーシアでの頑張りは琢磨の頑張りだった。それに尽きると言っていい。

 これで最初の2連戦が終わったわけだが、あと16戦ある。2週間後のオーストラリア・グランプリでは新しい空力パッケージを投入するからダウンフォースも増えて、またひとつミッドランドとの差が縮まると思う。マシンのポテンシャルはともかく、信頼性は高い。メルボルンでもマレーシアのように思いっきりレースしたいと思う。ぜひ注目していただきたい。(鈴木亜久里)

 <スーパーアグリのマレーシアGP・VTR> 初日フリー走行から井出が最下位の28番手、琢磨がブービーの27番手と、依然として苦しいスタート。予選でも“逆ワンツー”は変わらなかったが、エンジン交換をした5台中4台が最後方グループになったため、繰り上がりで琢磨は17番、井出は18番グリッドから決勝(56周)に臨んだ。そして井出は34周目に燃料系のトラブルでリタイアしてしまったが、琢磨はV・リウッツィ(トロロッソ)を一度パスするなど健闘を見せ、3周遅れの最下位ながら14位でフィニッシュ。2戦連続の完走でチームに希望を与えた。