頑張り続ける琢磨〜井出も糸口つかんだ
第3戦オーストラリアGP編
古巣のホンダを抑えた琢磨の走り。亜久里代表も「素晴らしいレースをやった」と絶賛だ(カメラ=川柳晶寛)
古巣のホンダを抑えた琢磨の走り。亜久里代表も「素晴らしいレースをやった」と絶賛だ(カメラ=川柳晶寛)
 バーレーン、マレーシア、そしてオーストラリア。準備不足は明らかながらF1のグリッドについたスーパーアグリF1が、開幕3戦を何とか無事に乗り切った。それも、2日に行われたオーストラリア・アルバートパークでは、佐藤琢磨(29)と井出有治(31)がそろって完走という確かな成果も残すことができた。不安と緊張の地平の果てに、チームを率いる鈴木亜久里代表(45)が見たものは――。

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 荒れるメルボルンの定説通り、今年もオーストラリアGPはセーフティーカーが4回も出る混乱のレースとなったわけだが、こういう展開は荒れれば荒れるほど我々のような出来たてのチームには不利になる。とっさの判断や作業などの対応が必要とされるわけで、経験の深いトップ・チームにはかなわないからだ。

 しかし、そんな荒れたレースの中で2人のドライバーはクルマを壊さず、よくぞチェッカーまで帰って来てくれたと感謝しているし、スタッフやメカニックもよくやってくれた。

 佐藤琢磨12位、井出有治13位と2台そろっての完走はわがことながらすごいことで、いつトラブルが出てもおかしくないクルマが信じられないくらいよく走っている。

 今回のレースは金〜土曜日に琢磨のギア・ボックスにトラブルが出た。それをメカニックたちは深夜まで修理したのだが、実はボク自身、レース中にメカニカル・トラブルで苦しむのではないかという心配はあった。実際、琢磨のクルマは終盤になって左フロントのホイールが緩むトラブルでピット・インし、その後もう1回今度は右前ホイールが緩んでチェッカーはピット・ロードで受けたのだが、これはクルマが4年も前の古い製作だからだろう。

 そんな中で琢磨はまた素晴らしいレースをやった。序盤、同じエンジンのバリチェロ、その後方にクルサードが迫っていたのだが、これを22周にもわたって抑え続けたのはボクとしてはうれしかった。ラップ・タイムはバリチェロ、クルサードの方が3〜4秒速い。それほどマシンにパフォーマンスの差があるのにバリチェロたちが前に出られなかったのは、琢磨の頑張り以外の何ものでもない。1分30秒台のタイムも出ており、これはミッドランドに0.9秒差に迫るもの。マレーシアでもそうだったが、琢磨はマシンの何倍ものポテンシャルで走っている。

 井出については走る前に「このレースを完走して、それからいろいろ考えよう」と言ってあった。1回目給油で燃料が入っていないトラブルが出たが、井出もピットも落ち着いてリカバーしてくれた。こういうところを見ても、またひとつキチッとした仕事ができるチームになったと思う。

 井出はプラクティスや予選でマシンが問題を抱えている時に、まずいちばん最初になにを直してほしいか、そのプライオリティーをうまく整理できてないところがある。F1もまだ3戦目だから仕方ないといえば仕方ないが、この世界は長く待ってくれないから、まず完走して、それからボクと一緒にジックリ考えようと思ったんだけど、完走でその糸口がつかめた。

 これで開幕3戦1セットの遠征が終わったわけだが、テスト・ゼロ、少ないパーツ、すべて現地調達という三重苦の環境の中でドライバーもチームもよくやってくれた。チームの本拠地イギリスの真逆の土地で、いちばん苦しい3連戦を最高の形で終えられたのはすごいこと。スタッフにはいったんイギリスに帰ってリフレッシュしてもらって、ヨーロッパ戦に備えたい。

 この後、ボク自身は日本に帰ってスポンサーあいさつとお金集めだな。100%以上の力を出してくれてるチームのために、ボクがやれるのはそれだから。つくづく速いマシンがほしいと思う。ファンのみんなにもありがとうを言いたい。みんなの応援がすごく力になっている。それに応えるためにも3週間後のサンマリノではまた頑張りたい。(鈴木亜久里)