新車開発にシフトすべきか
第4戦サンマリノGP編
厳しい選択を迫られる亜久里代表(カメラ=神代雅夫)
厳しい選択を迫られる亜久里代表(カメラ=神代雅夫)
 初めて2台全滅に終わったサンマリノGPを終えて、鈴木亜久里代表(45)はマシンのパフォーマンス不足をあらためて痛感するばかりだが、井出有治(31)のクラッシュに関しては冷静に分析。相手のクリスチャン・アルバース(27)にけががなかったことに胸をなで下ろしつつ、F1経験者ならではの感想を披露した。

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 参戦以来初めての2台リタイアという結果もあって、このレースはとても疲れた。いいところなしのレース、これがサンマリノ・グランプリの総括である。

 こういう結果になってしまったから言うわけではないが、戦う前からこのレースは難しいだろうな、とは思っていた。オーストラリアから3週間の間に他のチームは開発に力を注ぎ、我々にいちばん近いミッドランド(MF1)でさえ新車を用意したというのに、ウチは3日間のバルセロナ・テストがうまくいかず、マシンに大きく変わったところはない。基本ポテンシャルは11チーム中いちばん低いままで、ずっと言い続けてることだが、2人のドライバーには本当にかわいそうな思いをさせている。

 井出有治はオープニング・ラップのビルヌーブ・シケインでミッドランドのアルバースとからんでしまったわけだが、レース後FIA(国際自動車連盟)にコントロールタワーまで呼び出された。結果は訓戒で済んだが、井出がインにいただけにボク自身はもっと厳しいペナルティーになるかもしれないとも思っていた。

 ビルヌーブ・シケインでアルバースがアウト、井出がインにいて、井出の左前輪にアルバースの右後輪がきれいに乗ってアルバースがグラベルの上を転んだのだが、あんなに派手に転んだシーンは久しぶりに見た。レース前に井出には「コースが狭いから気をつけろ。何かあったら避け切れないから」と言っておいたのだけれど、その心配が現実のものとなってしまった。

 こういうインシデントはドライバーそれぞれに言い分があるからボクは何も言わないが、アルバースが無事で何よりだった。

 その後、井出はピット・インしてマシンをチェックして走り続けたものの、最終的にはバリアンテ・アルタのシケインで縁石に乗った瞬間に右リア・サスペンションが壊れてリタイアになってしまった。アルバースと接触した部分とは別なところが壊れているので、おそらく縁石に乗った時の入力が大きなダメージになったのだと思う。

 佐藤琢磨は今回も完走目指して頑張ってくれた。レース前にドライバーの2人には「できることは決まっているんだから、その中で頑張ってくれればいい」と言っておいたが、乗りにくいクルマだし、ちょっとした路面の変化ですぐ挙動が変わることもあって、琢磨はリバッツァ・コーナーで飛び出してしまった。レース後彼は「スピンしちゃいました、すいません」と言っていた。

 レースだからいい時も悪い時もあって、このサンマリノは悪い結果になったが、根本的な問題はクルマのパフォーマンスが低過ぎることに尽きる。2週間後のニュルブルクリンク(ヨーロッパGP)には新しい空力パッケージを入れたいと努力しているが、果たしてこのSA05のパフォーマンス・アップが大事なのか、それともその力を新車SA06開発に向かわせて一本化すべきなのか、ウチのチームも難しいところに差し掛かった。SA05のパフォーマンス・アップと新車開発を同時に進められればベストだが、そんな余力は残念ながらない。

 仮にSA05のパフォーマンスがちょっと上がっても、それはタカが知れている。0.5秒速くなったらマシンとしては大進歩だが、しょせんミッドランドを逆転するのは困難で、予選は最後列にとどまるだろう。我々にはいま0.5秒ではなくコンスタントに3秒速くすることが求められているのであり、であれば現行のSA05の開発を犠牲にしても新車に全力を傾注した方がいいのかもしれない。

 新車SA06はいまデザインに取りかかった段階。実車がデビューするまではまだまだ時間を要するだろうが、ドライバーの2人にはそれまでなんとか頑張ってほしい。その時が来たら、彼らの努力に応えるためにもキレイな新車を出したいと思っている。(鈴木亜久里)