戦えないマシンが悔しい
第8戦イギリスGP編
レースを終えれば和気あいあいの亜久里代表(左)と琢磨(カメラ=川柳晶寛)
レースを終えれば和気あいあいの亜久里代表(左)と琢磨(カメラ=川柳晶寛)
 苦闘の続くスーパーアグリF1だが、今回から第3ドライバーの山本左近(23)を起用し、金曜には3台体制で臨むという大きな進歩を遂げた。その左近について鈴木亜久里代表(45)が大いに語ってくれた。そして、そろって完走した佐藤琢磨(29)とフランク・モンタニ(28)には感謝の言葉。奮闘するチームに注ぐ視線はこの上なく温かい。

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 今回のシルバーストーンから我々のチームはサードカーを用意し、山本左近を起用することになった。左近のF1スーパーライセンスは昨年からの継続で、我々のチームがFIAに申請して取った。サード・ドライバーとしての契約はこことカナダ、アメリカの3戦だ。

 左近はスーパーアグリのドライバー養成システムのゴーカートのオーディションを受けに来た時から知っているが、物怖じしない、いいドライバーだと思う。

 本来、サードカーはヨーロッパGP(ドイツ・ニュルブルクリンク)から用意しようと思っていたのだが、サンマリノ以降、井出有治のライセンス問題がおきたりして実現できなかった。ようやくサードカーを走らせられることになって、これからはクルマのデータがより豊富になり、レース・ドライバーたちと仕事を分け合うことで効率よくセッティングを進めることができるようになる。

 シルバーストーンでの左近は1回スピンはしたが、コンスタントに走ってくれて、いい仕事をしたと思う。もっとタイムを求める走りをしてスピンも多いかと思っていたが、今回は事前テストもなかったから、左近自身がクルマに慣れるのが先決だった。

 本格的なサード・ドライバーの仕事は次のカナダ・グランプリからになるが、これは難しいと思う。バンピーだし、壁も近いし、左近にとって初めてのコース。しかし、レギュラー・ドライバーと接近したタイムを出し、どんな状況でも攻めなければいけない。左近にF1ドライバーに不可欠な適応能力があるかどうか、真価を問われる金曜日の2時間になる。

 レギュラー・ドライバーの2人は土曜日午前中のセッションで立て続けにコケてしまった。佐藤琢磨はマシンが限界を超えてスピンし、クラッシュ。モンタニもグラベルに入ってマシンが土ホコリまみれ。こんなこともあるんだなぁとアッケにとられた。いずれも乗りにくいマシンであることが原因だが、琢磨車(5号車)は金曜日に左近が乗ったスペアカー(サードカー1号車)にマシン・チェンジすることにした。アクシデントが琢磨車だけだったらメカニック総がかりで修理するか、エンジンはそのままにしてシャーシだけを換える作業をしたが、モンタニのクルマもメンテナンスしなくてはならず、琢磨にはスペアカーに乗ってもらわざるを得なくなったのだ。

 決勝はオーストラリア以来5戦ぶりの2台完走で、ドライバーもチームもよくやってくれた。ただ、ボク自身の感想は「うれしくもなんともない」というのが正直なところだ。なぜなら完走するのが精いっぱいで、レースになってないからだ。戦ってない、いや、あのマシンでは戦えない。だから走り終わったドライバーには「サンキュー、大変だったよな」としか言いようがないのだ。それが悔しい。

 いますぐにでも新車SA06を投入したいが、ギリギリ間に合って第11戦フランス。それまであと2レース、ドライバーとチームには我慢してもらうしかない。

 このチームの頑張りに対して、月曜日はリーフィールドの工場に従業員と家族を呼んでバーベキュー・パーティーを催すことにした。ほんのひと時だがみんなと一緒に大いに飲み、かつ盛大に食べて、早めの暑気払いとしたい。(スーパーアグリF1代表)