ホンダ人事は元気になるための手術
第9戦カナダGP編
甘いアイスを食べながら苦い表情の亜久里代表(カメラ=神代雅夫)
甘いアイスを食べながら苦い表情の亜久里代表(カメラ=神代雅夫)
 苦闘の続くスーパーアグリF1だが、9戦目を迎えていろいろなことが軌道に乗ってきた。鈴木亜久里代表にも少し余裕が出てきたようで、周囲を見る目にも変化が。今回はホンダF1のこと、山本左近への評価など縦横に独自のオピニオンを展開する。

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 モントリオールに来てみたら、いきなり日本のメディアに「今回のホンダF1チームのリストラをどう思うか?」と聞かれて、とっさに「自分のチームのことではないから詳しいことは知らない」と返事したが、一般的なニュースから知りえた情報を元に、こんなふうに感じているということは言った。

 それは、ホンダF1の今回の人事を人間の身体(からだ)にたとえると手術に似てると。悪いところがあったので切って除いた、そう考えればいいのではないか。悪いところがあるのに薬で抑え続けるような処置ではお金がかかるばっかりで、ズルズルべったりに悪くなるだけ。ジリ貧の状態にがまんができず思い切って手術したんだろうけど、これはすごい決断だと思う。

 ただし手術にはリスクが付き物で、体力が回復して戦える身体に完治するまでに長い時間がかかる。来シーズン初めから健常体で戦うには、今回のタイミングがギリギリのところなのではないか。そうはいっても長い目でみればいいことで、ホンダが元気でないと日本のF1は盛り上がらない。日本のメディアにはそんなふうに話した。

 話がつい横道にそれたが、まずはサード・ドライバーとして2戦目になる山本左近について書いておこう。

 モントリオールは初めてのコースだし、バンピーだし、壁は近いしで正直なところ「どうなるかな?」と思ったが、金曜日1日走り終わってみたらタイヤやマシンのフィードバックも確かだし、タイムも佐藤琢磨の0.5秒落ちとチームが要求する枠の中にキチッと入っているし、ミスはないし、ボクとしては「ビックリした!」というのが本当のところ。チームのスタッフたちがビックリしながら高い評価を与えていたのも当然といえば当然だ。

 しかも、タイムの伸びしろはまだある。というのも、左近はF1のようにトラクション・コントロールのついたマシンに乗ったことがないから、アクセルの踏み方がジワッという感じで丁寧すぎる。もっとガンッとアクセルを開けてもいいわけで、それに慣れれば佐藤琢磨とさほどそん色ないタイムで走れると思う。今回もマシンに入っているガソリンの量はレギュラー・ドライバーたちとさほど変わらなかったのだ。もっとも左近の方が使っているエンジン回転数がレギュラーたちより上で、ヘアピン進入時などに高いエンジン回転を保てるというメリットはあったが、それを差し引いても左近はよくやった。今回のような走りをしてくれれば、非常にハッピーだ。

 レギュラー・ドライバーに関しては金曜日、土曜日とメジャーなトラブルがなく、その点は順調で、琢磨、モンタニのタイムも接近していたが、予選は21、22番手。クルマのポテンシャルからすればあんなものでないかと思う。なにしろうちのクルマには、新しいパーツがなにも入っていないのだから。

 決勝はモンタニが早々にエンジン・トラブルでリタイア。スタート直後から油圧上昇を訴えていたが、詳しい原因はまだ分からない。同じような状況は琢磨のエンジンにも起きていたようだが、こっちはすぐに収まった。

 琢磨は終盤にモンテイロを抑える健闘ぶりでそのままチェッカーかとみえたが、縁石に乗ってグリップを失い壁にヒットしてリタイアとなった(リザルト上は15位)。ただあの時、モンテイロは新品タイヤを履いて琢磨を追い上げていたから、しょうがないと思う。そもそも今回のミッドランドは同士打ちなどがあってマシンが本調子ではなく、ウチのクルマともっと差があるのが本当で、たまたまああいう展開になっただけ。琢磨も苦しいレースだったと思う。

 さて、予定ではSA05で走るレースもあと1戦、インディアナポリスだけ。しっかり戦って行きたい。(鈴木亜久里)