完成型をようやく投入〜あとはテストで熟成
第14戦トルコGP編
途中からレースに復帰した琢磨。不屈の闘志を見せた(カメラ=神代雅夫)
途中からレースに復帰した琢磨。不屈の闘志を見せた(カメラ=神代雅夫)
 トルコGPではまたもや2台そろって完走できなかったスーパーアグリだが、佐藤琢磨がマシンを修理してコースに復帰するなどレースへの高い意欲を見せた。希望は、新車「SA06」が完成型になったことで、これからは心おきなく熟成に専念できる。鈴木亜久里代表が考えるニューマシンの特徴とは――。

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 トルコ・グランプリに我々はSA06“B”という新車の完成型を持ち込んだ。ドイツでデビューさせたSA06は専用設計された新しいフロント・サスペンションが間に合わなかったのだが、ようやく投入することができたのだ。

 カーボンファイバー製の新しいフロント・サスペンションは、アーム類の長さや取り付け位置が旧型とは大きく違っているし、アップライト(ホイールを取り付けるハブ)も違う。それに旧型のサスペンションではフロント・タイヤに幅の細いホイール・リムしか使えなかったのだが、新型サスではブリヂストン推奨の、他チームと同じ幅のリムが使えることになった。

 新しいサスペンションにはいろんなメリットがあるはずだが、ひとつはロワアームの位置が上がることでフロント・ノーズ下回りの空力デザインを変えられ、より多くの空気がマシン底面に入ること。これでダウンフォースが増えるはず。

 次に、以前から問題になっていたキング・ピン角度(車が自然に直進するようにするピンの取り付け角度)が正常になったことと、幅広リムが使えることでメカニカル・グリップが向上すること。それこれ考えると、低速コーナーでも高速コーナーでも手応えが増して、運転しやすいクルマになる、それが新型サスペンション開発の狙いだ。

 このサスはトルコ前にシルバーストーン(英国)でテストするつもりだったのだが、ちょっとしたハプニングで製作が数日遅れてしまった。細かいパーツなどは外注に出すのだが、なんとその工場に落雷があったのだ!

 そこで、2セットあった新型サスペンションの1セットをF・モンタニのサードカーに付けて走ってもらい、金曜日の2時間のプラクティスを利用してシェークダウンすることにした。

 モンタニは午前・午後合わせて38周を消化。タイムも初日とはいえ29台中16位。なんと我々の後ろにG・フィジケラやウイリアムズ勢もいるという実にいいペースで走ってくれたので、佐藤琢磨のマシンにもう1セットの新サスを装着することを決断した。山本左近はSA06のままで走るのだが、モンタニのサードカーはBスペックのままスペアカーとして温存する。

 予選はそのBスペックにトラブルが発生した。琢磨がニュータイヤを履いて最後のアタックに出たその周、マシンのフロアが落ちてしまったのだ。家の床が抜けたようなものだ。そのためタイム・アタックができずピット・イン、山本左近21番手、琢磨22番手と、久しぶりに最後列を独占してしまった(グリッドはアルバースが降格のため左近20番手、琢磨21番手)。

 帰ってきた琢磨のマシンを見るとフロアに大穴が開いており、よくこれでピットまで戻ってきたものだと思ったが、薄く、軽く造ったことで強大なダウンフォースに耐え切れず、接着してあるカーボンファイバーの層がはがれてしまったようだ。とんだところでSA06Bのダウンフォース向上を証明してしまったが、レースまでには対策することができた。

 しかし、決勝の琢磨は1コーナーでミッドランドに後ろから当てられピット・イン。左サイドの空力パーツがグシャグシャで、フロアにもダメージを負っていたので実質的にはもうレースにはならなかったが、応急修理を施し、熱のデータなどを採りたかったので15周遅れで戦列に復帰。完走扱いにはならなかったものの、チェッカーまで走ってもらった。

 山本左近はスタートの1コーナーの混乱をうまくスリ抜けオープニング・ラップ14位。その後ポジションを落としながらも、ミッドランドやトロロッソが見えるポジションでレースを進めた。ペースは悪くなかった。ところが24周目の1コーナーで攻め過ぎてスピン。

 左近にはレース前に「今日はレースをやり切ることが大事」と話してあっただけに残念な結果だった。トップ争いしているわけではないのだから、割り切ってエスケープ・ゾーンを走ってコースに復帰すればよかったのにと思うが、本人はマシンが乱れた時にスピンすまいと頑張ってしまったのだろう。

 さて、今週の火曜日から我々はモンツァで合同テストに参加する。琢磨と左近が交代で3日間乗る予定。ボクもモンツァへ飛んで、SA06Bのセットアップの方向性をしっかり見極めたいと思っている。(鈴木亜久里)