都会的な顔つきには似合わず、悪路の走破性が高いトヨタのヤリスクロス
都会的な顔つきには似合わず、悪路の走破性が高いトヨタのヤリスクロス
 トヨタ自動車が8月末に売り出した新型スポーツタイプ多目的車(SUV)「ヤリスクロス」が大人気らしい。公式発表はないが、発売1カ月で3万台超の予約が入ったとか。外観ははやりの都会派SUVらしいスタイリッシュなものだが、四輪駆動(4WD)モデルは悪路の走破性能を高める数々の仕掛けを施してあり、オフロードでも本格派に引けを取らない性能を秘めている。そんな硬派な一面も大人気の秘密かもしれない。 (ペン&カメラ=田村尚之)

悪路で高い威力を発揮

本家ヤリス同様にリアビューは凝ったデザインだ
本家ヤリス同様にリアビューは凝ったデザインだ
 愛嬌(あいきょう)のある顔つきが印象的なヤリスクロスだが、実は“タフガイ”だった。4WDモデルに搭載される悪路での走行モードを使うと、車輪が空転するスタック状態からあっさりと脱出。アウトドアに出掛けたときには頼もしい存在になりそうだ。

 悪路で使う走行モードは、一般的な乗用車にも搭載しているブレーキやエンジン出力などを統合制御して車体を安定させるシステムを一歩推し進めたもの。トヨタではビークル・スタビリティ・コントロール(VSC)と呼ばれる車体安定システムを悪路脱出にも応用した。微妙な調整には手間がかかるだろうが、大掛かりなシステムを搭載せずとも、悪路で高い威力を発揮する都会派SUVにはもってこいの秘密兵器だ。

 さらに前後の車体下部に角度を持たせ、本格派4WDのように、悪路でボディーの先端や後端が地面に接触しないような配慮が施されている。都市型と呼ばれるタイプでここまでこだわっているのは珍しく、ボディーを地面に打ちそうな場面に遭遇したら、そのありがたみを実感できる。キャンプ場やスキー場へのアプローチは、路面状況が悪いことが意外と多い。転ばぬ先のつえではないが、嫌な思いをする機会が確実に減るだろう。

 ボディーサイズはべースのヤリスを一回り大きくし、全長4180ミリ×全幅1765ミリ×全高1590ミリ。ホイールベースも2560ミリとやや長めだが、走る、曲がる、止まるという基本操作をするときに何のストレスも感じさせない。そんな乗り手を選ばない仕上がりは、小型車に最も求められること。乗り心地も良く、ロングツーリングでも疲れ知らずだろう。

 試乗時の燃費は、ハイブリッドの前輪駆動(FF)が24キロ/リットル前後で、4WDは22キロ/リットル前後といった感じ。横浜市内の混雑した道で30〜40分走った簡易データだが、「クラストップレベルの低燃費」とうたうだけに燃費は良さそうだ。ハイブリッドの4WDは後輪をモーターで駆動するシステムを採用しているため、燃費も走行感もFFと大きな違いはなかった。

燃費も走行感もFF

シンプルな室内デザインだが、作り込みはしっかりしている
シンプルな室内デザインだが、作り込みはしっかりしている
 小型車ながら荷室にもこだわった。ゴルフバッグは何とか2個入り、リアシートの真ん中が倒せるような仕掛けになっていて、スキー板などの長尺物を運ぶのも便利そう。先進の安全システムはフル装備で、駐車サポートも備えている。

 ユーザーが欲しいと思うことを、ヤリスクロスは可能な限り詰め込んだ。全てがぎりぎり及第点ではなく、すべてを高いレベルで実現。欧州メーカーでは主流となった小型SUVで、後発ゆえに欲張った結果だが、開発陣の苦労が実った力作だろう。
荷室にスペースもしっかりと確保、スーツケースやスキー板もすっぽり収まる
荷室にスペースもしっかりと確保、スーツケースやスキー板もすっぽり収まる