高級スポーツセダンらしいスタイルの2代目ミライ。街中にも溶け込みそうだ(いずれも田村尚之撮影)
高級スポーツセダンらしいスタイルの2代目ミライ。街中にも溶け込みそうだ(いずれも田村尚之撮影)
 トヨタ自動車が12月に発売を予定する燃料電池車(FCV)の2代目「MIRAI(ミライ)」の試作車に乗る機会に恵まれた。世界に先駆け2014年に売り出した初代から、6年の間に進歩した新たな技術が随所に盛り込まれ、飛躍的に向上した性能を実感できた。スタイリングも現代の高級セダンらしい完成度の高さで、後輪駆動になった走りの感触も申し分なし。最先端の環境車というだけではなく、自動車本来の魅力も大幅に増した。 (田村尚之)

◆クルマ本来の魅力たっぷり

 2代目ミライの乗り味は、見た目通りの高級スポーツセダンそのもの。音もなく走り出し、強烈な低速トルクで一気に加速する。試乗会場はミニサーキットだったが、後輪駆動になったことで複合コーナーも気持ち良く駆け抜けられる。最先端のFCVでなくても、魅力を感じる人は結構いそうな仕上がりだ。

 そんな“普通のクルマ”こそが、トヨタの狙いだ。「FCVだから選んだのではなく、こんなクルマが欲しかった。それがMIRAIだった」をテーマに開発。先進性を前面に打ち出した初代とは方向性を大きく変え、クルマ本来の魅力を高めることに力を注いだ。

 流れるようなシルエットを描くために天井が下げられ、燃料となる水素タンクを3本も搭載することで室内は結構タイト。運転席もレースカーに収まるようだが、スポーツセダンらしくて嫌な感じはしない。V10エンジンを模したという、走行状況に応じて変化する“効果音”も用意され、その気にさせる演出だ。

 肝になる燃料電池(FC)システムの技術革新は目覚ましい。水素を電気に変えるFCスタックと呼ばれる心臓部は、性能向上に加えて小型化と24キロもの重量減に成功。タンクが3本になった水素の搭載量は4・6キログラムから5・6キログラムに増え、システムの効率化も進めて航続距離は30%伸び、最大850キロも走れる。FCスタックや水素タンクの生産性も飛躍的に向上させ、量産化にも備えた。

 FCVは水素を電気に変え、モーターを駆動する電気自動車(EV)。バッテリーに蓄電する代わりに水素を使う発想だ。水素ステーションなどインフラの整備は課題だが、国内には東京など都市部を中心に約140カ所が設置されている。政府が次世代車両として導入を後押しする政策を進めており、2025年に320カ所、30年には900カ所の水素ステーションを整備する計画だ。全てが整った時には、世の中が変わる可能性を秘めている。

 水素ステーションを増やすには、FCVを増やして商業ベースに乗せる必要もある。トヨタは子会社の日野自動車を通じて商用車のFCV化を進め、22年には大手運送会社と実証実験をスタートさせる。一方でミライなどの乗用車の普及を進め、社会からの認知度も高めていく。

 2代目ミライに与えられた使命は重いが、開発責任者は「月販1000台が目標」と強気だ。価格は明らかにしていないが、初代(740万9600円)と同程度を計画しているという。FCVは国から約200万円、東京都はさらに約100万円の購入補助がある。実質400万円台半ばなら、国産高級セダンと変わらない。次世代の環境車と呼ばれるFCVが身近な存在になりそうだ。
2代目ミライのカットモデル。フロントにFCスタックを備え、水素タンクは車体中央下と後部に計3本配置
2代目ミライのカットモデル。フロントにFCスタックを備え、水素タンクは車体中央下と後部に計3本配置
すっぽり収まるような運転席。室内のデザインは落ち着いた雰囲気だ
すっぽり収まるような運転席。室内のデザインは落ち着いた雰囲気だ