小山が歓喜のウイニングラン
小山が歓喜のウイニングラン
 「日本郵便 HondaDream TP」の小山知良(36)が、全日本ロードレース選手権ST600クラスのシリーズチャンピオンを獲得した。昨季は無念のランキング2位。雪辱を期して、今季は「無心に勝利を求める」スタイルを貫いたことが奏功したという。チームにとっては初の栄冠、小山は実に19年ぶりのチャンピオン。“日本一速い郵便配達員”が笑顔で2019年を締めくくった。

昨年の忘れ物

チャンピオンを喜ぶ日本郵便 HondaDream TPの面々
チャンピオンを喜ぶ日本郵便 HondaDream TPの面々
 最終戦・鈴鹿の決勝ゴール。小山が2位フィニッシュを果たしてタイトル決定。手島雄介監督(36)とスタッフはチェッカーを見届けると、「昨年の忘れ物を取ってくれた」とピットロードでスタッフと抱き合って号泣した。スタンドで応援する日本郵便社員も歓喜し、惜しみない祝福を送った。

 栄冠に輝いた「日本郵便 HondaDream TP」の母体は「日本郵便 Honda熊本レーシング」。手島が「熊本地震(2016年)の被害に遭った熊本の人々を元気づけよう」と、日本郵便とのコラボを提案して同年立ち上げた。16年から2年連続で「鈴鹿8時間耐久ロードレース」に参戦を果たした。

 18年からは体制を強化した現在の「日本郵便 HondaDream TP」となり、全日本ロードST600クラスにフル参戦を開始した。バイクはCBR600RR。小山がゼッケン230を付け、国峰啄磨(21)が55号車、育成ライダーの亀井駿(21)が420号車にまたがった。

 18年シリーズでは小山がタイトル争いを展開、わずか1ポイントリードで最終戦・鈴鹿を迎えた。予選ではポールポジション(PP)を獲得したが、決勝は雨に見舞われ、不運な接触から小山はコースアウト。そこから懸命に追い上げたものの、10位が精いっぱいでタイトルを逃した。国峰はランキング4位、亀井は同25位でシーズンを終えた。

 今季は小山と国峰が残留し、第2戦から亀井に代わってベテランの岩田悟(33)が4戦出場した。小山は引き続き好調でシリーズ3勝を挙げ、昨年同様、ランキングトップで最終戦に臨んだ。予選3番手でフロントローについた小山は、トップ争いを繰り広げて2位フィニッシュ。ついにシリーズチャンピオンを獲得したのだった。
今季3勝を挙げた小山の走り
今季3勝を挙げた小山の走り
 「昨年はリスクを冒さないことを考えてきたが、今年はリスクを負っても全力でプッシュするスタンスで戦った。最終戦もその姿勢を貫いたことがチャンピオンを引き寄せた。支えてくれた日本郵便はじめ、全ての人に感謝したい」と小山は感激。“日本一速い郵便配達員”の面目躍如に胸を張った。

 手島監督は「日本郵便の方々たちとの交流を通じて、彼らが届けているのは郵便物だけではなく、心なのだと教えてもらいました。レースも同じで、ライダーはたくさんの人の思いを背負って戦ってくれています。バイクという共通点で、日本郵便の方々と、チームがつながり、喜びを共有できたことがうれしかった」と喜んだ。

 小山の全日本タイトルは2000年以来19年ぶり。国峰はランキング6位、途中参戦の岩田はランキング16位だった。

 来季の体制発表はこれからだが、手島監督は「チャンピオンになるのは最終目標ではなく、通過点。この先に手紙やはがきの素晴らしさを、バイクの良さをしっかりと社会に認知してもらうことを目指したい」と日本郵便とのコラボならではの目標を掲げ、挑戦を続けていく。

手島監督、幼なじみの小山誘いチーム旗揚げ

チャンピオンのボードを掲げる小山
チャンピオンのボードを掲げる小山
 手島と小山は幼なじみで、ミニバイク時代をともに戦い、レース界でトップを目指した。手島は現役時代、ホンダワークス入りするなど才能を評価され、09年に全日本ST600チャンピオン、12年鈴鹿8耐2位など実績を残した。一方、小山は2000年に史上最年少(当時)の17歳で全日本GP125チャンピオン獲得。05〜10年にはロードレース世界選手権(WGP)125ccクラスでタイトル争いを繰り広げ一時代を築いた。

 転機は2013年。手島が「WGPチャンピオンを目指していたが、それだけが目指すものなのか」と自問自答し、「ライダーの夢をかなえる手伝いがしたい」とチーム作りに方針転換を図る。エースライダーとして「子供のころから才能は圧倒的で、自分にとっては雲の上の存在だった」という小山のチーム入りを懇願。引退を考えていた小山は「手島の頼みなら」と参戦を決意。かつてはサーキットに泊まり込み、夢を語り合った2人が監督とライダーとして一緒に夢を追い掛けることになった。

 バイクブームが起きている東南アジアで行われているアジアロードレース選手権に参戦し、手島の下で小山はタイトル争いを展開。18年から全日本ロードに戦いの場を移して現在に至る。

日本郵便、ホンダ・スーパーカブ8万5000台で配達

レース以外でも活動

小山の優勝を喜ぶ手島監督=オートポリスで
小山の優勝を喜ぶ手島監督=オートポリスで
 日本郵便にとってバイクは必需品だ。全国約2万4000の郵便局に40万を超える人が働き、約8万5000台のホンダ・スーパーカブに乗って郵便物を各家庭に届けている。

 このことがチーム結成の原動力になった。「ホンダが誇るスーパーカブを使って、全国で郵便配達をする日本郵便さんとタッグを組めたら」と考えた手島監督が日本郵便を訪ねて回った。ホンダの後押しもあり、熊本レーシングを結成して現在の土台をつくった。

 同チームはレース以外にも活動を広げている。ホンダの安全推進室の協力を得て安全教室を実施する。また、「わくわくプロジェクト」として全日本ロードのニュースを配信し、オリジナルポケットバイク「74Daijiro」や電動バイクを準備して「ふみの日(7月23日)」などのイベントや郵便局が入る商業施設内で親子バイク教室を開催するなど、積極的な活動も行っている。

 日本郵便社員には、レースチケットを購入してもらい、パドックの見学や応援グッズを手渡して観戦を実施。昨年は年間1500人が観戦、レースの輪が広がった。
2019年HONDA全日本ロードレース選手権ダイジェスト(前編)
2019年HONDA全日本ロードレース選手権ダイジェスト(後編)