SUGOのスタートラインに設置されたダンロップのアーチ
SUGOのスタートラインに設置されたダンロップのアーチ
 全日本ロードレース選手権に今季から「ST1000クラス」が加わった。国内外の最新リッター・スーパースポーツバイクによって争われるクラスで、タイヤはダンロップのレーシングスリックのワンメーク。アジアロードレース選手権(ARRC)のASB1000クラスと同じだ。参戦ライダーは若手からベテランがそろって興味津々。新型コロナウイルスの影響で開幕が大幅に遅れたが、9、10日のスポーツランドSUGO(宮城県)からいよいよ戦いが始まる。

豪華なメンバーが勢ぞろい 全4戦の短期決戦!!

ホンダ・高橋裕紀
ホンダ・高橋裕紀
 今季から始まるST1000だが、新型コロナウイルスの影響から延期や中止となり、全4戦でタイトルが決まる。この短期決戦に多くのチームとライダーが参戦を表明、豪華なラインアップとなった。

 「CBR1000RR─R」を駆るホンダ勢の筆頭は、高橋裕紀(36)。ロードレース世界選手権(WGP)で活躍し、帰国後は全日本のJGP2で2014、15年と圧倒的強さを見せてチャンピオンを獲得した。16年からはモリワキからJSB1000で戦ってきたが、今年は「日本郵便ホンダドリーム」に移籍してST1000に登場。WGPで優勝経験のある走りは健在で、文句なしのチャンピオン候補だ。

 「ST1000はこれからのクラスで、将来性を感じたので参戦した。タイヤがダンロップのワンメークなのも、ライダーとしては歓迎できる。テストの感触としては、乗りやすくて、とても良いタイヤという印象を持った。タイヤは(フロント、リアの)前後とも2種類あり、それを自分の走りやセッティングで、どんな組み合わせにするかが重要な要素になる。ライバルの動きに惑わされず、自分の強みを発揮して行きたい」と高橋は意気込む。
 さらに、昨年がラストシーズンとなったJGP2クラスのランキング上位3人がST1000にスイッチ。タイトルを獲得した名越哲平(22)は、鈴鹿8時間耐久ロードレースなど大排気量の経験があるのが強み。オフに行われた鈴鹿テストでも好タイムを記録し、順応性の高さを示しているだけに初年度からタイトルを狙う。

 ランキング2位の榎戸育寛(22)は16年のST600クラスチャンピオン。ガッツある走りと明るいキャラクターで人気も高いだけに、初挑戦の大排気量での走りが楽しみだ。

 同3位の作本輝介(23)は、昨年の鈴鹿8耐で、4度の8耐勝利を誇るレジェンドの伊藤真一と浜原颯道と組んで10位に食い込む快走を見せている。ホンダ期待の若手3人がそろって参戦。JGP2で見せた熾烈(しれつ)なトップ争いの再現に期待が高まっている。

 「YZF─R1」で挑むヤマハ勢は、FIM世界耐久選手権などのキャリアがある藤田拓哉(25)が中心。10年、史上最年少の15歳でJSB1000に参戦を開始した。キャリアを積み、15年にはヤマハの育成チームに抜擢されたが、思うような結果を残せず全日本から離れ、今回は満を持しての復帰となる。

 また、ST600、JGP2とトップ争いをしてきた岩崎哲朗(43)がスイッチ。岩崎は2009年に筑波、もてぎの両選手権でチャンピオンに輝き、10年から全日本に参戦し、トップ争いの常連となった。大排気量は初挑戦となるだけに、こちらも目が離せない。

 スズキの「GSX─R1000R」を駆るのは、昨年のJGP3チャンピオンの長谷川聖(20)。小排気量からいきなり大型マシンへの挑戦だが、チーム監督の加賀山就臣監督は「通常なら600を経験して1000とステップを踏むが、長谷川なら1000も乗れる」と太鼓判を押し、これで参戦が決定した。

 そして、ヨシムラのエースライダーとしてJSBと鈴鹿8耐のトップ争いをしてきた津田拓也(35)もエントリー。津田はヨシムラから離れたが、スズキのテストライダーを務めてきただけに、マシンのポテンシャルを引き出す能力はトップレベル。ホンダの高橋同様、チャンピオン候補に挙げられる実力者だ。

 カワサキの「ZX─10RR」を駆るのは伊藤和樹(19)。ポケットバイクの大治郎カップ出身者で、全日本にも参戦したが、高校時代はレースから離れた。だが、高校生活の終盤から再挑戦を開始。昨年のSUGO戦ST600にスポット参戦して5位と力を発揮したことで、今季のフル参戦のチャンスをつかんだ。

 また、そのST600でトップ争いをしていた奥田教介(25)がST1000にスイッチ。16年筑波選手権のST600で全戦全勝を達成して注目を集めた逸材で、17年の全日本昇格後もST600で活躍し、昨年のARRC鈴鹿大会でも2位表彰台を獲得している。鈴鹿8耐参戦経験もあるだけに、ST1000でも活躍が期待されている。

 そのほか、外国メーカーも虎視たんたん。BMW「S1000RR」の星野和也(47)は、JSBでも上位に食い込んできただけに、STでも要警戒。また、ジェゲデ・ゼカライヤは30歳の米国人で、昨年の筑波ST600チャンピオン。アプリリア「RSV4」で全日本初参戦となる。

 多種多様なマシンとライダーがそろったST1000。初戦のSUGOで、誰が主導権を握るのか─。

ダンロップ 試行錯誤のタイヤ開発

ARRCとの交流も期待

ホンダ・名越哲平
ホンダ・名越哲平
 20年からST1000クラスが始まり、タイヤはダンロップのワンメークになることが発表されたのは昨年の6月下旬だった。ダンロップは、ARRCで19年に新設されたASB1000にタイヤを提供した実績はあるが、アジアと日本の風土の違いや、ライダーのレベル差も大きく、ダンロップブランドを手掛ける住友ゴム工業のモータサイクルタイヤ部の小林賢太郎氏(44)は準備が「簡単ではなかった」と振り返る。

 「ARRCは路面温度が年間を通じて高く、ライダーのレベル差も大きくないことから用意するタイヤは想定しやすい部分がありますが、全日本はレースの開催時期に応じて、路面温度が真夏から初秋と暑さ寒さの差が大きい。ライダーも全日本のトップクラスから、地方戦を走るライダーまでとレベル差が大きい。そのすべてに短期間で対応しなければならなかった」

 この難題に挑戦し、試行錯誤の末に対応できたのは、ダンロップタイヤの、これまでの経験と高い技術力があればこそ。フロントタイヤ2種類、リアタイヤ2種類とレギュレーションで決められており、レインタイヤを合わせて、全日本開幕戦となるスポーツランドSUGOには、少なくとも300本ものタイヤが持ち込まれる。

 小林氏は「開発の苦労はありますが、より市販車に近いマシンで、ライダーたちがレベルの高い戦いを繰り広げてくれることを楽しみにしたい」と語った。ST1000の参戦マシンは、200馬力近いハイパワーながら、マシン重量はJSB1000より重く、ブレーキも市販車のキャリパーを使わねばならない。タイヤもワンメークであるため、ライダーの技量がより問われるクラスとなる。

 なお、レギュレーションが近いことから、全日本とARRCとの交流も期待されており、ST1000からアジアのスターライダーが生まれることを願う関係者も多い。
 ★ST1000クラス 昨年までのJGP2に代わって全日本ロードに新設されたクラス。国内最高峰のJSB1000同様、市販されている国内外の最新リッタースポーツバイクで争われるが、改造範囲はJSBよりも狭く、市販状態に近い車両になる。排気量は気筒数ごとに変わるが、4気筒は600〜1000cc。タイヤはダンロップのスリックのワンメーク。

 コスト高騰を防ぎ、イコールコンディションで行うため、JSB同様、パーツの買い取り規制が設けられている。これは、3位入賞した場合、当該レース参加者からエンジンや主要パーツの購入希望があれば一定の金額で売らなければならない制度。


 ◆空気入りタイヤはJ・Bダンロップの特許 息子のために作った自転車用がはじまり

 ダンロップタイヤの歴史は1888年にさかのぼる。スタートはJ・B・ダンロップが息子のために作った自転車のタイヤだった。アイルランドのベルファストで、獣医師として豊かな生活を送っていたJ・B・ダンロップは、10歳になった息子のジョニーから「僕の3輪自転車をもっとラクに、もっと速く走れるようにして」と頼まれた。

 そこで発明心旺盛なダンロップはゴムのチューブと、ゴムを塗ったキャンバスで空気入りタイヤを作り、これを木の円盤のまわりにびょうで固定した。ジョニーの評価は上々で、しかもかなり悪い道を走ったのにタイヤは全く無傷だった。そしてこの年、J・B・ダンロップの特許が発表された。

 現在、自動車やバイク、自転車のタイヤといえば、誰でも空気入りタイヤを思い浮かべるだろう。空気の優れた弾力性を利用し、ソフトな乗り心地が得られるばかりか、抵抗が少なく、グリップがよく、騒音が低い。空気入りタイヤに勝るタイヤは永久に現れそうもないとも思えるほどだ。ダンロップの発明により、現在のモーターシーンの発展がある。

↓ダンロップの公式SNSはこちらから↓