ニトロレーシング爆走予感
チーム合体で意気込む(左から)芳賀紀行監督、長男・瑛人、次男・涼太、岡本、関野、宗和監督
チーム合体で意気込む(左から)芳賀紀行監督、長男・瑛人、次男・涼太、岡本、関野、宗和監督
 スーパーバイク世界選手権(WSB)で活躍していた芳賀紀行(45)と、元カワサキのエースライダーだった宗和孝宏(54)がコラボして、全日本ロードST600クラスに殴り込みをかける。芳賀が兄の健輔さん(47)と設立した「ニトロレーシング」として、紀行の息子の瑛大(あきと、18)と涼大(りょうた、16)を送り込めば、宗和は「51ガレージニトロレーシング」として、2018年ST600チャンピオンの岡本裕生(21)と関野海斗(22)を参戦させる。レース界の大物2人が力を合わせて全日本を盛り上げる。
左から芳賀紀行監督、イタリア選手権のレーシングスーツを着た長男・瑛大、次男・涼大、芳賀健輔
左から芳賀紀行監督、イタリア選手権のレーシングスーツを着た長男・瑛大、次男・涼大、芳賀健輔
 自チームを立ち上げて、監督として全日本に帰って来た。WSB時代の紀行はライバルをほんろうし、わずかなすきに飛び込むスリリングで破壊力ある走りで欧州のファンをとりこにした。付けられたニックネームは「ニトロ」。それが今回のチーム名になった。

 紀行は1996年に史上最年少(当時)で鈴鹿8耐優勝を飾り、97年には全日本ロードでスーパーバイクチャンピオンになると、98年にWSB参戦を果たす。そして2011年まで活躍。常にタイトル争いの主役であり続け、圧倒的な才能でシリーズの主役にのし上がった。結局無冠だったが、通算43勝を挙げ、今も圧倒的な人気を誇る。

 2人の息子は、父の元でパドックを遊び場として育ったが、父のすごさを知るのは自身がライダーを志してからだ。それもつい3、4年前のことだという。

 「最初は遊びでポケバイに乗っていただけだったが、ライダーを目指そうと決め、家にある父のレースビデオを真剣に見始めて、ものすごいライダーだと実感するようになった。いつか父に並べるライダーになりたい」と瑛大は決意も新たにした。涼大も「目標は父」という。
 2人は17年から本格的にイタリア選手権に参戦した。レベルは全日本に比べても高く、WGPにステップアップするライダーもいるほどだ。ゆえに、レース経験の少ない2人は思うような結果を出すことができなかった。そこで父・紀行がチームを立ち上げて全日本参戦を決意する。自身も兄の健輔さんも全日本でキャリアを積んで腕を磨いてきた。「全日本は学べることが多い。ここで通用しないやつはどこにも行けない」と、紀行はあえて非情な“獅子の子落とし”を決断した。

 芳賀兄弟との交流がある宗和は、元カワサキワークスで、全日本、アメリカンスーパーバイク、世界耐久選手権で活躍したトップライダーだ。14年に全日本に「51ガレージレーシング」を設立し、18年にST600で岡本をチャンピオンに押し上げた。この年からイタリア選手権に岡本をスポット参戦させ、紀行のチームに合流した。岡本は瑛大や涼大とチームメートとして走った。紀行の率いるチームの全日本参戦が決まると、宗和チームとコラボするのは自然の流れだった。

 岡本、関野は引き続きST600に参戦するが、チーム名は「51ガレージニトロレーシング」となる。「紀行は世界が認めるライダー。紀行と組むことで、岡本や関野へのプラスの影響は大きい」と宗和は語る。

 芳賀兄弟はヤマハ、宗和はカワサキのワークスライダーとして活躍したトップライダーだ。17年に芳賀兄弟が「K─maxレーシングチーム」を設立してアジアロードレース選手権(ARRC)に参戦した時に宗和はアドバイザーとして参加。そのころから3人は「ワークスで鍛えられ、レースのノウハウをたたき込まれたライダーとして、そのスキルを後進に伝えたい」と考えるようになったという。そしてその思いは「世界に通用するライダーを育てたい」に膨らんだ。今回はその第一歩としてチームを合体させパワーアップを図る。紀行は「息子にこだわっているわけではない。チームづくりをしっかりとして、将来性のあるライダーを起用して行きたい」と語る。

 19年、岡本はV2を狙い、タイトル争いを繰り広げるも、ランキング3位となった。「今年はV奪回、速さを示したい」と再び王座を目指す。関野はジャンプアップを狙い、瑛大と涼大は新たな戦いに挑む。芳賀兄弟と宗和のタッグで、全日本に旋風を巻き起こす。
 ▼宗和孝宏(そうわ・たかひろ)1965(昭和40)年9月21日生まれ、54歳。神戸市出身。六甲で腕を磨いた峠出身ライダーで、1987年全日本ロードTT─F1参戦。88年カワサキワークス入りし、エースライダーとして活躍。海外でも活躍し、ルマン24時間で3位のなど実績も。2017年からチーム監督に専念。18年には岡本裕生がST600でタイトル獲得した。

 ▼芳賀紀行(はが・のりゆき)1975(昭和50)年3月2日生まれ、45歳。名古屋市出身。1993年、全日本デビュー。96年鈴鹿8耐で史上最年少優勝。97年には全日本のスーパーバイクチャンピオンに輝き、98年にWSB参戦開始、デビューシーズンから優勝を飾り、2011年まで活躍。タイトルこそ取れなかったが、ランキング2位3回、3位4回。その圧倒的な存在感は、歴代のチャンピオンを超える存在として欧州ファンに愛された。13、14年には友人の加賀山就臣に誘われて鈴鹿8耐に出場して3位表彰台を連続して獲得。16年もヨシムラから出て3位になった。17年はARRC参戦。チームを立ち上げたが、「引退のつもりはなく、条件が合えばライダー復帰もある」と、ライダーとしてはまだ現役をアピール。

 ニトロレーシングのアドバイザーを務める芳賀健輔(けんすけ)さんは、紀行の2歳年上の兄。幼いころから紀行とともにポケバイ、ミニバイクで活躍。全日本に上がってからは兄弟でヤマハワークスライダーとして鳴らしてきた。しかし1998年、全日本スーパーバイク最終戦の事故で脊椎を損傷し、車いす生活になる。その後は監督に転じ、2017年には紀行を擁してARRCに参戦した。

 名古屋市でバイクショップ「K─max」を営むため今季は全日本の全戦に帯同はできないが、伯父として、レースの先輩として2人の甥(おい)をサポートする。

 ◆ST600クラス 全日本ロードに2001年に創設され、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキのスーパースポーツモデルで争われている。排気量は、4気筒は401〜600cc、2気筒は600〜750ccで、エンジンの改造範囲は狭く、ワンメークのブリヂストンタイヤは溝付きのスポーツタイヤ。ストリートを走る車両に一番近いクラスと言える。レースで6位に入った車両に買い取り制度がある。
 今季は32台がフルエントリーを表明しており、多くのエントリーを集める人気クラス。昨季はWGPやARRCでチャンピオン争いをした経験豊富な小山知良が念願のタイトルを獲得。打倒小山を目指す若手ライダーがひしめいている。