5月22日、23日開催
45台が参加した昨年の富士24時間のスタート
45台が参加した昨年の富士24時間のスタート
 2018年に50年ぶりに復活した「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」が、今年もスーパー耐久シリーズ第3戦として5月22、23日に開催される。昨年は新型コロナウイルス禍で9月に延期されたが、国内唯一の24時間レースとしてさまざまなドラマを生み出した。4月28日に開かれた公式テストには、シリーズにフル参戦するチームを中心に39台が参加する盛り上がり。本番にはトヨタ自動車が新たに開発する水素を燃料にした次世代車を持ち込む予定で、今年も話題は尽きない。

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24時間耐久が初夏の風物詩に

)昨年はスープラ、ヤリスがWデビューウインを飾ったルーキーレーシング。モリゾウ(前列左)も歓喜の雄たけびを上げた
)昨年はスープラ、ヤリスがWデビューウインを飾ったルーキーレーシング。モリゾウ(前列左)も歓喜の雄たけびを上げた
 今年も日本で唯一開催される24時間レースの季節がやってきた。出場チームと観客が一体になってレースを楽しむ唯一無二の存在として、3年前に復活して以来、すっかり初夏の風物詩として定着してきた。

 新型コロナ禍のため秋に延期された昨年は大雨により、4時間半も中断される大荒れの展開になった。だが、そんな予想外のアクシデントすらドラマを生み出す。スタートから3時間過ぎに給油中の火災で車両にダメージを負ったヒリックス(メルセデスAMG)が、悪天候による中断で車両の修復を行い、再開後に有力チームが次々トラブルに見舞われた幸運もあって、奇跡の大逆転で初優勝を飾った。

 チームの大黒柱として引っ張った高木真一は「運に恵まれた」と表彰台の中央で感無量の表情を浮かべた。通常のレースなら出火した時点で優勝争いの権利を失うが、24時間もの長丁場であったことで劇的なドラマが生まれた。

 昨年はもう一つ、劇的な勝利があった。ルーキーレーシングが持ち込んだトヨタGRスープラと同GRヤリスが、それぞれST1、2クラスを制覇。ともにデビューウインという離れ業だった。ヤリスのステアリングを握ったモリゾウことトヨタ自動車の豊田章男社長も「初めて出場したクルマで勝てるなんて…。それも2台も」とチェッカー後に歓喜の雄たけびを上げた。
24時間レースの名物、ナイト走行
24時間レースの名物、ナイト走行
 今年はまだ本番のエントリーリストは公開されていないが、昨年同様に50台前後の車両が出場する見込みだ。3〜6人でタッグを組んで戦うドライバー、そして24時間も走り続ける車両にとっては限界への挑戦となる。特に参加型が多い下位クラスのチームは、走り切ること自体が大きなハードルだろう。24時間後のチェッカー目指してレースに挑む全チーム、全ドライバーに順位を超えたドラマがあり、関わった全ての人々に感動をもたらすのが24時間レースだ。

 欧州では今年で89回目を迎える仏ルマン、同じく49回目の独ニュルブルクリンク、そして73回目のベルギー・スパフランコルシャンで24時間レースが開かれ、それぞれ独特の文化を生み出してきた。

 レース創生期の1967年に初開催された富士も、50年の空白を経て再び歩みを取り戻し、1年ごとに歴史を刻んでいる。今年はどんなドラマが生まれるのか−。

トヨタ、世界初「水素エンジン車」投入

「走る実験室」で開発促進

公式テストでお披露目された水素エンジンを搭載するトヨタ「カローラ・スポーツ」
公式テストでお披露目された水素エンジンを搭載するトヨタ「カローラ・スポーツ」
 トヨタ自動車は今年の富士24時間レースに、開発中の水素を燃焼させる「水素エンジン」を搭載した開発車両を投入する。カーボンニュートラルを見据えた次世代車両の開発を、「走る実験室」と呼ばれてきたレースで進めることになった。

 水素を燃焼させるエンジンは、モータースポーツの技術を生かして開発したという排気量1618ccの直列3気筒ターボ。それを小型車「カローラ・スポーツ」に搭載し、豊田章男社長がチーム代表を務めるルーキーレーシングが走らせる。

 BMWやマツダも水素エンジンの開発を進めていたが、市販化はされておらず、レースで走らせるのはトヨタが世界で初めてという。トヨタはハイブリッドのレース専用車を2007年の十勝24時間レースに投入し、厳しい条件で走らせることで技術を磨いた実績がある。水素エンジンも同じように過酷なレースで鍛えるのが目的だ。

 水素を使って発電し、電気モーターを駆動する燃料電池車(FCV)は、走行中に地球温暖化の元凶ともされるCO2を排出しないことで知られており、トヨタやホンダが市販化している。水素エンジンもエンジンオイルの燃焼に伴う微量なCO2は出るが、基本的にはFCVに匹敵する環境性能が期待される。

 また、水素の燃焼はガソリンよりも速く、応答性が良いという特徴がある。優れた環境性能を持つと同時に、エンジンらしい音や振動も楽しめるとされ、クルマが持つ本来の魅力を損なわないメリットもある。今回の開発を切っ掛けに、レースの現場に続々投入されるかもしれない。