「全日本トライアル第5戦 City Trial Japan 2022 in OSAKA」
8月20日開幕
最高峰クラスで12度のタイトルを狙う黒山
最高峰クラスで12度のタイトルを狙う黒山
 全日本トライアル選手権第5戦「City Trial Japan 2022 in OSAKA」があす20日から大阪・泉南りんくう公園で開催される。通常の全日本選手権とは異なり、街中の人工セクションで行われるエンターテインメント性の高い大会だけに、最上級の国際A級スーパークラスのみの開催。20日(土)に予選、21日(日)には予選を突破した10人のライダーで決勝が行われる。ヤマハからは黒山健一(44)、野崎史高(38)、久岡孝二(22)が勝利を狙う。

 トライアルは岩場、林の中や沢などを利用して作られた複数のセクションを限られた時間内に周回し、減点とクリーン(足を着かないこと)の数を争う競技。バイクを操る基本操作を駆使する、人車一体のモータースポーツとして熱烈なファンを持つ。

 国内最高峰の全日本トライアル選手権は1973年にスタート。ヤマハはその初年度に木村治男が王座を獲得した。以来、最高峰クラスでは通算11回(ヤマハエンジン搭載のスコルパ車による2006年含む)のチャンピオンに輝いた。

 今季は黒山が「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」からファクトリーマシン「TYS250Fi」を駆って国際A級スーパークラスに参戦している。

 黒山は全日本の最高峰クラスで通算11回ものタイトルを獲得。07年にヤマハと契約してからは国際A級スーパーで4度(08、09、11、12年)ものチャンピオンに輝いた。また18、19年には、電動マシンで行われる「TrialEクラス」に出場し、2年連続でランキング2位になるなどして注目を集めた。

 内外に熱烈なファンを持つ黒山は、日本人ライダーのトライアルのレベルが世界に並ぶことを証明する一人。21年は新型のTYS250Fiを投入し、5大会中1勝を挙げてランキング2位になった。今年も現在ランキング2位につけ、自身通算12回目の全日本チャンピオンを狙う。

 「新しくなった車両をシーズンオフにしっかりと仕上げ、開幕戦優勝という最高のスタートを切れたが、第2、4戦で表彰台を逃した」と悔やむ黒山。だが、シーズンの折り返しとなるシティトライアルジャパンについては「気持ちを切り替えて臨むには最高の大会。たくさんのお客さまにも来ていただけるので、自分の技術を総動員して、トライアルを楽しんでもらいたい。そして全日本のタイトル争いを面白くするためにもここで勝って、次につなげていきたい」と意気込んでいる。
今季苦戦も新規まき直しに意欲満々の野崎
今季苦戦も新規まき直しに意欲満々の野崎
 また、チャンピオン候補の一人として全日本で長年活躍している野崎史高は「TEAM FwO with YAMALUBE」から出場。開幕から2戦連続3位と表彰台に上がり、その後4、5位で、ランキング5位につける。

 「ライバルたちの成長もあるが、自分のコンディション不良なども重なって苦戦している。トップとは大きな差をつけられているが、シーズンは半分を終えたばかり。まだあきらめるわけにはいかない。シティトライアルジャパンを自分自身も楽しみながら、ファンの皆さんにトライアルの魅力を見せつけながら良い流れをつかみたい」と新規まき直しに意欲満々だ。
自分らしい走り取り戻し上位目指す久岡
自分らしい走り取り戻し上位目指す久岡
 そして、「VICTORY」に所属する期待の若手、久岡孝二はランキング11位から、さらなるジャンプアップを狙う。

 「ここまでトップ10を逃すレースが2つあり、なかなか成績につなげることができていない。このネガティブな状況から脱出して、自分らしい走りを取り戻すチャンスがシティトライアルジャパンだと思う。上位を目指すのはもちろんだが、IAスーパーの中でも若手という意識を改めて持ち、ファンの皆さんにしっかりと覚えてもらい、またトライアルを好きになってもらえるように、自分の気持ちを上げて、がんがんチャレンジしたい」とアグレッシブに語る。ヤマハトリオの活躍に期待が集まっている。
 ◆TYS250Fi(YAMAHA FACTORY RACING TEAMのマシン)06年に投入され、4度チャンピオンに輝いた「TYS250F」に替わる新型ファクトリーマシン。ヤマハ競技用モデルの4ストローク・FIエンジンをベースに最先端技術を投入して開発された。16年第6戦の黒山によるデビューウインをはじめ、野崎も含め、数々の勝利を獲得してきた。21年には各所をバージョンアップした新型を投入しており、22年はさらなる熟成を果たした。

 ▼黒山健一(くろやま・けんいち)78(昭和53)年7月24日生まれ、44歳。兵庫県出身。「YAMAHA FACTORY RACING  TEAM」所属。94年全日本参戦、ランキング((R))2位。95年世界選手権へ参戦開始し、この年(R)4位、ヨーロッパ選手権(R)2位。96年〜05年は世界選手権と全日本に並行して参戦し、全日本で6度のタイトル獲得。06年から全日本に専念し、5回のチャンピオン(うちヤマハで4回)獲得。通算11回のタイトルを誇る。

 ▼野崎史高(のざき・ふみたか)83(昭和58)年9月1日生まれ、38歳。埼玉県出身。「Team FwO with YAMALUBE」所属。97年全日本国際A級参戦。98年同クラス王者。99年国際A級スーパークラス昇格。02年世界選手権参戦、世界選手権ジュニアカップチャンピオン。03〜05年世界選手権と全日本参戦。06年から全日本に専念し、常にランキング上位につけて活躍している。現在(R)5位。

 ▼久岡孝二(ひさおか・こうじ)99(平成11)年11月5日生まれ、22歳。岐阜県出身。「VICTORY」所属。11年BJUバイクトライアル全日本選手権ベンジャミンクラス(R)4位。16年全日本国際A級チャンピオン。17年に国際A級スーパークラスに昇格し(R)8位。18年からヤマハを駆り、20&21年はともに(R)7位。今季は(R)11位。

City Trial Japan

 18年、大阪のランドマーク、通天閣を臨む通天閣本通商店街で、街中でのトライアルレース「City Trial Japan 2018 in OSAKA」が開催され、「都市型競技」として新たな可能性を示した。19年の第2回大会は野崎史高(ヤマハ)が優勝。20年は小川友幸(ホンダ)が勝ち、最難関の第7セクションを唯一クリーンで走破して会場を沸かせた黒山が2位に食い込んだ。21年は新型コロナウイルスの影響で開催断念。今年が2年ぶりの開催となる。

 今季の全日本トライアル選手権は8大会が予定され、18年からMFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)承認大会として開催されてきた「City Trial Japan」が新たに加わった。

 その名の通り、City Trialは街中に人工セクションを築いて競技を行う。自然を相手にする既存のレースとは一線を画すコースが特徴で、人工的なセッションは難易度を自由に設定できることからエンターテインメント性が高まる利点がある。何よりも、アクセスしやすい街中で一流選手のテクニックを近くで見られることで、新たなファン獲得に貢献している。観戦無料。