スーパー耐久富士24時間
STZクラスを戦うゼロワンの日産Z(左)とST3クラスにエントリーするゼロワンの日産フェアレディZ (右)(多賀まりお撮影)
STZクラスを戦うゼロワンの日産Z(左)とST3クラスにエントリーするゼロワンの日産フェアレディZ (右)(多賀まりお撮影)
◇2台体制で参戦
 人材育成を掲げる「TEAM ZEROONE(チームゼロワン)」が、スーパー耐久シリーズの大一番、第2戦「富士24時間」(27−28日決勝)に2台体制で臨む。日産自動車と日産自動車大学校が展開する人材育成活動「日産メカニックチャレンジ」をS耐で展開する同チームは、ディーラーメカニックや学生が、過酷な24時間を戦い抜くことで貴重な経験を積むことが目的だ。STZとST3の2クラスに「ラフィーネ」カラーをまとった日産Zをエントリーした。

 発足2年目の若い「チームゼロワン」には活気がみなぎる。モータースポーツを通じて次世代を担う人材育成を掲げるだけに、ピットの中では学生も含め若人のエネルギーが満ちあふれる。

 チームを率いる河野初樹監督は「私が20代に味わったワクワクやドキドキした感触を、今の若い人にも味わってもらいたくてチームを立ち上げた」と力を込める。1990年代に日産のレース活動を担った「ニスモ」の社員として、華やかなレース活動の最前線で経験した「感動」を次世代につなぎたい思いが強い。

 チームの骨格を成すのが「日産メカニックチャレンジ」だ。日産ディーラーのメカニックであるテクニカルスタッフ(TS)も迎え入れ、時間との闘いとなるレースの現場で習練を積むことで、スキルアップを図るプログラムだ。

 また、メカニックを養成する専門学校「日産自動車大学校」の学生も、チームの戦力としてガレージの内外で貴重な経験を積み、卒業後の実務に生かす。

 同チャレンジは2012年にKONDOレーシングでスタート。「一人でも多くの若者をクルマ好きにしたい」という思いでスーパー耐久を舞台に活動を始め、19年からはディーラーのTSも加わりスーパーGTのGT300クラスにステップアップ。同チームがタイトル争いをする現在でも活動を続けている。

 昨年プログラムに初期から関わってきた河野監督が独立してゼロワンを立ち上げ、「原点回帰」の思いでスーパー耐久への挑戦を開始した。今年はチームを2台体制に拡大。TSや学生の人数を増やし、より車両の整備作業や、レース運営に関われる体制を築いた。

 ただ、スタッフを育成するだけがゼロワンの活動ではない。26号車は、国内ではたった2台しか投入されていないZのGT4車両を日産から託されている。若いメンバーの育成を図りながらも24時間を確実に走り切り、車両開発のために貴重なデータを蓄積しなければならない。

 そのためドライバー陣も実力者をそろえた。STZにはスーパーGTで活躍する富田竜一郎、名取鉄平、篠原拓朗に加え、GT500と同300でそれぞれ2度の王者に就いた柳田真孝もステアリングを握る。ST3を戦う25号車も、佐藤公哉やルマン24時間を制したベテランの荒聖治らが名を連ねている。

 大一番を目前にした河野監督は静かな闘志を燃やす。「流れをしっかりとつかみたい。何としてもトラブルは避け、24時間のゴールへ向けて、みんなで力を合わせて戦いたい」。ゼロワンはワンチームとなって過酷な戦いに臨む。
富士24時間では26号車に乗り込む柳田アドバイザー  (多賀まりお撮影)
富士24時間では26号車に乗り込む柳田アドバイザー  (多賀まりお撮影)
◇ラフィーネ日産メカニックチャレンジZ
 富士24時間では、日産横浜自動車大学校に通う学生34人が車両整備などを行う。7グループに分けて作業を分担する予定で、松島優雅(20=3年)が全体チーフとして取りまとめる。「とても緊張しています。スーパーGTに(メンバーとして)行ったことはありますが、S耐は作業もするので。(ピット内で)GTと似ている所と、違う所を確認し、全員をうまく導きたい」と責任感をにじませた。

 KONDO RacingのプロジェクトでスーパーGTの現場にはサポート部隊として参加した。今回の公式テストでは実際に車両に触れ、タイヤ交換などもチーフとして、本番への予行演習を進めていた。

【グループ長のコメント】
 □矢嶋佑紀(21)=4年「ピットに入ったのも、公式テストが初めてでした。すごく緊張していますが、いろんな事を学んでいきたい」

 □砂川孝則(20)=3年「スーパーGTではホスピタリティーの経験をしました。ピット内で作業するのは初めて。(ガレージの)上から見ていたのと随分と雰囲気が違った」

 □松田崚汰(20)=3年「公式テストでタイヤの脱着と、サインガードに立たせてもらいました。24時間では精神的にも肉体的にも厳しいと思いますが、全力を尽くしたい」

 □飯泉椋裕(21)=4年「1年の時にスーパーGTにはスタッフとして参加しました。メカニックとしては初めて。とにかくクルマを壊さないよう、細心の注意を払って作業します」

 □廣瀬亘(22)=3年「レース現場の作業でも、タイヤ交換などは基本的な整備の延長線。うまく応用してやり切りたい。本当にやりたかったことなので、いろんな事を吸収したい」

 □福永匠(21)=4年「ビータレースのお手伝いをした経験はありますが、S耐は規模が大きく楽しいです。環境が悪い中で作業することもあるので、全力を尽くしたい」

ルマン覇者の荒も富士24時間ではゼロワンに加わった (多賀まりお撮影)
ルマン覇者の荒も富士24時間ではゼロワンに加わった (多賀まりお撮影)
◇ベテランドライバー今季新加入でチーム引っ張る
 ゼロワンは富士24時間に強力な助っ人二人を投入する。STZの26号車には、今年からゼネラルアドバイザーを務める柳田真孝がステアリングを握る。「新しいチームなので、すごく新鮮な気分。みんなが戦いやすい環境を整えていきたい」とベテランらしく若いチームを引っ張っていく。

 「チームは明るく雰囲気も良い。学生も大勢いるので、モータースポーツの楽しさも味わってほしい」。未来を担う若いスタッフには、真剣に戦うことで得られる楽しさも伝える考えだ。

 ST3の25号車には、2004年の仏ルマン24時間を制した荒聖治がメンバー入り。「チームのやり方に沿い、自分の役割を果たしていきたい」。日本を代表するベテランドライバーながら、まずはチームにとけ込むことを第一に挙げた。

 ただ、世界三大レースを制した経験は、若いチームには貴重だ。「Zで上位進出を狙うには、トラブルなく戦い抜くことが大事。チームとしっかり話し合い、総合力で戦いたいね」。ゼロワンが躍進するカギを握る存在となりそうだ。

★オリエンタルバイオ
 健康食品やスキンケア商品を販売する。同社はフィギュアスケートや、クライミングの五輪選手らを長らく支援するなど、スポーツへの理解が深い。モータースポーツ活動へのサポートも長く、昨年の設立時からチームゼロワンの活動を支えている。
日産自動車大学校の学生がサインボードを提示=公式テストから (多賀まりお撮影)
日産自動車大学校の学生がサインボードを提示=公式テストから (多賀まりお撮影)
公式テストで初めて車両に触れた日産大学校の学生ら (多賀まりお撮影)
公式テストで初めて車両に触れた日産大学校の学生ら (多賀まりお撮影)
公式テストではタイヤ交換などにも初チャレンジした日産大学校の学生 (多賀まりお撮影)
公式テストではタイヤ交換などにも初チャレンジした日産大学校の学生 (多賀まりお撮影)