恵みの雨〜本当に疲れていたので…あれでペース落とせた
縁起かつぎゼッケン「634」と同じ高さのスカイツリーに上った
予定より1回多い4回のセッションを受け持った高橋。まさに優勝の立役者だ(カメラ=沢田将人)
予定より1回多い4回のセッションを受け持った高橋。まさに優勝の立役者だ(カメラ=沢田将人)
 今年の真夏の祭典「第36回鈴鹿8時間耐久ロードレース(7月28日決勝=三重県・鈴鹿サーキット)」を制したのはハルクプロの高橋巧/レオン・ハスラム/マイケル・ファンデルマーク(ホンダ)。そのチームを3年ぶり2度目の栄冠へと導いた立役者は高橋だった。ファンデルマークが突然の両腕痛に襲われたため、スタート役、最終走者を含め、つごう4回の走行を務めるハードワークをこなした。これで自身にとっても2度目の優勝。これまでとひと味違う走りを見せた高橋がレースを振り返る。(聞き手=佐藤洋美)

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 −おめでとうございます。かなりハードワークでしたが、勝つ自信は?

 高橋巧「ありがとうございます。確かに勝ちたかったけど、テストからレースウイークの流れがあまり良くなかったので、勝利ということでは、自信はなかったですね。当初は清成(龍一)さんと組むのかと思っていましたが、ハスラム、マーク(ファンデルマーク)と組むことになった。ハスラムはスーパーバイク世界選手権のライダーで、8耐は一度走っているけど、足をケガしていた。マークはマシンも鈴鹿も8耐も初体験。本番ではどうしてもタイムが落ちるんですよね。で、とにかく自分が中心になっていくしかないと思っていました」

 −そうですね。高橋さんがしっかりしないとチームは回らない状況だった

 「これまでは先輩ライダーと組んでも、ハルクのエースは僕なんだ、しっかりしなきゃと自分に言い聞かせていました。まあ、結局はサポート役になっていたんですが(笑)。でも、今回はちゃんと走れたかなと思います」

 −そして本番。序盤から逃げて、楽な展開になったように見えましたが…

 「初めは思ったよりペースが上がらないみたいで、みんな様子を見ているような感じだった。確かに1回目の走行が一番路面温度も高く、難しい走行だったと思いますね」

 −そういう状況で、抜け出したと

 「そうですね。ついてくるかなと思ったけど、誰も来なくて…。自分では無理なペースではなかったんですよ。でも、それからマークの手が痛くなり、走行できなくなったということで、いきなり走ることになった3回目の走行はきつかった。あそこで思うようにペースを上げられなかったことは反省しています」

 −最後の30分は雨がきましたが

 「あれはありがたかったんですよ。本当にしんどくて疲れていたので…。あれで走行ペースを落とせたんです」

 −転倒したらと心配したファンも多かったと思いますが

 「いや、大丈夫。転ばないペースで走っていたので。後ろとの差も大きかったから、とにかく走れるとこまで走ろうという感じで、土砂降りになったら、さすがにチームから指示が出るだろうと思い、ずっと冷静でした」

 −8時間00分01秒280でチェッカーでしたね

 「もう1周するのはつらいなと思っていたし、ちょっと、雨が強くなってきたので、ペースを調整してチェッカーを受けました。スタートもゴールもと、いいところ取りの8耐でした。長くてつらかったけど、自分の力を出し切ったという充実感があった。そういう気持ちになれたのは初めてです」
V表彰台に立つハルクプロの面々。(左2人目から)ハスラム、高橋、ファンデルマーク(カメラ=佐伯友章)
V表彰台に立つハルクプロの面々。(左2人目から)ハスラム、高橋、ファンデルマーク(カメラ=佐伯友章)
 −前回の8耐は優勝して、涙が印象的でしたが

 「いえいえ、あれは汗です(笑)。そういえば今年は出なかったですね。ゴールしたら、ケニー・ロバーツさんがお祝いに来てくれました。ケビン・シュワンツさんも来てくれました。スタッフと一緒に写真に入ってくれて、周りは僕の優勝より、シュワンツさんとの記念写真の方に興奮していたような気がします(笑)。でも、みんな喜んでくれて本当にうれしかった。いつもは厳しい社長(本田重樹監督)も機嫌が良かったですからね」

 −勝因は?

 「8耐に来る前に東京スカイツリーに上ったんです。高さが634mでゼッケンと同じだから縁起をかついでね。そういうの初めてだったし、それが効いたかな」

 −今年の8耐は高橋選手の独り舞台。一皮むけた印象ですが?

 「変わりたいし、変わらなきゃと思っています。いつも8耐後の全日本ロードは調子を崩しているので、今年はそんなことのないようにしないと。もっかランキングトップですが、まだ、今年は勝っていないので、まずはSUGO(8月25日決勝)で勝ちたいです」
鈴鹿8耐の過去10年の優勝者
鈴鹿8耐の過去10年の優勝者
 ▽高橋巧(たかはし・たくみ) 1989(平成元)年11月26日生まれ、23歳。埼玉県出身。04年、14歳で全日本ロードデビュー。08年同GP250クラス王座獲得。09年から同JSB1000に参戦中。今季は第4戦終了時点でランク首位につけている。8耐には08年から6回参戦し、優勝2回、表彰台5回。