3年越しの27連勝を飾り、自身の通算80勝に花を添えた中須賀(水谷たかひと撮影)
3年越しの27連勝を飾り、自身の通算80勝に花を添えた中須賀(水谷たかひと撮影)
 全日本ロードレース選手権の最高峰JSB1000クラスに君臨するヤマハの中須賀克行(41)が、またしても金字塔を打ち立てた。今季第2戦・鈴鹿でも2レースを制し、クラス最多を更新する通算80勝に到達。一昨季から続ける連勝記録は27まで伸ばした。12度目のタイトルへ突き進む無敵の王者に、強さの秘訣(ひけつ)や重圧との向き合い方、今後のレース人生などについて聞いた。(聞き手=佐藤洋美)

レース前に塩振るルーティン

「勝てた時の達成感は最高」と、貪欲に勝利を追い求める(水谷たかひと撮影)
「勝てた時の達成感は最高」と、貪欲に勝利を追い求める(水谷たかひと撮影)
 ―27連勝での通算80勝、おめでとうございます。勝利への重圧を感じさせないが、実際は?

 中須賀「メンタルは強い方ではない。普通の人間だし、『逃げ出したい』と思うこともある。だけど、プロライダーとして好結果を求められることとプレッシャーはイコール。重圧は期待そのものだから、それに応えたい。プレッシャーがあるから成長できていると思う」

 ―レース前、マシンや装具に塩を振るルーティンがある。いつから、何のために始めた?

 「父と一緒にレースを始めたころから。父は大工で、目に見えないものに手を合わせるのは日常だった。それを見て育ったから、自分も大事にしている。邪念を払い、レースに集中して、『ケガのないように』と手を合わせる。自分には必要なルーティンで、気持ちが落ち着く。“お守り”みたいなもの」

自ら考え、野性的トレ

 ―肉体的にも進化を続けているように見える。どんなトレーニングを?

 「専属のトレーナーはいない。決めてもらったメニューをこなすのは、ある意味、楽だと思う。声をかけて励ましてもらい、言われたことだけをやればいい。でも、それでは身につかないと思うから、自分で『何が必要なのか』を考えて取り組んでいる」

 ―具体的には?

 「足りないと感じたことをどう補うか、常に考えて取り組んでいる。例えば、レース後半の追い込みがきついと感じたら、レース状態の心拍数を保ったままでレース時間より長くトレーニングをこなす。ジムのような施設が整ったところではなく、家のそばにある自然の中で追い込んでいる。自分に何が必要かを考え、緊張感と目的を持つだけで、気持ちに変化があると思う」

 ―レースでの速さの秘密は?

 「与えられた時間は、誰にでも平等に同じ。その時間を自分は最大限に使い、レースの準備に充てている。しっかり準備できているということだと思う。『簡単に勝っている』と言う人には、声を大にして言いたい。その準備は、簡単なことじゃない」

みんなを喜ばせたい

 ―80勝の中で一番印象に残っている勝利は?

 「(2007年第4戦オートポリスの)初優勝。05年からチームのみんなと『まず1勝』と言いながら戦って、ずっと、ずっと勝てなくて、やっと勝てた。みんなと喜べた。それまで『自分のために勝ちたい』と思っていたのを、『みんなのために勝ちたい』と思わせてくれた優勝だった。その時のスタッフは今も変わらず、自分を理解して支えてくれている」

 ―これからは?

 「今年で42歳。年齢を重ねて、ピークは越えている。あと何年走れるか分からないし、いずれ負けが来る。だから、やり切りたい。悔いは残したくない。一生懸命に取り組んで、ライバルから盗めるものは盗んで、自分のものにして変わり続けたい。今も(18歳下のチームメート)岡本(裕生)に聞かれるより、自分が岡本に聞くことの方が多い。一戦一戦、勝つことに懸命に貪欲に向き合うのは、これからも変わらない。勝てた時の達成感は最高だし、チームのみんなの喜ぶ顔を見ることが重圧への対価だと思う」

2007年にJSB初優勝

 ▽中須賀克行(なかすが・かつゆき) 1981(昭和56)年8月9日生まれ、41歳。北九州市出身。2000年から全日本GP250に参戦。05年にステップアップしたJSB1000で、08年から昨年まで歴代最多の11回のタイトルを獲得している。21年開幕戦から27連勝中。ヤマハのロードレース世界選手権(WGP)モトGPマシンの開発ライダーで、代役参戦した12年バレンシアGPでは2位に入った。世界耐久選手権(EWC)の鈴鹿8時間耐久レースでも歴代2位タイの4勝を挙げている。