笑顔で喜びを分かち合う渡辺(右)と伊藤監督
笑顔で喜びを分かち合う渡辺(右)と伊藤監督
 全日本ロードのST1000クラスは、アステモホンダでホンダCBR1000RR−Rを駆る渡辺一馬(33)が3連覇を果たした。チーム内の体制変更も影響し、なかなか波に乗りきれなかったシーズン。トップ快走中の転倒で一度はタイトルを諦めたものの、ライバル勢の相次ぐ転倒もあって大逆転でつかみ取った。諦めない気持ちが幸運を呼び込んだ、激動の1年を振り返ってもらった。 (聞き手=佐藤洋美)

 −今季を終えての感想は?

 渡辺一馬「『疲れた』というのが、正直な気持ち。こんな疲労感を感じるシーズンは初めて。でも、それくらい(レースに)集中していた、ちゃんと向き合っていたんだと思う」

 −開幕戦は3位でスタートした。

 「今年はスタッフが一新され、2連覇したメンバーではなく、新たなメカニックとの初戦。データは共有できていて、昨年からの流れを生かせる環境をつくってもらったが、いま思うと周りを意識し過ぎていた」

 −3大会目のオートポリスでは、レース2の残り3周で転倒。

 「中盤からペースを上げて逃げ切る、自分の勝ちパターンをつくったのに転倒してしまった。トップ走行中に転んだのは初めて。6戦しかないシリーズで1戦のノーポイントは致命的で、『タイトル獲得はなくなった』と思った」

 −でも、続く岡山国際で、ランク上位2人の接触転倒に乗じて今季初勝利。同3位ながら一気に差を縮めた。

 「トップ2台が転んでの優勝。胸を張れる勝利ではなかったが、もう一度チャンピオンを目指せることはうれしかった」

 −最終戦もランク上位2人がトップ争い中に転倒。一気に優位になったが、自分の順位も上げる必要があった。

 「ポイント争いは意識していて、『4位以内でタイトルが決まる』と思った。でも、サインボードを見ると、4位じゃダメと出ていて…。4番手だったから『ポジションをアップしなければ』と思っていたら、前の2台が転倒して、2位に入ってタイトル決定。波乱続きのレースだった」

 −伊藤真一監督に泣きながら抱きつく、珍しいシーンも見られた。

 「チームスタッフが代わったり、トップ走行中に転倒したり、ライバルたちが次々に脱落したりと、大変なシーズンだった。どのレースも極度の緊張の連続。一度は諦めたチャンピオンになれたうれしさと、いろいろな感情があふれてしまった」

 −来年の予定は?

 「まだ分からない。ST1000を走るなら、4連覇を目指したい」

 ▼渡辺一馬(わたなべ・かずま) 1990年5月6日生まれ、栃木県出身の33歳。5歳からポケバイを始め、2005年に全日本に昇格した。06〜08年にはロードレース世界選手権(WGP)125ccクラスにスポット参戦。13年に全日本ST600の王者に輝いた。15年からJSB1000に参戦し、17、18年はランク3位。21年から移ったST1000で3連覇を成し遂げた。
3連覇を決め、ウイニングランでファンの歓声に応える(いずれも竹内英士撮影)
3連覇を決め、ウイニングランでファンの歓声に応える(いずれも竹内英士撮影)