一瞬でレーサー気分が味わえるマシン
チームのエースナンバー「17」で参戦 作本
初戦の戦いの場となったSUGOで、CBR1000RR−Rを披露する作本(左)とCBR600Rを紹介する荒川。ともにそのポテンシャルに驚いている(衣装協力作本はHYOD−PRODUCTS、荒川はRS=TAICHI)
初戦の戦いの場となったSUGOで、CBR1000RR−Rを披露する作本(左)とCBR600Rを紹介する荒川。ともにそのポテンシャルに驚いている(衣装協力作本はHYOD−PRODUCTS、荒川はRS=TAICHI)
 初戦の戦いの場となったSUGOで、CBR1000RR−Rを披露する作本(左)とCBR600RRを紹介する荒川。ともにそのポテンシャルに驚いている(衣装協力 作本はHYOD PRODUCTS、荒川はRS TAICHI)

 ホンダがマン島TTレースに初参戦したのは1959年6月。以来、ホンダの歴史はレースへの挑戦とともにあり、初参戦から60年となる年に、CBR1000RR−Rがフルモデルチェンジされ2020年3月20日に発売された。常務執行役員兼二輪事業本部長の安部典明氏は「CBRはホンダのDNAを体現する存在。レースを通して技術力・人間力を育み、チャレンジングスピリッツという企業DNAを継承していきたいという思いから新開発を決断した」と語る。

 CBRの開発ライダーも務める伊藤真一氏は「レースシーンで圧倒的なパフォーマンスを発揮するという、シンプルだが究極の目標にホンダのDNAを感じた」と評価する。CBRを知り尽くしている伊藤氏は「いいところを伸ばし、ネガを徹底的につぶす」とテストを重ね、「かつてないパフォーマンスのCBRになる」と手応えを感じている。

 モトGP王者のマルク・マルケスは、いち早く、CBR1000RR─Rを試乗。「乗ったらびっくりすると思う。ナンバーを外しただけで味わえるサーキットパフォーマンスを楽しんでほしい。半端ない加速! このフロントの接地感、信じられない!」と驚嘆した。世界中のファンが待ち望んだCBR1000RR─Rが、今季ついにサーキットを走り始めた。

 全日本ロードレース選手権に新設されたST1000クラスに、伊藤真一監督(53)率いる「Keihin Honda Dream SI Racing」から作本輝介(23)が参戦を開始した。10日に行われた開幕戦のスポーツランドSUGO(宮城県)の決勝では、2番手に上がり、勝った高橋裕紀(36)に迫りながらリタイアしてしまったが、ともにホンダ「CBR1000RR─R」のポテンシャルを十分にアピールした。若手代表の作本は、プライベートでも大型免許取得を計画中。CBR1000RR─Rでバイクライフを充実させようとしている。

 バイクとの出合いは小学校1年生。バイク好きの父親と一緒にサーキットに遊びに行った時、キッズバイクの体験走行に参加したのが最初だった。作本は「バイクに乗っているのが楽しくて、いつまでも何度も遅くまで乗っていた」ことを覚えている。小学校2年時には、本格的にバイクレースに参加するようになる。同時にロードレース世界選手権(WGP)をテレビ観戦、加藤大治郎や、玉田誠の活躍に胸を熱くし「いつか世界へ」と夢を抱く。

 鹿児島出身の作本は、九州の「チーム高武」の門をたたく。のちにホンダのワークスライダーとなる宇川徹、加藤大治郎、玉田誠、清成龍一ら、日本を代表するライダーたちを生み出した名門だ。そこでチームメートの岩戸亮介と切磋琢磨(せっさたくま)した。幾多の名選手を育てた柳本眞吾メカニックの厳しい指導もあって2人は頭角を現し、岩戸、作本とトップライダーに成長、作本は昨年、タイトル争いを繰り広げてのランキング3位。そして今季はレジェンドの伊藤真一監督が立ち上げたケーヒンホンダに移籍して、同チームのエースナンバー「17」を付けている。高武の先輩でチームメートの清成龍一も同じ17番でJSB1000に参戦する。

 「昨年JGP2は最後のシーズンだったのにチャンピオンになれなかった。だからこそ今年は絶対に結果を残したいと強く思っている。伊藤さんが監督で、柳本さんが引き続きサポートしてくれ、先輩の清成さんがいるチームで走れることを光栄に思っています。このチャンスを頂けたことに応えたい」と力を込めた。

 オフのテストでは苦戦が伝えられていたが、開幕戦SUGOの雨の予選で6番手に浮上。決勝ではトップに迫る走りを見せた。伊藤監督も「心配していたが急に速くなって驚いた。だが、見込み通りの走りをしてくれたということ。転倒は良くないが、次につながるレースだった」と合格点をつけた。作本も「次こそは」と雪辱を誓う。短期決戦の残り3戦に全力を注ぐ。

 その作本はCBR1000RR─Rの印象について「まずエンジンパワーに驚きました。これを一般の人が楽しめるというのはすごいことで、一瞬でレーサー気分を味わえるはず。サーキット走行会に参加してもらえたら、もっとすごさをわかってもらえる」と絶賛する。

 現在は原付免許しかないが「免許が欲しいと思い始めている。チーム高武は熊本県にありますが、そこから、オートポリスサーキットまでの道は、ミルクロードと呼ばれている風光明媚(めいび)な所。季節によって、牧草や空の色が変わるので、そこをこのCBR1000RR─Rで走りたい。そのためには、まず大型免許が必要なので、なるべく早く取りたい」と目を輝かせていた。
 ▼作本輝介(さくもと・こうすけ) 1996(平成8)年12月15日生まれ、23歳。鹿児島県出身。2013年全日本昇格。14年、JGP3ランキング5位。15〜19年はJGP2を戦い、昨年はランキング3位。昨年暮れから、九州から転居して清成龍一宅に同居し、トレーニングに集中する環境を整えた。新型コロナの自粛期間は屋内トレーニング。自粛が明けてからは、オフロードバイクでのトレーニングを重ね、開幕を待ちわびていた。目指すはモトGP、スーパーバイク世界選手権(WSB)など海外で通用するライダーになること。


 ★ST1000クラス 今季から全日本ロードレース選手権に新設されたクラス。最高峰のJSB1000クラス同様に最新のリッター(排気量1000cc以上)スーパースポーツバイクによって争われるが、改造範囲が狭く、より市販状態に近い。200馬力近いハイパワーを持っているマシンはJSB1000より重く、ブレーキも市販車の部品を使わねばならず、ライダーの技量が問われる。タイヤは、ダンロップ製のレーシングスリックのワンメーク。

バイクの魅力は自分との一体感

注目の高校生ライダー 荒川

 ホンダは21日、モデルチェンジした新型「CBR600RR」を発表した。新型CBR600RRは高性能な水冷・4ストローク・DOHC・直列4気筒599ccエンジンを搭載し、最新の電子制御技術や空力性能技術を採用するなど、総合性能を高めたスーパースポーツモデル。

 市販車によるレースのベースモデルとしての高いポテンシャルを日常でも楽しめるよう開発された。今回のモデルチェンジでは、従来モデルからの特徴である、高出力かつ扱いやすい出力特性と俊敏なハンドリングにさらに磨きを掛けた。サーキット走行での優れた動力性能とワインディングなど公道での扱いやすさを高次元で両立させ、“操る喜び”をより追求している。

 全日本ロードで一番エントリー数が多い人気クラスがST600だ。ここで力を示し、最高峰JSB1000へステップアップする若き才能がひしめいている。ホンダ「CBR600RR」は、多くのライダーに愛され続け、多くのチャンピオンライダーを生み出してきた。開幕戦のSUGOでは、高校生ライダー、荒川晃大(こうた、17)が3位表彰台に上って注目を集めた。ツーリングを楽しむ友人たちと一緒に出掛けたいという荒川は、期待を集める逸材だ。

 荒川は「3歳くらいから父にバイクに乗せられていた」という早熟のライダー。レース参戦も経験していた父親は熱心に息子をサーキットに連れだした。ポケバイからミニバイクと腕を磨いた荒川の速さは群を抜いており、小学6年の時に参加したHRCトロフィーの全国大会でグランドチャンピオンに輝く。

 「小さいころは、レースをやらされているという感覚だったけど、だんだん楽しくなってきて、ずっとレースをやり続けたいと思うようになった」と、鈴鹿レーシングスクール入学を決める。中学2、3年の2年間は東京の自宅から鈴鹿に通った。卒業後、2018年には鈴鹿、筑波の地方選手権のST600クラスに参戦し、両選手権で全戦全勝を飾る。それも全てポールtoウインのおまけ付きの快挙達成だ。

 そして昨年、全日本に昇格して「MOTOBUM HONDA」に所属した。伝統ある名門レーシングチームで、1990年代にはロードレース世界選手権(WGP)に参戦した経験もあり、近年では16年に榎戸育寛が全日本ST600でタイトルを獲得している。

 荒川はオフのテストでは好タイムをマークして注目を集めた。しかし開幕戦もてぎでは予選8番手、決勝7位。ルーキーとしては好成績だが、納得できない思いが残った。続く岡山国際、オートポリスは走行経験がなかったため、思うような結果が残らなかった。

 「地方選では独走優勝しかしてなかったから、バトルも追い上げも全然だめでした。全日本のレベルが高いこともありますが、まずレースウイークの流れをしっかり作って予選で上位に付けないとレースにならない、自分なりにウイークポイントを修正して最終戦鈴鹿を走りました」

 走り慣れた鈴鹿とはいえ、全日本の舞台で、荒川はレコードを更新してポールポジションを獲得する。WGP経験のあるトップライダー小山知良の後ろに付き、鈴鹿攻略に磨きをかけた。その貪欲な姿勢が荒川を押し上げ、決勝では3位表彰台に上り、ランキング7位に浮上した。

 今季はチャンピオン候補の一人としてシーズン開幕を待った。開幕戦SUGOは、スポーツ走行と予選が雨、決勝が晴れというライダー泣かせのコンディションとなり、転倒者続出の波乱のレースを荒川は走り切って3位表彰台に立った。

 「トップ争いをしてではなく、ラッキーな3位なので悔しいですが、3位になれる位置にいたからの表彰台。諦めずに上を狙って走った結果だと思うことにします。今年はレース数が少ないので、一つ一つがすごく重要、次は優勝を狙う」と荒川は語った。まだシーズンは始まったばかり。残り3戦、タイトルは諦めてはいない。

 荒川は新型「CBR600RR」を見つめて「早く乗りたいです」とつぶやいた。このマシンでサーキットを走るのは来シーズンになるが、市販車なので免許があれば公道で乗れる。高校の友達には、バイクの免許を取って近場のソロツーリングを楽しんでいる仲間もいる。

 荒川は「バイクの魅力は自分との一体感。それを感じながら公道を走れたら、サーキットとは違う楽しみが絶対あると思う。モトGPのマルク・マルケスが走った箱根のターンパークを走ってみたい。海沿いも楽しそう。一人でもいいし、みんなと出掛けるのもいい」とバイク免許取得に熱視線を送っている。
 ▼荒川晃大(あらかわ・こうた) 2002(平成14)年11月15日生まれ、17歳。東京都出身。小学6年でHRCトロフィーグランドチャンピオン。18年筑波ロードレースST600、鈴鹿サンデーST600の両チャンピオン。19年全日本ST600ランキング7位。東京都立葛西工業高校3年。部活動はレースと両立しながら3年間続けられると思い家庭科部。目指すは日本人初のスーパーバイク世界選手権のチャンピオン。

 ★ST600クラス 2001年に創設され、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキのスーパースポーツモデルで争われている。ベースマシンのハイスペック化に伴って足回りとエンジン、フレームなどのバランスを取るために、07年シーズンからフロント、リアともにサスペンションの変更が可能となり、セッティングの範囲が拡大。よりライダーの技量が問われるクラスとなった。15年からはタイヤがブリヂストンのワンメークとなり、予選、決勝を2セット(ウオームアップ走行は除く)でまかなう。