未来に向けて2つの施策打ち出す
スーパーGT開幕戦特集
15台の車両が覇権を争うGT500=公式テストのスタート練習から
15台の車両が覇権を争うGT500=公式テストのスタート練習から
 スーパーGTを運営するGTアソシエイションの坂東正明代表(67)は、将来に向けた二つの施策を打ち出した。一つはデジタル技術を活用し、サーキットに来場する観客に向けたサービスの充実だ。もうひとつが、持続可能なモータースポーツを目指した環境対策に踏み出す事。レース距離の延長や新燃料の導入を来季に見据え、その足場固めの1年と位置付けた。さらに10年後も「音が出るレース」の開催を目指し、プラスチックゴミの削減や、サーキット内で自然エネルギーを使った自家発電を計画するなど壮大な夢を明かした。

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スーパーGTの将来に向けて熱く語るGTアソシエイションの坂東正明代表
スーパーGTの将来に向けて熱く語るGTアソシエイションの坂東正明代表
 新型コロナウイルス禍で迎える3年目のシーズン。開催に向けた感染予防対策は基本的に昨年までをベースにするが、まん延防止等重点措置も解除され、お客さんをたくさんサーキットに迎えることになる。会場に足を運んでくれた人たちが、いかにして楽しめるコンテンツを用意できるかが問われるだろう。

 その一つとして、サーキットビジョンと同じ公式映像を、サーキット内で視聴できる環境を整えた。ライブ配信アプリを使い、サーキット内限定で見られるシステムを構築。サーキットビジョンが見られない場所でもレース内容を把握できるようにした。音声はピエール北川さんの場内実況を流し、臨場感を高めるようにした。

 ラップタイムの配信は今まで通りのアプリで継続する。すべてのデジタルコンテンツを一つにまとめて展開することもできるが、スマートフォンの限られた画面の中で欲張ると、どうしても少し見づらくなってしまう。現在試験的な運用を進めているその他のコンテンツと合わせ、今後はうまく割り振っていき、「DX(デジタルトランスフォーメーション=進化するテクノロジーが人々の生活を豊かにする)」を進めていきたい。

 将来に向けた取り組みとして、温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を見据えた対策の土台を築く1年にしたい。これからも魅力あるレースを続けていくには、将来に向けたビジョンをしっかり持ち、着実に進めていかなければならない時代を迎えた。

 その第一歩として、昨年から掲げているレース距離の延長がある。今後使えるタイヤのセット(本)数を減らすことで、これまでのグリップ(接地力)重視のタイヤから、耐久性重視にシフト。生産する本数も減らしてもらえば、結果的に二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えることができるはずだ。

 エンジンも距離が伸びることにより、必然的に出力よりも燃費性能を重視した開発に移っていくと思う。今年は300キロレースを従来通りに行うが、一部の大会で450キロレースを行い、来年以降に向けた足場つくりにしたい。
今年は数多くの観客を迎えるため、来場者の満足度を上げる施策を進める=第2回公式テストから
今年は数多くの観客を迎えるため、来場者の満足度を上げる施策を進める=第2回公式テストから
 来年は化石燃料を一切使わない「カーボンニュートラルフューエル」を使う予定だ。昨年からGT500クラスを戦うトヨタ、ホンダ、日産の3メーカーに対し、採用を検討している海外製燃料のベンチ(台上)テストをお願いした。感触が良く、現在使っている無鉛ハイオクガソリンに近い燃料に仕上がっており、今後、海外メーカーにも成分表を送ってベンチテストの依頼をかける。それを受け、8月の第5戦後のテストで全チームに使用を予定している燃料を提供し、サーキットで最終確認をして、その後のタイヤメーカーテストなどを経て本格導入につなげていく。

 来年は全8大会開催するとして、カーボンニュートラルフューエルが約30万リットル必要になる。海外からの輸送や生産過程でCO2を排出するが、計算上では今までよりも抑えられる見込みだ。目標は国産化して、さらなる削減につなげたい。

 カーボンニュートラルフューエルの一般での実用化には法整備も必要で、時間はかかるかもしれない。それを後押しするため政府や石油連盟などと話し合いを進めながら、モータースポーツも産業分野でのCO2削減に積極的にかかわっていきたい。

 スーパーGTを観戦するお客さんは年間で約50万人だが、その人たちが1カ月1キロのプラスチックゴミの削減に協力してくれたら、単純計算ながら年間で600万キロ近い削減となり大きな広がりになる。さらに自動車産業にかかわる550万人が同じような活動をしてくれれば、年間で6600万キロの削減につながり、ものすごい環境対策になると思う。
 壮大な計画になるが、将来的にはサーキットでまかなう電気は、敷地内に設置した風力発電や太陽光発電でまかなうようにしていきたい。スーパーGTを開催している6会場の自治体とも連携して、何とか実現できるよう力を注ぎたい。

 電動化を含め、そうやって徹底した環境対策を推し進めることで、個人的には10年後でもやりたいという思いが強い、レース本来の醍醐味(だいごみ)であるエンジンを使った「音が出るレース」を許してもらえるのではないか。

 心に抱いた夢を実現するためにも、これからはいろいろな企業とコミュニケーションを取らないとならない。当面は日本の基幹産業である自動車産業会に、国内モータースポーツを支えてもらう関係を築くなどして、10年後でも「音が出せるレース」をするために全精力を注ぎたい。