スーパーGT2023開幕
ゼッケン1を背負って戦うインパルの日産Z
ゼッケン1を背負って戦うインパルの日産Z
 スーパーGTの2023年シーズンが、第1戦「OKAYAMA GT 300 RACE」(4月16日決勝=岡山国際サーキット)で幕を開ける。昨季のGT500クラスは初投入の日産Z旋風が吹き、平峰一貴(31)/ベルトラン・バゲット(37)組のチームインパルが27年ぶりの戴冠を果たした。ゼッケン1を背負う今季は、長年チームを率いた星野一義さん(75)が総監督となり、長男の星野一樹監督(45)の新体制になった。「昨年の自分たちを超える」という挑戦者魂を貫き、再びの快進撃を狙う。

世代交代!星野一樹監督「昨年の自分たち超える」

息子にチームを託した星野一義総監督 (右)名門インパルを率いる星野一樹新監督(左)
息子にチームを託した星野一義総監督 (右)名門インパルを率いる星野一樹新監督(左)
 名門チームが世代交代を果たした。闘将と呼ばれた一義さんが総監督に退き、息子の一樹新監督にインパルのかじ取りを託した。

 闘争心むき出しだった一義総監督だが、どことなく好々爺(や)の雰囲気を醸し出す。「今のレースは昔と随分違うし、若い連中に任せた方がいい。ピット戦略などの素早い判断も、僕がやるよりも断然いいからね。良いチームになってきたよ」。新たな歩みを始めた新生インパルを高く評価する。

 実は昨年から監督代行になった息子が、実際の指揮を執っていたという。その一挙一動を見守った一義総監督は、「一歩じゃなく、四歩ぐらい下がって(チームを)見ていると、視野が広がってすべてが見渡せる。企業の会長さんが、玄関の掃除をしている話を聞くが、あれと似たような感じかな」と笑った。

 チームを託された一樹新監督だが、新たなシーズンへの気負いはない。「肩書が変わっただけだから。責任感は強くなったけど、やることは昨年と同じ。チームに加わって、いきなり『全部やれ』って言われた昨年の方が緊張した」。シーズン中盤から調子を上げ、厳しい戦いをくぐり抜けて頂点に上った昨年の経験は大きな糧となった。
昨季の快走を再現する覚悟の平峰(左)とバゲット
昨季の快走を再現する覚悟の平峰(左)とバゲット
 現在のチーム状態も悪くないという。2月に本格化したタイヤメーカーテストや、3月の公式テストでは車群に埋もれていたが、「開幕前に悪いところを出し切れた感じ。ポジティブな所も、ネガティブな所もあるが、やりたいことはすべてやり切れた。何とか(開幕に)間に合った」と言い切る。車両開発が凍結されている今季に向け、実戦でものを言うタイヤと車体の合わせ込みを着実に進めた。

 ドライバーも新しいシーズンへ強い気持ちで臨む。平峰は「テストでは自分たちが速いのか、遅いのか分からない」と慎重だが、「再びチャンピオンを取るため、やるべき事をしっかりとやり、シーズンを通して頑張りたい」と狙うものは一つ。1年を通して力強い戦いを続け、再びの王者をたぐり寄せることを思い描いた。

 同僚のバゲットもその気持ちは変わらない。「ターゲットはもちろんチャンピオン。もう一度取るために全力を尽くすよ。クルマの状態も悪くないし」。昨季は来日9年目でようやくつかんだ日本一。もう一度上り詰めたい欲も出てきた。事前テストでは昨年の強みだったロングランはいま一歩だったが、チームと力を合わせて開幕までに克服してくるはずだ。

 準備が整った一樹新監督だが、挑戦者の姿勢を崩さない。「連覇なんて考えていない。そんなに甘くないのは分かっているし、気持ちは(挑戦者だった)昨年の今ごろと一緒。目標は『昨年の自分たちを超える』こと。それができれば、チャンピオン争いに加わることができるはず」。若き指揮官が率いる新生インパル。チャレンジャー精神を貫き、23年シーズンへ繰り出す。

開発者の声 CNF対策、1年を通した戦い

 今季のGT500は車両開発が凍結され、23年仕様「日産Z」も基本的に昨季型と違いはないという。日産の松村基宏GT500総監督は「エアロなどの外観は開発が凍結され、改良できる部分はなく、(昨年から)変更ありません。エンジンはカーボンニュートラルフューエル(CNF)の導入に合わせ、今季用の新しいものを投入します」と説明した。

 課題はバイオマス由来の非化石燃料「CNF」への対策だ。通常のガソリンより揮発性が弱く、エンジンオイルに溶け込みやすい性質がある。「燃料の特性に合わせて適合を進めている最中。ドライバビリティの面では(シーズン中も)ずっと続けていくしかないでしょう」。気温の変化などにも対応しなければならず、1年を通した“戦い”になりそうだ。

 昨季は選手部門の1、2位を占めたZだが、松村総監督は慎重だ。「チームがミスをしなかったり、的確な戦略を採るなど頑張った結果。今年もチームと一緒に努力を続けていきたい」。快進撃を収めた昨年同様、地道な作業を続けていく。