8耐の“台風の目”と呼ばれるにふさわしいチームに
若手エガーター起用の理由とは
若手とベテランの融合で2年連続の表彰台を獲得したチームカガヤマの加賀山(カメラ=久野功)
若手とベテランの融合で2年連続の表彰台を獲得したチームカガヤマの加賀山(カメラ=久野功)
 加賀山就臣(40)は昨年の鈴鹿8耐ではK・シュワンツ(50)を引っ張り出し、朋友の芳賀紀行(39)を呼び寄せ3位表彰台を獲得。今年は現役モト2のD・エガーター(スイス・23)と芳賀紀行と挑み、2年連続の3位を獲得した。加賀山に今年の8耐で伝えたかったことを聞いた。(聞き手=佐藤洋美)

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 −連続3位表彰台おめでとうございますでいいですか?

 「狙っていたのは優勝だから、満足はしていないけど、表彰台に上がれたことは嬉しかった。昨年は脱水症状が出るまで頑張ってくれた紀行(芳賀)が表彰台に上がれなかったから、今年は絶対に一緒に立ちたいと思っていたので、念願がかなった。それにエガーターにも表彰台からの景色を見せることが出来たしね。笑顔で登ることが出来た」

 −素晴らしい活躍だったと思います。

 「昨年はレジェンドのケビンと組んだ。今年は真逆の発想で若手を引っ張りだした。エガーターは見込んだ以上の走りをしてくれたと思う。初めての8耐テストで、初めてのマシン、チーム、コース、戸惑うことばかりだったと思うけど、それでも俺や紀行よりも速いタイムを出した。違う環境にチャレンジしたことで、奴はヒントを掴み、8耐テスト後のモト2で初のポールポジションを獲得から初優勝し、8耐に来てくれた。今回エガーターは一度も言い訳することなく、常に前に進もうとしてくれた。それは今の日本の若手に学んでほしいこと。現状、用意出来たもので最高を引きだそうとする姿勢。あるものに自分を合わせて行く応用力。世界基準って、こういうことだって俺も目が覚めるような気持ちになった」

 −加賀山選手の見る目の確かさもあると思います。

 「エガーターのような素質を持った発展途上の才能あるライダーは、吸収して成長するんだと思う。きっとエガーターは8耐を経験したことで、一皮むけたというか、ライダーとしてステップアップ出来たと思う。それを大切にしてほしいと思っている。そして、8耐をステップボードにしたいと、世界レベルの若手が8耐を目指してくれることを願っている。そうなれば、また8耐は盛り上がるよね」

 −エガーターが才能あふれるライダーであることは誰もが認めることでしたが、スタートライダーに起用したのは、正直驚きました。

 「予定では12時過ぎに雨が来るから、俺が雨を走ることになっていた。でも、悪天候によりレースディレイになり、スタートライダーを変更しようとしたけど、病気とか、どうしようもない理由以外は変更出来ないレギュレーションで、エガーターに頑張ってもらうしかない状況だった。雨のテストはほとんどしていなかったから、ちょっとハラハラした」

 −ちょっと?

 「う〜ん。かなりかな(笑)。スタートしてすぐにピットインして俺が出て行こうとか、いろいろ考えたけど、エガーターを信じた。信じるしかないと思った。もちろん、ハプニングにも備えて、メカニックと相談して、いろいろと準備しながら走りを見ていた。ホールショットを奪って、その後ポジションは落としたけど、それでもトップグループでつないでくれた」

 −芳賀選手は1度のみの走行で、ファンとしてはさみしかったのですが。

 「実は俺も、かなり紀行の使い方を悩んだ。紀行は俺なんかより2枚も3枚も上手。ものすごい能力を持ったライダーだって、俺が一番認めている。アベレージも3人の中では1番良かった。でも、今回はエガーターの走り込みを中心としたテストで、紀行の走行時間は少なく、エガーターにシフトした作戦で行くことにしたんだ。それを紀行は理解してくれた」

 −加賀山選手は、監督として作戦を考え、ライダーとして走りを追求しセッティングを出す。チームマネージメントをしてコーディネーターもするといくつもの仕事を同時にこなしています。8耐はスプリントと比べて作業量が多い。昨年も感心しましたが、今年もものすごい能力だなと思っていました。

 「自分でもよくやるよって思う時もある。でも、本当に支えてくれる人がたくさんいてチームカガヤマは成り立っている。今年は武田雄一が、レースウィークは「ライダーに集中してくれ」と言ってくれた。武田もライダーとして現役だし、チームの戦力だけど、昨年も今年も裏方に回ってバックアップしてくれた。今年はさらに力を入れてくれて、俺の背中を押してくれたと思う。チームカガヤマは、本当に最高のチーム。俺の目標は、もちろんレースで勝つことだけど、他にもある。皆がこのチームで、もう一度やりたい。来年も一緒にやりたいと言ってくれること。実はケビンも、今年良く遊びに来てくれた。居心地がいいんだと思う。みんなもう一度って言ってくれるから、それも俺の励み」

 −そのチームカガヤマで8耐勝利を飾ることが出来たら最高ですね。

 「8耐で勝つということは、リスクを冒して攻めなければ辿りつかないんだと思う。それだけ厳しいことだって思う。だから、優勝候補のライダーたちは、勝負賭けて転倒のリスクを覚悟しながら戦っている。安全確実だけでは勝てない。だから、勝った時の感動が大きいんだよね。チームカガヤマも、攻めて行けるチームになりたいと思う。もっと、もっと、力を付けたい」

 −加賀山選手がシュワンツ選手を引っ張り出したことから、今年はシュワンツ(50)と辻本聡(54)のレジェンドチームが誕生。宮崎祥司(50)、塚本昭一(54)といったライダーたちが8耐参戦。横浜元町パレードや横浜スタジアムの始球式といったイベントも加賀山選手が口火を切り、広がりを見せています。レース界に与える影響の大きさでも尊敬を集めていますが。

 「モータースポーツが普及してほしい。そして、楽しんでほしいんだよね。これからは、若手育成を含めて、考えながら、出来ることを確実に形にして行きたいと思っている。いつか町の人たちが、普通にレースのことを話題にしてくれるといい。その日を夢みて、みんなでがんばりたい」