TSRの(左から)リア、藤井監督、フック、ディメリオ
TSRの(左から)リア、藤井監督、フック、ディメリオ
 世界耐久選手権(EWC)の強豪「F.C.C. TSR Honda France」も8耐に帰ってくる。母体となる「テクニカルスポーツレーシング(TSR)」は鈴鹿8耐で3回の優勝を誇る名門チーム。今年も勝つつもりで臨むことは言うまでもないが、シーズンが単年度になって鈴鹿8耐が最終戦ではないことが少し残念だという。シリーズチャンピオン獲得への土台固めに集中する。

 TSRホンダ・フランスはかつて、ロードレース世界選手権(WGP)、全日本ロードレースに参戦してきた。だが、チームを率いる藤井正和監督がEWCを観戦して「ここなら世界一を目指せる」と確信。16年のルマン24時間レースに挑戦し、いきなり3位表彰台を獲得した。そこから完全にEWCにシフトし、17─18年シーズンではルマン24時間レースで優勝。そのまま最終戦の鈴鹿8耐に流れ込み、ワールドチャンピオンを獲得した。日本のチームとしては初の快挙だった。
その表彰式で、藤井監督は大勢のファンの前でこう語った。

 「まずわれわれがこの場所に立てたのは鈴鹿のおかげだと言いたい。鈴鹿で勝ちたい、結果を出したいと思いながら、チャレンジを続けてきた。鈴鹿の表彰台は別格です。われわれはトップライダーをそろえている訳でもないし、マシンもトップではない、チームだって特別なものではないが、それでも世界一になれるんだということをたくさんの人に見せたかった。このような結果を残せたのは、日本の皆さま、すなわち“チームジャパン”が支えてくれて、後押ししてくれたから。鈴鹿に帰ってくれば、必ずチャンピオンになれると信じていた」
 18─19年シーズンは、鈴鹿8耐で4位に入りランキング2位に浮上した。19−20年は後半のボルドール24時間、鈴鹿8耐が中止となり、4戦を戦ってランキング3位で終えた。21年はランキング5位だった。

 これまでEWCは、1シーズンが年をまたいだスケジュールで行われ、鈴鹿8耐が最終戦に組まれてきた。だが、新型コロナウイルスの影響で2年間の休止となり、3年ぶりに開催される鈴鹿8耐は今季第3戦で、シーズン途中のレースとなった。

 「シーズンまたぎの戦いでなくなってしまったのが悲しい。シリーズを戦い、ここ鈴鹿8耐で日本のファンにタイトル獲得を報告できることを大事に考えていただけに残念だ。戦い方が最終戦とシーズン途中のレースでは変わってくる」(藤井監督)
 今季はジョシュ・フック(オーストラリア)、マイク・ディメリオ(フランス)、ジーノ・リア(英国)を起用。開幕戦となったルマン24時間で3位、2戦目のスパ24時間でも3位を獲得して、現在ランキング2位につけている。

 フックは15年にはTSRから全日本ロードJSB1000にフル参戦、その後、WSBに転向するが、17年からTSRでEWCを戦い始め、エースライダーとしてなくてはならない存在となっている。

 「一番好きな国が日本で、一番好きなトラックが鈴鹿。自分のライディングに合っていると思うから鈴鹿は大好きだ。鈴鹿8耐は強豪が多いけど、TSRのためにベストを尽くす」と闘志を燃やす。

 ディメリオは08年WGP125ccクラスの世界チャンピオンで、モト2、モトGPにも参戦した。17年からEWCに参戦し、18─19年シーズンにTSRに移籍するや、その速さで今やTSRの大黒柱になっている。ディメリオは「TSRは、さまざまな国籍の人が一つになって戦う、インターナショナルなチーム。みんなで力を合わせ、少しでも良い位置でフィニッシュしたい」力を込める。

 今季からTSRに合流したリアは、スーパースポーツ世界選手権(WSS)で活躍、12〜14年までEGPモト2に参戦し、その後もWSSで活躍し英国スーパーバイク(BSB)を戦ってきた。「TSRは家族のようなチームで、違和感なく溶け込めて、チームメートともうまくやれている。鈴鹿の戦いがチームにとっても重要なことは分かっているので、集中して挑む」と気合が入っている。

 藤井監督はEWCを戦うためにスペインに拠点を置き、そこでスタッフを集め、メカニックを育て、日本人スタッフを含め、インターナショナルなチームを編成し挑んできた。それでも、TSRの本拠地の鈴鹿で行われる戦いには並々ならぬ思いがある。

 「年々EWCのレベルは上がっている。感覚としてはモトGPを戦っている意識に近い。ものすごいレベルの高さだ。ここに人生最後の詰めというつもりで挑んでいる。カワサキ、ホンダのワークス勢を食うつもりで戦う」と、17─18年シーズンのフィナーレの再現を目指す。
 ▼ジョシュ・フック 93年1月9日生まれ、29歳。オーストラリア出身。15年全日本ロード参戦、同年鈴鹿8耐2位。16─17年の鈴鹿8耐3位。17─18年シーズンEWCチャンピオン。18─19年同ランキング((R))2位。19─20年(R)3位。21年(R)5位。
 ▼マイク・ディメリオ 88年1月17日生まれ、34歳。フランス出身。08年WGP125ccチャンピオン。09〜13年モト2、14、15年モトGP参戦。17─18年EWC(R)2位。19年以降のEWC(R)はフックと同。
 ▼ジーノ・リア 89年9月18日生まれ、32歳。英国出身。07年、モトクロスからロードレースに転向、欧州スーパーストック600に参戦し、09年同チャンピオン。10年はWSS、12〜14年はWGPモト2、18〜21年はBSBに参戦。21年EWC(R)11位。