「憧れのチームだった」エース大久保はエヴァのファン
2022年鈴鹿8耐特集
8耐に挑むトリックスターの(左から)山本レーシングディレクター、大久保、佐野、鶴田監督
8耐に挑むトリックスターの(左から)山本レーシングディレクター、大久保、佐野、鶴田監督
 「トリックスターレーシング」はEWCにおける日本のパイオニアだ。「エヴァンゲリオン新劇場版」シリーズのプロモーションも兼ねて発足した「エヴァンゲリオンレーシング」とタッグを組んで10年にレース参戦を開始し、今年が13年目。8耐には「EVA RT 01 Webike TRICSTAR Kawasaki」として、モトEで活躍する大久保光(28)らを起用してビッグチャレンジをかける。
 コラボする映画のほうは昨年、シリーズ完結版『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が上映されたが、レースの継続参戦を望む声に後押しされ、鈴鹿8耐参戦が決まった。チームを率いる鶴田竜二監督は89年カワサキワークスオーディションに合格し、90年に全日本ロードレースTT─F3で、00年にスーパーネイキッドクラスでタイトルを獲得した。01年には自身のチーム「トリック☆スターレーシング」を立ち上げ、全日本参戦を開始した。鶴田監督も自ら走った09年の鈴鹿8耐では2位となって表彰台に上った。

 12年にはEWCを戦うGMT94(ヤマハ)と3位を争ってリタイアしたが、その後、GMT94のクリストフ・グィオ監督から鶴田監督の元に手紙が届いた。そこには「鈴鹿8耐ではEWC組はポイントを取ることさえ厳しい戦い、それでもEWCタイトルのためには1ポイントだって大事だから、遠い日本にやって来る。その特別の大会で奇跡のように表彰台に上れたのはトリックスターと最後までバトルをして緊張感を保つことができたからだ。とても感謝している」とつづられていた。

 一方、鶴田監督はGMT94の粘り強さをEWCから学びたいと思い、13年にはオールジャパンのチームを結成してルマン24時間レースに乗り込んで9位で完走した。初の24時間での完走は喝采を浴びたが、鶴田監督には「もっとできたはず」という苦い思いが残ったという。その思いを胸に、16─17年シーズンにEWCフル参戦を果たし、ボルドール24時間で3位表彰台、ランキング10位を獲得している。
 その後もEWCへの思いは消えず、海外チームとコラボし、近年はカワサキ・フランスを支援し、18─19年のタイトル獲得を支えた。鶴田監督は「初参戦の13年からずっと変わらずにEWCを訪れ、自分ができることは何かを考え、できることをしてきた。また戦いたいと思っている。鈴鹿8耐でチームの存在を示したい」と語る。

 モトE参戦中の大久保光をエースライダーに、全日本ロードST600クラスで活躍していた佐野優人、そして最後まで調整を重ねて獲得したのが耐久スペシャリストのエルワン・ニゴンだ。

 さらに、15年アジアロードAP250王者で現在は後進を指導する山本剛大がレーシングディレクター(RD)としてサポート。よりライダーに近い視点でアドバイスしてチームの底上げを図り、鶴田監督のフォローを担う。
 大久保は「エヴァンゲリオン主人公の、碇シンジが14歳で、自分と同い年で物語が始まり、劇場版、アニメ、漫画と全て見ている。エヴァのチームが始動してから気になる存在で、初号機カラーのNinja ZX─10Rを駆って、碇シンジのプラグスーツのデザインをあしらったレーシングスーツをまとい鈴鹿8耐に参戦することに憧れていたので、参戦が決まってとてもうれしい。しっかりと期待に応える走りがしたい」と意気込む。エヴァのファンだったことがきっかけとはなったが、鶴田監督は「スーパースポーツ世界選手権(WSS)で頑張っていたことが起用の理由」としっかり大久保の実力を評価。同様に佐野も鈴鹿の速さでは定評があり、その可能性を見込んで起用に至ったという。

 佐野は「鈴鹿8耐では知らない人がいない有名チームだけに、うれしさの反面緊張もある。Ninja ZX─10Rに最初は戸惑いもあったが、今では自信を持って走行できている。大久保選手、エルワン選手は経験豊富なライダーなので、2人から多くのことを吸収してレベルアップし、チームに貢献できるよう頑張ります」と気合を込めた。

 トリックスターとニゴンとの付き合いは古く、16─17年シーズンに同チームがフル参戦した時にはレギュラーライダーとして参戦。16年のボルドール24時間では3位表彰台に鶴田監督と一緒に上っている。18─19年はSRCカワサキに所属したが、トリックスターの支援を受けてタイトルを獲得している。ニゴンは「5年ぶりにトリックスターに戻ってきた。大好きなチームと再びレースができることを楽しみにしている」と期待を込めた。

 6、7月に行われた鈴鹿8耐事前テストには、大久保、佐野が参加し、鶴田監督、山本RDとともに入念な準備を重ねてきた。

 鶴田監督は「大久保、佐野は合同テストで着実に成長しており、大久保はチームベストタイムを更新、佐野選手もそれに迫るペースで走行を重ねていたのでとても期待が持てる。ニゴンはEWCチャンピオンの強力なライダー、素晴らしい3人のライダーとスタッフとともに勝利を目指す」と語った。EWCでは日本チームの先駆者であり、ヨシムラ、TSRと並ぶ知名度を持つトリックスターが、鈴鹿8耐でその存在感をアピールする。
 ▼大久保光(おおくぼ・ひかり)93(平成5)年8月11日生まれ、29歳。東京都出身。08年全日本に参戦し、10年JGP3王者。12年アジアロードのCBR250アジアドリームカップ王者。16〜20年はWSS参戦。21年からモトE。22年は第4戦を終えランキング((R))8位。
 ▼佐野優人(さの・ゆうと)97(平成9)年1月11日生まれ、25歳。大阪府出身。18年全日本ST600参戦、(R)5位。19年同(R)8位、20年(R)7位。21年はスポット参戦。鈴鹿中心にレース活動を展開している。
 ▼エルワン・ニゴン 83年9月27日生まれ、38歳。フランス出身。99年レースデビュー。10年フランス国内シリーズチャンピオン、EWC参戦。12年BMWオフォシャルライダーとして活動。14年EWCルマン24時間優勝。18─19年EWCチャンピオン。