前回覇者レイが最強布陣で灼熱の地に降臨
2022年鈴鹿8耐特集
 世界耐久選手権(EWC)は、他のモータースポーツイベントとは違う特徴がある。8〜24時間の耐久レースには一部夜間走行が含まれるほか、とりわけユニークなのは、各チームが自由にタイヤを選択できることだ。これは世界選手権では珍しく、熾烈(しれつ)なタイヤ戦争も見どころだ。その重要イベントの鈴鹿8耐を支えるのがブリヂストンで、前回までに14連勝を達成。2000年代の本格参戦にもかかわらず、短期間で鈴鹿8耐になくてはならない存在になったブリヂストンの強さとは−。

 3年ぶりの開催となる第43回鈴鹿8耐は、EWCシリーズの中でも異彩を放っている。8耐だけに出場する、メーカー直属のワークスチームと強力なプライベートチームが、EWCのレギュラーチームと激しい戦いを繰り広げることで独特の華やかさと存在感を放ち、世界中にファンを持っている。

 EWCには「フォーミュラEWCクラス」と、より改造範囲が制限されて市販車に近いマシンで争われる「スーパーストック(SST)クラス」の戦いがあるが、ブリヂストンは、ワークスの激突、EWCのタイトル争い、SSTの戦いの全てを支えながら、鈴鹿8耐の総合優勝、15連覇を目指す。

 前回の19年に勝利を飾ったのはカワサキで、26年ぶり2度目の優勝を喜んだことは言うまでもない。しかし、終盤に落ちた雨で赤旗中断となり、チェッカーなきフィニッシュに、カワサキ陣営は“もやもや”が残ったという。

 それだけに、すっきりとした勝利獲得に向け、今回は「Kawasaki Racing Team Suzuka 8H」を結成した。スーパーバイク世界選手権(WSB)で6度ものタイトルを獲得しているジョナサン・レイ。WSBのレイのチームメートのアレックス・ローズ、英国スーパーバイク(BSB)のレオン・ハスラムという3人の英国人を起用する。

 レイは「ローズもハスラムも鈴鹿8耐で3勝を挙げている最強のチームメート、目指すは勝利のみ」と言う。レイが勝利すれば8耐3勝目。ローズとハスラムは4勝目となり、歴代2位タイに名を連ねることになる。

新加入レクオーナ進撃

 対する「Team HRC」はワークスマシン開発を担う長島哲太、BSBの高橋巧、WSBのイケル・レクオーナ(スペイン)の体制。7月の公開テストでは総合トップタイムをたたき出し、その速さをアピールした。ホンダは42回の鈴鹿8耐の歴史で27回もの勝利を数える最強王者だが、最後の勝利は14年で、5大会も未勝利に終わっている。

 長島は「高橋選手は尊敬する先輩で、心強い味方。イケルはCEV(スペイン選手権)を走っていたころからの付き合いで信頼するライダー、この2人と、これがHRCという勝ち方を見せたい」と張り切っている。長島とレクオーナは初の鈴鹿8耐制覇、高橋が勝てば4度目で、ローズやハスラム同様に歴代2位タイとなる。メーカーのプライドを懸けた激突は見ものだ。
 EWCは16年から、スポーツイベントのシリーズ戦としては例を見ない、年をまたいだ戦いを開催してきた。18─19年シーズンは鈴鹿8耐が最終戦になって、SRCカワサキフランスがタイトルを獲得した。新型コロナウイルスの影響でスケジュールが調整され、今季の鈴鹿8耐は第3戦に位置し、最終戦はボルドール24時間耐久(9月17〜18日決勝、仏ポールリカール)となる。タイトルを争うチームにとっては大量ポイントを獲得して最終(第4)戦につなげる戦いとなる。

 現在ランキングトップは「Yoshimura SERT Motul。日本の耐久の古豪ヨシムラと、フランスの耐久王者SERTがコラボして誕生したドリームチームは、初年度の21年にルマンとボルドールの2大24時間レースを制していきなりチャンピオンを獲得。今季はV2に照準を合わせている。8耐ではライダーに渡辺一樹を起用し、ザビエル・シメオン、シルバン・ギントーリで挑む。

 EWCランキング2位は藤井正和監督が指揮する「F.C.C. TSR Honda France」(ジョシュ・フック/マイク・ディメリオ/ジーノ・リア)だ。16年からEWCに本格的に参戦を開始し、17−18年シーズンに日本のチームとして初となるシリーズチャンピオンの栄冠を得た。18−19年はランキング2位、19−20年同3位、21年は同5位だっただけに、今季の目標はもちろんタイトル奪回だ。

 ランキング3位には「YART−YAMAHA OFFICIAL TEAM EWC」(カレル・ハニカ/マービン・フリッツ/ニッコロ・カネパ)がつける。09年にはEWCチャンピオンに輝いたヤマハを代表するチームだ。事前テストではホンダ、カワサキの間に入る2番手タイムをたたきだしている。鈴鹿8耐を舞台にした、日本の関わるチームによるシリーズチャンピオン争いから目が離せない。

8耐はブリヂストン勢も参加

 EWCに比べればローコストで参戦できることもあって人気が高まっているSSTクラス。ヨーロッパでタイヤはダンロップのワンメークだが、鈴鹿8耐ではブリヂストン勢も参入する。注目は、93年のロードレース世界選手権(WGP)250ccチャンピオンの原田哲也氏が「NCXX RACING with RIDERS CLUB」(ヤマハ)の監督として参戦すること。ライダーは、アジアロードレース選手権で戦う伊藤勇樹、全日本ST1000の南本宗一郎、ST600の井手翔太のラインアップだ。

 また、「Kawasaki Plaza Racing Team」は、全日本ST1000の岩戸亮介をエースライダーとして、スーパーバイク世界選手権SS300に参戦する岡谷雄太と、昨年まで全日本で活躍していた清末尚樹を起用。監督はカワサキのプライベーターとして長年活躍してきた西嶋修が務める。これからのレース界を担う若手ライダーたちがブリヂストンのタイヤを得て過酷な8耐に挑戦する。
 出場45チーム中27チームがブリヂストンタイヤを履くが、そのなかの19チームにブリヂストンは、2輪車用プレミアムタイヤブランド「BATTLAX」(バトラックス)のタイヤを供給する。
 鈴鹿8耐は日中の路面温度が60度を超えることもあるなど、車両にもライダーにも非常に過酷な耐久レースだが、06年から14年連続でブリヂストンタイヤ装着チームが優勝を果たしている。

 EWCを戦う各メーカーは、ホンダ「CBR1000RR─R」、ヤマハ「YZF─R1」、スズキ「GSX─R1000R」、カワサキ「Ninja ZX─10R」、BMW「M1000RR」といった各社の誇る、4気筒4ストロークの市販スーパースポーツを投入している。排気量は1000cc(2気筒は1200cc)までで、耐久レース用に改造がなされている。その大きな特徴は(1)ヘッドライトの点灯の義務づけ(2)タイヤ交換や給油を素早くできる装置の設置(3)冷却系システムの増強などだ。
 カワサキのNinjaは「ZX─10R」と「ZX─10RR」の2種類がある。


◆BATTLAXオリジナルグッズ販売やトークショーなど盛りだくさん

 ブリヂストンでは、鈴鹿サーキット内に特設ブースを設け、以下のような、さまざまな展示や企画を用意している。

▼鈴鹿8耐にゆかりのあるゲストやタイヤ開発エンジニアによるトークショー
▼「10年後、20年後にも『走るわくわく』を提供しつづける」というブリヂストンの想いを表現したコーナー「Tomorrow Road」の設置(現役トップライダーやレジェンドライダーの直筆のメッセージとサインを展示)
▼レース車両またがり体験やタイヤウオーマー体験、クイズラリー、SNS投稿キャンペーンなどの企画
▼BATTLAXオリジナルグッズの販売(今回初)。