ホンダが8耐でワークスチームを復活させてこれが3回目。「Team HRC」は、ロードレース世界選手権(WGP)で活躍していた長島哲太(30)をテストライダーとして迎えて鈴鹿8耐マシン「CBR1000RR─RSP」の開発を続けてきた。その長島に、英国スーパーバイク選手権(BSB)の高橋巧(32)、スーパーバイク世界選手権(WSB)のイケル・レクオーナ(22)の2人を加えたフレッシュな顔ぶれをそろえた。狙うは6大会ぶりの28勝目だ。
長島哲太
長島哲太
 今年で43回目を迎える“真夏の祭典”でホンダはこれまで圧倒的な実績を積み上げてきた。通算27勝。97〜06年に10連勝、08年に1勝し、10〜14年も5連勝。つまり97〜14年の18年間で負けたのはヨシムラが勝った07、09年だけ。8耐と言えばホンダ─そんな黄金時代が続いた。しかし、14年を最後にライバルチームにお株を奪われるレースが続いている。そんな現状を打破しようと、18年にはレッドブルと組んでワークスチームを復活させて2位、19年には3位表彰台に立った。今回はワークス復帰の3回目のレースとなるが、メンバー選びはまさに実力主義。現時点で最も8耐にふさわしいライダーが選出された。

 まず、20年までWGPのモト2を戦ってきた長島が21年からホンダのテストライダーとなって、鈴鹿8耐用マシンの開発テストに従事。6月の事前テスト前に、非公式にWSBのレクオーナとチャビ・ビエルゲ(スペイン)が鈴鹿を訪れてプライベートテストに参加。その後に、BSBの高橋巧と水野涼がテストに参加して、長島と3人でマシンを駆った。

 HRCの山野一彦監督は「レクオーナも、ビエルゲも、慣れない鈴鹿で、すぐに2分6秒台にタイムを乗せて速さを見せてくれた。長島、高橋、水野も遜色のない走行で、ライダー選びは正直悩んだが、5人のテスト結果を見て、アベレージタイムを参考に最終的に長島、高橋、レクオーナの3人体制で、22年の鈴鹿8耐に臨むことを決定した」と説明した。
高橋巧
高橋巧
 長島は14年からWGPモト2に参戦。15、16年はCEVレプソル選手権に転じたが、17年にモト2に復帰し、20年の開幕戦カタールGPで初優勝を飾った。その年をランキング8位で終えたあとシートを失ったが、「モトGPに挑戦したい」という願いをかなえるため、21年からホンダとテストライダー契約を交わした。モトGPを中心にさまざまなマシンのテストを担いつつ、代役でモト2に参戦するなど、八面六臂(ろっぴ)の大活躍。現役ライダーとしてのスキルは今も世界レベルを保っている。

 「鈴鹿8耐の、それもホンダワークスチームのライダーとして走れることを光栄に思う。ホンダライダーなら、誰もがHRCからの鈴鹿8耐参戦を願っている。そして勝って、あの表彰台の真ん中に立つことはライダーの夢。その夢をかなえたい。それも、ホンダらしい圧倒的な強さで」と抱負を語った。プライベーターでは経験豊富だが、ワークスチームから8耐に出るのは初めてだけに、その思いの熱さが伝わってくる。

 その長島が、どうしてもチームメートにと望んだのが高橋巧だった。高橋は鈴鹿サーキットのJSB1000のレコードホルダーで、鈴鹿8耐初参戦の08年から連続出場し、優勝3回、2位1回、3位4回と12回中8回も表彰台に上っている“8耐スペシャリスト”。安定した速さは群を抜いており、「鈴鹿8耐のマシンは長島選手が開発を進めているので、そのマシンのパフォーマンスを引き出すため、限られた時間の中でどこまで合わせていけるのか自分への挑戦でもある。選んでもらえたので期待に応えられるようにと思っている。鈴鹿8耐で生き残るには、絶対に転ばないこと。一度のミスで全てが終わってしまう。やるべきことをやれば結果はついてくる」と自信をのぞかせた。
イケル・レクオーナ
イケル・レクオーナ
 レクオーナは15〜16年、CEVのモト2で長島と戦ったが、16年途中からWGPモト2にも参戦。20〜21年には最高峰クラスのモトGP参戦を果たした逸材だ。今季からHRCワークスライダーとしてWSBに参戦し、6戦を終了してランキング6位につけている。

 「鈴鹿8耐を走るのは初めての挑戦になるが、それがHRCという最高のチームと言うのがとても幸運だ。8耐は気温も湿度も高く、オーバーテークも難しく、体力的にも大変な戦いということは理解している。長島選手も高橋選手も、もちろんチームも鈴鹿8耐を良く理解しているから、彼らに教えてもらいながら、優勝のために自分の仕事をこなしたい」と謙虚にコメントした。

 3人が顔をそろえたのは7月の事前テストの2日間。そこでHRCは総合トップタイムをマークして実力を早くもアピールした。3年ぶりの開催となった鈴鹿8耐のために集められたHRCのスタッフは、走行終了後にはピットワークの練習をこなし、それをライバルチームが偵察にきていた。今大会で最も注目を集めるチームは、順調なステップで本番に臨む態勢を整えた。

 山野監督は「ライダーの力を引き出すために、スタッフも懸命なサポート体制を整えている。19年には鈴鹿8耐最多優勝(5勝)の記録を持つ宇川徹が監督を務めたが、彼が組織したスタッフを引き継ぎ、宇川にもサポートしてもらう。また、モトGPからの帰国組など豊富なキャリアを持ったスタッフたちに加え新人スタッフも起用し、HRCのレースの伝統を引き継ぎつつ、鈴鹿8耐を戦っていく」と決意を込めた。6大会ぶりの優勝でホンダはプライドを取り戻せるか。
 ▼長島哲太(ながしま・てつた)92(平成4)年7月7日生まれ、30歳。神奈川県出身。11年全日本GP─MONOチャンピオン。14年WGPモト2参戦。15年CEVモト2に転じ、16年同ランキング((R))2位。17年にWGPモト2復帰。20年には初勝利を挙げ(R)8位。21年からホンダのテストライダー。
 ▼高橋巧(たかはし・たくみ)89(平成元)年11月26日生まれ、32歳。埼玉県出身。04年全日本ロード参戦。08年にはGP250クラスで史上最年少となる18歳でチャンピオン獲得。15年にはWGP日本GPのモトGPクラスにワイルドカード参戦。17年JSB1000チャンピオン。20年WSB参戦、21年からBSB参戦。
 ▼イケル・レクオーナ 00年1月6日生まれ、22歳。スペイン出身。15年にCEVモト2参戦開始。17年はWGPモト2レギュラー参戦し、18年バレンシアGP2位、19年タイGP3位。20、21年モトGP参戦(最高6位)。22年にHRC入りして現在はWSB(R)6位。