リンス絶好調 仕上がりMAX
 新型コロナの影響で約4カ月遅れで開幕を迎える今季のモトGPクラスだが、スズキワークス「チーム・スズキ・エクスター」が台風の目であることは変わらない。毎年のようにダークホースと言われてきたが、今年は堂々の首位候補。ライバルも警戒感を募らせている。昨年2勝のアレックス・リンス(24)と、2年目のジョアン・ミル(22)のスペイン人コンビが、ホンダの牙城を切り崩し、ヤマハの野望を砕く─。

 今や堂々たるモトGPのトップライダーに成長したリンス。マレーシアテスト(セパン)に続くカタールテスト(ロサイル)の初日(2月22日)にはいきなりトップタイムをマークして今季の活躍を期待させた。昨年は2勝したものの浮き沈みが大きく、ランキングは4位。同3位とはわずか6ポイント差で、目標の「トップ3」を逃した。今年はその悔しさを晴らす年でもある。

 「テストは順調。予定していたメニューは全て消化できた。特にセパンでは、リズムとレースペースが改善された。ベストラップも更新できてうれしい」と自身も今季の飛躍を確信している。

 ワークスマシン「GSX─RR」は車体、スイングアームが新設計となった。「エンジンがパワフルになり、エアロダイナミクスが進化した。加速もブレーキングも良くなった。去年を上回る進化だ」とリンスは手応えをアピールした。

 コロナ禍で開幕戦の舞台が得意のヘレスサーキット(スペイン)になったのも好材料。昨年のヘレスでは王者マルク・マルケスを猛追して2位。スペイン人のワンツーフィニッシュで大会を大いに盛り上げている。

 モトGPにデビューした17年はけがのためにシーズン前半を棒に振ったが、終盤戦にはレースで4位に食い込んだ。2年目の18年は、第2戦アルゼンチンGPで初表彰台(3位)を獲得したのを始め、シーズン5回の表彰台でランキング5位。

 そして3年目の昨年は、第3戦アメリカズGPでスズキにとって3年ぶりの優勝を遂げ、第12戦イギリスGPでも勝った。ともに高速サーキットでの優勝で、陣営にとっても大きな自信になった。

 明るくて気さくな性格なリンス。スタッフとの一体感は高く、優勝したときのチームの喜び方とにぎやかさは人柄を現してクラスNo1だ。

 今年はスズキのレース活動60周年という節目のシーズン。リンスには、2000年のケニー・ロバーツJr以来、20年ぶりのタイトル獲得が期待されている。

ミル エース超えのポテンシャル

 スズキで2年目を迎えるミルも大注目だ。モトGPルーキーだった昨年はけがのため本来の力を存分に発揮できなかった。が、ライダーのポテンシャルを考えれば、リンスを超える活躍の可能性もある。

 開幕戦がカタールからヘレスになったのを皮切りに、現在開催が決まっている13戦中7戦がスペインで行われる。母国戦ではめっぽう強いだけに、地元の利を生かして一気の台頭もありそう。

 「本当に良い感じでオフのテストをこなせた。去年はけがで思うように自分の力を出せなかったが、シーズン終盤戦からいい走りができるようになった。今年は開幕戦から期待に応えたい」。昨年ランキング12位に終わったライダーとは思えない強気なコメントだ。

 公式テスト前に行われたマレーシアのシェークダウンテストでは、初日&2日目をミルがテストを担当、最終日にリンスにバトンを渡すなど、チームでも大きな役割をこなした。

 180センチを超える長身をマシンの上で自在に動かすセンスの良さは、昨年ルーキーで話題を独占したヤマハのファビオ・クアルタラロにも負けない。目標は「まずは表彰台」と言うが、その日は遠くないムードだ。

2人とも契約延長 佐原伸一PL

 ○…スズキは5月までにリンス、ミルとも2年契約を延長。2022年までの体制を整えた。佐原伸一プロジェクトリーダーは「現在のラインアップを維持できることを誇りに思う。技術的な観点から同じライダーを起用する一貫性は非常に重要だ。成長著しいリンスには結果を期待。ミルは経験を積めば必ず成功できると信じている」と期待を込めた。

従来型超えに自信 河内健TM

 ○…GSX─RRの開発を担当する河内健テクニカルマネジャーは「今年は新しい車体を投入したが、初テストとなったマレーシアでは、2人のライダーの評価は思ったよりも良かった」とほくそ笑む。「新しいフレームは剛性的にはそれほど大きく違わないが、新しいことにトライした。コンセプトはライダーの能力を100%引き出せるバイク。いいものをつくれば2人のライダーの評価もそろう」。今季型は、なかなかできなかった“従来型超え”の自信作だ。

ギントーリ&津田 マシン開発を支える

 ○…マシンの開発を支えるのは、元スーパーバイクチャンピオンでモトGPの経験も豊富なシルバン・ギントーリ(38)。今年のオフもフル回転でテストを行った。

 モトGPはシーズン中のエンジン開発は禁止されており、レギュラーライダーのテストも制約が多い。さらに、過密スケジュールもあって、テストライダーの役割は大きくなっている。スズキはギントーリと全日本の津田拓也(35)で開発を進める。


日本GP中止 第15戦以降未定
 2020年のロードレース世界選手権(WGP)は史上最多の20戦が行われ、フィンランドGPが38年ぶりに復活する予定だった。しかし、コロナ騒動で第2戦以降は延期、中止が相次ぎ、フィンランドも消滅。あろうことか、日本GPまで中止の憂き目に遭った。二転三転して差し替えられたのが上記の改訂版カレンダーで、第15戦以降の3戦は日程が未定のままシリーズが再開される。