フランス人初チャンプへ全速 クアルタラロ
WGP参戦60年目
 昨シーズン、14戦を戦って最多の7勝を挙げながら無冠に終わったヤマハがタイトル奪還に挑む。開幕前のカタールのウインターテストでは2チームの4人が上位に名を連ねる好調な滑りだしで、期待は現実味を増している。今年はヤマハがWGPに参戦して60年目の節目の年。注目はファクトリーチームに昇格したファビオ・クアルタラロ(21)。昨年は後半精彩を欠いたが、速さはピカイチ。レースでの勝負強さを身に付ければチャンピオン候補だ。

 19年からモトGPに参戦し、素晴らしい活躍でその名を世界に知らしめたクアルタラロがいよいよ、ファクトリーチームのモンスターエナジー・ヤマハ・モトGPの一員としてシーズンを戦う。3月上旬、開幕戦の舞台となるロサイル・インターナショナル・サーキット(カタール)で行われた今季初のテストで、彼への期待はさらに膨らんだ。

 2日目にはトップタイムをマーク。その後の3日間は本番を見据えて、ヤマハYZR─M1のセットアップに集中。5日間総合ではトップのJ・ミラー(ドゥカティ)から0・080秒差の3番手と、ファクトリーライダーとしてまずは及第点の出足だった。

 初テストを終えたクアルタラロは「5日間を通していいテストができた。連続ラップのペースには本当に満足している。開幕が待ちきれない。必要なことはすべてできたと思う」と満足そうに語った。

 2019年、モトGPにデビューしてから常に話題を提供してきた。まずは第2戦スペインGPでマルク・マルケス(ホンダ)の持つ史上最年少PP記録をブレークして周囲の度肝を抜く。その年は6PP、決勝では7度の表彰台(2位5回、3位2回)に立ってランキング5位と健闘、ルーキーオブザイヤーを獲得した。コロナ禍で行われた昨年は、さらに大きな成長を見せて3勝を挙げる大活躍。シーズン最多9人のウイナーが誕生する大混戦の中で3勝は当時のチームメートだったフランコ・モルビデッリと並ぶ最多勝タイだ。総合ランクは転倒の影響で8位に終わったものの、予選では4回のPP獲得するなどフロントローの常連となった。ファクトリー入りした今年はどのレースでも最優先の状態が用意されるだけに、チャンピオン候補の筆頭に挙げられる。

 フランスのニース出身。少年時代からスペインを中心にレース活動を行い、14年にはスペイン選手権のモト3で11戦9勝と一気に才能を開花させた。

 昨年、初優勝を達成したスペインGPでは涙にくれた。転倒したレースでも悔し涙を浮かべるなど、感情をあらわにするのも魅力のひとつでファンは多い。今年はフランス人初の世界チャンピオン誕生とヤマハの期待の中で開幕戦を迎える。

現役26年目のロッシ…チャレンジャーとして再び頂点を目指す

 1996年にグランプリデビューし、今年が26年目。最高峰クラスで22年目を迎えるバレンティーノ・ロッシ(42)は今年、ヤマハファクトリーからペトロナス・ヤマハ・セパンレーシングチームにクアルタラロと入れ替わる形で移籍した。

 心機一転で迎えた今季初テストでは、ベテランらしく着実にセットアップを進めた。上位陣がサーキットベストタイムを更新するハイレベルな“バトル”のなか、総合11番手だったが、「初めて1分53秒台で走れた。これはとても重要なこと」と手応えをアピールした。

 ロサイルサーキットで自己ベストを更新できた要因はコーナーの進入スピードが上がったこと。投入されたYZR─M1の新型シャシー、空力パーツ、そして、新しいチームとの良好なコンビネーションが相まって本来の走りが復活、トップから1秒差に11台という接戦の戦いに加わった。

 2月16日に42歳になった。これまで何度も世代交代の波を乗り越えてきたベテランは、今回のテストでも「さすがロッシ」とライバルや関係者に言わしめた。

 モトGPは現在複数年契約が常識だが、「一年一年、一戦一戦が勝負」と言い切るロッシは、今年も単年度契約で挑む。まずは4年ぶりの優勝に向かって「強いライバルは大勢いるけど、頑張って食らい付いていくよ」。過去9度のタイトルホルダーが、チャレンジャーとして再び頂点を目指す。

NEWビニャーレス万全

タイトル獲得へ弱点克服

 ヤマハファクトリーで5年目のシーズンを迎えるマーベリック・ビニャーレス(26)は、開幕前のカタールテストで、自身が抱える最大の課題克服に取り組んだ。これまでも、フリー走行での連続ラップでは優勝間違いなしと言われた。予選でも一発の速さを生かして好グリッドを獲得。だが、そうしたことをすべて台なしにしてきたのが、スタートの失敗と序盤のペースの遅さだった。積み上げてきた“優勝への道”があっけなく吹き飛んでしまうケースがしばしばあった。

 ウインターテストでは、その弱点克服に取り組んだ。レースを想定して燃料はフルタンク。そして、1日に十数回及ぶスタート練習は、執念すら感じさせるものだった。

 「ラップの速さ。そして連続ラップでのリズムある走りには自信はある。でも、最大の課題はスタートと序盤にペースを上げられないことだったが、テストは成果あるものになった。いいレベルにいると思う。準備はできた」と万全をアピールした。

 1995年1月12日生まれの26歳。13年、18歳でモト3チャンピオンを獲得し、14年にモト2クラスに上がって4勝を挙げた。その速さを買われて15年にスズキからモトGPにデビューし、17年にヤマハに移籍。以来、毎年チャンピオン候補に挙げられながら、これまでランキング3位が2回。スタートと序盤のペースの悪さが足かせとなってきた。

 今年はクアルタラロ加入で、チームメートがチャンピオン争いの最大のライバルとなる。速さでは一歩も引けを取らない2人だけに安定性が最大のかぎになりそうだ。

 年明けには地元スペインの女性と結婚した。起伏の激しいメンタル面にもいい影響を与えそうで、レースに集中できる態勢は整った。“ニュービニャーレス”がそろそろ大仕事をやりそうだ。

モルビデッリ 師匠ロッシに続いてモトGP王者を狙う

 昨年、ヤマハ勢最高のランキング2位につけたペトロナス・ヤマハ・セパンレーシングチームのフランコ・モルビデッリ(26)が、開幕前のテストで順調な仕上がりを見せた。5日間のテストで総合4番手。ヤマハ勢ではビニャーレス、クアルタラロのファクトリー勢に僅差で続いた。

 マシンは、昨年戦った20年型YZR─M1でスタートして21年型に移行し、着実にメニューを消化した。連続ラップでは開幕Vを期待させる安定した走りで注目を集めた。

 昨年はシーズン中盤からメキメキ力を発揮して初優勝を含む3勝を挙げた。今年はその勢いを駆って序盤からダッシュする意気込み。「カタールでテストしただけだが、いい感じで走れている。おそらく他のサーキットでもいいと思う」と今季型バイクに自信を見せた。

 17年のモト2チャンピオン。18年にホンダ系チームからモトGPにデビューし、19年にはペトロナス・ヤマハ・セパンレーシングチームに移籍。脚光を浴びる同僚のクアルタラロの後を追った。昨年はそのライバルに優勝回数で並び、ランキングで上回る大躍進を見せた。

 ロングヘアーがトレードマークで精悍(せいかん)な面持ちに似合わず、誰よりも神経質な面がある。食生活からトレーニングなど、すべてがレースファーストの日々という。今年は師匠でもあるロッシがチームメートとなり、師に続いてモトGPチャンピオンを狙う。ヤマハ勢の中では地味な存在だが、粘り強さでは一番。チャンピオン候補の一人であることは間違いない。

60周年記念カラーでテスト走行

クラッチロー、中須賀、野左根を起用

 〇…タイトル奪還に挑むヤマハは、3人のテストライダーを起用してカタールテストではマシン開発に集中した。昨年までのLCRホンダから移籍したカル・クラッチロー(35)を筆頭に、中須賀克行(39)、野左根航汰(25)の3人が3台のテスト車でさまざまなメニューを消化した。

 白地に赤のラインを入れた「ヤマハ60周年」の記念カラーでテストに挑んだクラッチローは、さすがの走りでレギュラー陣に加わるスピードを見せつけた。