中上貴晶が21年型RC213Vで初表彰台&初優勝目指す
「期待に応える準備はできている」
 昨年は無冠に終わったホンダが、タイトル奪還に向けて巻き返しに挑む。LCRホンダで4年目を迎える中上貴晶(29)は、初めて新型のRC213Vを得て心機一転。ウインターテストで順調にセットアップを進め、初表彰台、初優勝へ大きな手応えを得た。絶対王者のマルク・マルケス(28)は残念ながら開幕2戦の欠場が決まったが、第3戦ポルトガルGP(4月18日決勝)には出られそう。大黒柱の復帰はもうすぐだ。

 モトGP4年目の中上がすごくポジティブだ。「テスト最終日は悪天候で走れなかったが、それまでの4日間でしっかり走ることができた。自分にとっては初めて乗るバイク。そして昨年の最終戦ポルトガルGP以来の走行だったので、すごく新鮮だった。ロサイルは好きなサーキット。開幕が楽しみ」と手応えある内容に表情もキリリと引き締まる。

 今年はコロナ禍の影響でエンジンの開発が凍結され、ホンダの2チーム4人ともに20年型エンジンを搭載した2021年型「RC213V」が投入される。ワークスチームと同じモトGPマシンでシーズンを戦う中上は、初めて経験する20年型エンジン、21年型の車体テストに多くの時間を割いた。

 「エンジンのキャラクターは、去年乗っていた19年型とは思っていた以上に違った。そのため電子制御を自分の乗り方に合わせてもらいながら同時に車体のテストをした。フィーリングはすごくいい。20年型エンジンの速さは当然大きな武器になるし、今年はレースの戦い方も違ってくるはず」とモチベーションも高まっている。

 昨年までは1年落ちのワークスマシンだったが、反面、1年分のデータを有効活用できるなどメリットは多かった。そのためセットアップの方向性に迷うことはなく、コロナ禍で短期決戦となった昨年は、そのメリットを最大限生かした。

 だが、最新型のワークスマシンを相手では、ここ一番の勝負どころで苦しい場面もあった。今年はそのデメリットが解消された分、自分でしっかりバイクづくりを行わなければならない。これまで以上にテストの重みが増した。

 「今年はすごく重要なシーズン。当然、自分への期待は高い。今年はやっと最新型でレースができる。プレッシャーはあるが、このマシンなら自然とそういうレースができると思う。今年は常に表彰台争い、優勝を目指すことが目標になる」。これまでよりワンランク高い目標設定となった。

 国内では無敵を誇った中上は、2008年に125ccクラスで世界に挑戦した。しかし、そこでは思うような結果を残せず一度はシートを失う。その後、発奮して11年に国内レースで圧倒的な強さでタイトルを獲得。12年にモト2で再び世界に挑戦して、2勝を含む表彰台の常連の一人に成長した。そして18年にLCRホンダからモトGPにデビュー。昨年は初PPを始め4度のフロントロー獲得。決勝では4位が2回と善戦した。

 レース中心の生活を送り、性格はマイペースで頑固。それは自信の裏付けでもある。
「もう、いつでも表彰台に立ってもおかしくないと自分でも思っている。その準備はできているし、今年はその期待に応えたい」

無念の欠場…絶対王者の復活は3戦目以降

マルク・マルケス

 マルケスの復帰は第3戦以降になることが直前に決まった。4月12日に行われるメディカルチェックでOKが出れば、晴れて復帰が決定。第3戦から王者が出場することになる。

 昨年、モトGP初戦となった第2戦スペインGPの決勝で転倒し、右腕上腕を骨折、シーズンを棒に振った。回復は困難を極め、3回の手術を受け、今月12日にはマドリードの病院で精密検査を受け、骨の結合が順調に進んでいることが確認された。医師からバイクに乗る許可が下りたため、13日にはミニバイクでテスト走行を開始。16、19日には市販車のRC213V─Sで走行。その間にはカタールでワクチン接種も受け、準備万端だったが、22日のメディカルチェックで大事を取ったほうがいいと判断。「ここ数週間行ってきた回復プランを継続することが最も賢明であるとアドバイスを受けた」とマルケスはリリースで説明した。

 デビューから7年で6回のタイトル獲得を果たしたモトGPの主役。昨年は初の長期不在で、9人ものウイナーが誕生する大混戦となり、J・ミル(スズキ)がチャンピオンになったが、マルケスが復帰して本来の走りを取り戻せば、そんなカオス状態にも終止符が打たれるだろう。世界中のモトGPファンが王者のカムバックを待っている。

ポル・エスパルガロ、初ライドでベストタイム更新

KTMから移籍

 KTMからホンダに移籍したポル・エスパルガロ(29)が、ニューチャレンジとなる2021年に向けて気合の入った走りを見せた。

 レギュラーライダーとしては最多の256ラップと精力的。ベストタイムは1分53秒899で総合10番手だったが、初ライドとなるRC213Vで、昨年、KTMでマークしたベストタイムを0・6秒短縮。マシンの乗り換えがスムーズに進んだことを証明した。

 「データをたくさん収集できた。初テストとしてはよくやれたと思う。ホンダRC213Vは自分の自然なライディングに合っているし、乗っていてすごく楽しい。すべてがうまくいけば、いいシーズンになると思う」と明るい表情だった。

 1991年6月10日生まれ。スペイン・カタルーニャサーキットのすぐ近くで生まれ育ち、マルク・マルケスは、レースキャリア通じてのライバルだ。2013年にモト2チャンピオンになり、その後、ヤマハ、KTMでモトGPを経験し、トップライダーの一人に成長した。今年はそのマルケスとチームメートになるだけでなく、これまで夢のマシンと言い続けてきたホンダのマシンとワークスチームで戦うことが実現し、これまで経験したことがないモチベーションでシーズンを迎える。

兄に続け!最高峰制覇 アレックス・マルケス

 アレックス・マルケス(24)が、レプソルホンダからLCRホンダに移籍。中上のチームメートとして今季を戦うことになった。

 レプソルからLCRの“移籍”は、むしろアレックスにとってはプラスに働くとみられている。偉大な兄との比較から解放されて伸び伸び走れる環境になり、初のテストでは193ラップをこなし、昨年より1秒以上タイムを短縮する1分54秒692をマークした。

 ただ、勢い余って5日間で5回の転倒。4日目(11日)の転倒では右足甲にひびが入るけがをして最終日の走行をキャンセルした。

 「転倒が多くチームには申し訳ない気持ちだが、マシンのフィーリングはとてもいい。チームも全力でサポートしてくれる。開幕までには右足は治ると思う」と2年目のシーズンに気合を入れた。

 14年にはモト3でチャンピオンになり、兄マルク(モトGP)と史上初の同時世界チャンピオンに輝いた。そしてモト2チャンピオンになった19年にも2度目の兄弟同時チャンピオン獲得。世界最速の兄弟が、今年もレースシーンを引っ張ることになりそうだ。

 課題は一発の走り。予選グリッドの悪さが解消できれば表彰台争いの常連になることは間違いない。今年の目標はモトGPクラス初優勝。次なる目標は兄に続いての最高峰制覇と、周囲の期待は大きい。

無冠の昨シーズン

 ○…マルケス不在だった2020年、ホンダは1982年から2019年まで38年間続けてきたシーズン連続優勝記録が途絶えた。これまでにライダーズタイトル21回、コンストラクターズ25回、チームタイトル9回獲得。最高峰クラス309勝と圧倒的な強さを発揮してきたが、昨年は無冠に終わっただけに、陣営はタイトル奪還へ燃えているが、大黒柱のマルケスの復帰がかぎになることは言うまでもない。


◆開幕2戦へ準備OK テストライダー・ブラドル

 テストライダーのステファン・ブラドル(31)が、開幕前のテストで話題をさらった。レギュラーライダーに交じって上位につける快走。テスト後半はメニューを消化したことから周回数も減ったが、トータル238ラップを周回、1分54秒210のベストタイムで総合12番手につけた。マルケスが出場できないときのために実戦に向けてセットアップも行った。

 昨年はマルケスの代役として12戦に出場して最高位は7位。11年のモト2チャンピオンでホンダ、アプリリアなどでモトGPを経験してきた31歳のベテランが、今年もホンダ陣営のスーパーサブとして開幕2戦を戦うことになった。