衝突前にハイサイド〜他マシンとの接触はなし
調査委が最終報告
プロジェクターを使って大治郎選手の事故調査結果について報告する景山委員長(カメラ=河口貞史)
プロジェクターを使って大治郎選手の事故調査結果について報告する景山委員長(カメラ=河口貞史)
 故加藤大治郎選手の事故調査委員会(委員長・景山一郎日本大学教授)は28日、調査結果の最終報告をまとめ、会見した。調査報告書では、大治郎選手は4月6日に行われたロードレース世界選手権(WGP)開幕戦日本GPの決勝中3周目に新130Rを立ち上がった後、急にコントロールを失い、アウト側のタイヤ・バリアに激突したが、シケインへ向かう際のブレーキ時にハイサイドを起こし、その後ウィーブモードと呼ばれる2輪特有の振動現象が徐々に大きくなってコントロールを失ったと判断。ハイサイドに対処するためフロント・ブレーキを緩めたことが車載データから判明しており、後輪のグリップが回復したことでウィーブモードが発生したとみている。

 その後ハンドルを強く握ったことから振動が激しくなり、横方向に最大1.2G程度の重力がかかって車体から振り落とされそうになった、とした。調査委は「姿勢を大きく崩したことはシケイン方向から撮影された映像からも裏付けられ、他車との接触もなかった」としている。また、事故車両の前輪ブレーキ・ディスクが割れていたことが確認されているが、「車載データで衝突までタイヤは正常に回転しており、ロックした状態もなかった」などとし、エンジンその他の点でも車体に問題がなかったと結論づけた。

 しかし、ハイサイドにつながった原因については「スリップ率がそれまでの周で35%だったのに対し、衝突した周は38%に増加していた」という検証にとどまり、ハイサイドから衝突まで大治郎選手がクラッチを切った状態で走行していたことを新事実に挙げたものの「理由は不明」とするにとどまっている。

 直接的な死亡原因については「約150km/hでタイヤ・バリアに激突した」ことを挙げているが、直後にその先のスポンジ・バリアの側面にぶつかっていたことも指摘。2つのバリアの間は約1.2mのすき間があり、スポンジ・バリアの側面に頭が一瞬はまり込み、致命的な頚椎(けいつい)損傷を受けたと判断。「2つのバリアの間にすき間がなかった場合はスポンジ・バリアの側面に衝突することはなく、けがの大きさや形態が異なっていた」とし、防護パッドの設置場所によっては生存できた可能性も打ち出している。

 同調査委はホンダが事故原因究明のため、4月25日に設立した第3者機関。2輪車の運動解析を研究する景山教授を委員長に今泉博英氏(日本大学講師)、片山硬氏(日本自動車研究所安全研究部主任研究員)、恒成茂行氏(熊本大大学院教授)、難波恭司氏(元WGPライダー)の計5人で構成されているが、この最終報告をもって解散した。

 ▽金澤賢HRC(ホンダ・レーシング・コーポレーション)社長
 この提言、見解を厳粛かつ真摯に受け止めたい。ライダーは反応時間をどれだけ縮めていくかをトレーニングするが、人間だから反応し切れない何かがある。しかし、加藤選手は卓越した技量があるライダー。これは極限状態でのアクシデントであり、原因は特定できない。