第2戦日本GP編
序盤は王者ドゥーハン(右)を抑えたノリックだったが、パスされてからは経験の差を実感(カメラ=渡辺利博)
序盤は王者ドゥーハン(右)を抑えたノリックだったが、パスされてからは経験の差を実感(カメラ=渡辺利博)
 阿部典史にとって6回目の日本GPは、3位表彰台に立つ久しぶりの快走劇となった。絶好のスタートで10番グリッドから一気に4番手に浮上。序盤にはM・ドゥーハンとバトルを繰り広げた。もてぎを埋め尽くした6万5000人のファンの声援に後押しされ、降りしきる雨の中で激闘を展開した日本の工ースの胸中は――。
 久しぶりに雨のレースになった。というよりも、僕がグランプリにデビューしてからフルウエットの決勝レースは、95年の日本GP(鈴鹿)以来、これが2回目。それ以外だと、一昨年のオランダGPで途中から雨になっただけ。みんなにニッポンは雨が多いって言われるけど、確かにその通りなのかもしれないと思った。

 それにしてもすごい雨になった。125ccから250ccとレースが進んでいくにつれて雨脚が強くなって、500ccの決勝が一番コンディションが悪かった。2日目の雨のフリーでトップタイム。予選でも6番手とウエットではいい感じだったけれど、やっぱりドライで走りたかった。

 でも、そんなこと言ってられないし、グリッドにつく前のウオームアップでは伺度もスタートの練習をした。1周してくる間に4回もやった。雨のスタートは、すぐにホイールスピンしてしまうのですごく難しいからだ。

 そのかいあって、スタートはバッチリ決まった。もてぎの1コーナーは右のヘアピンなのでぐちゃぐちゃになることが分かっていたし、とにかくインヘインへとコースを取った。予想通りアウト側はぐちゃぐちゃ。ミック(ドゥーハン)が「1コーナーはすごいことになっていた」って言っていたけど、ホント、その通りのスタートだった。

 トップは(ケニー・ロバーツ)ジュニア。ラコーニが続いて、ミックが前を走っている。2周目にラコーニが転ぶ。前を走るミックのペースが全然上がらないのでパスして2番手へ。ジュニアはもともと雨のレースは速いけれど、今回はバイクもバッチリ決まっているようですごくスムーズに走っている。

 そのうちにミックが僕を抜いていく。でもすぐに抜き返すことができた。で、もう一度抜き返されたら、今度はあっという間に引き離されてしまった。

 それまで、今日のミックは大したことないなって思っていたけど、あの走りはさすがにミックだなって思った。僕を抜いてからのミックの走りは驚異的で、あの時点ではもうタイヤが滑り始めていて、あれ以上ペースを上げられなかったんだ。

 日本GPは一年に1回しかないし、絶対に勝ちたいレース。絶対に表彰台に立ちたかった。だから3位になれたことはうれしかった。チームもファンの人たちもすごく喜んでくれた。だけど、狙っていたのは優勝だったし、どこまで喜んでいいのかちょっと複雑な心境だった。

 なんたって、雨のレースで表彰台に立ったのは初めてだったんだよね。昔から雨は苦手だったし、それが去年くらいからうまく走れるようになった。何が変わったって言われても自分では分からない。でも、これが経験なのかなって思った。

 ドライだった初日の予選では、開幕戦のマレーシアGPでコシンスキーにぶつけられた左足の調子が悪くて10番手だった。すぐに足が痛くなって3周しかもたなかった。だから2日目から痛み止めの薬を飲んで、決勝は座薬を入れて走ることにした。開幕前のもてぎテストもうまく走れていなかったし、すごく不安だった。でも、走ってみたら足の痛みも薬のおかげでそれほど感じなかったし、最後まで走ることができた。

 決勝ではショウエイのスタッフの人たちが、ヘルメットのシールドが曇らないようにバッチリ対策してくれたことも僕の快走の大きな要因だった。チームのスタッフもヤマハの人たちもすごく頑張ってくれたし、ホント、みんなのおかげだった。

 それにしても、ジュニアと一緒に表彰台に立って不思議な気分だった。だってアイツとは、僕がアメリカに修行に行った15歳のときからの友達だし、それに何年か前まではチームメートだったしね。隣に立っているジュニアを見ていると、何だかグランプリだって気がしなかった。アイツには絶対に負けないといつも思っているけど、さすがに2戦連続で優勝されると、コンチクショウって思ってしまった。

 ホント、あっという間に開幕の2戦が終わった。これからはいよいよヨーロッパラウンド。今年はスペインとフランスの間にあるアンドラという小国にアパートを借りた。バルセロナは海、アンドラは山。車で2時間くらいの距離だけど、気分転換をうまくやりながら今年はいいシーズンにしようと思った。

 雨の中を応援してくれたファンのみなさん、本当にありがとうございました。

■1999年4月28日掲載