第9戦ドイツGP編
びっしり埋まったスタンドの前で思わずガッツポーズ。でもノリックはまだ満足しちゃいない(カメラ=竹内秀信)
びっしり埋まったスタンドの前で思わずガッツポーズ。でもノリックはまだ満足しちゃいない(カメラ=竹内秀信)
 得意のザクセンリンクへ勇んで乗り込んできた阿部典史。予選は渋滞のため満足のいくアタックができず8番手だったが、決勝では得意のロケットスタートを決め、序盤からトップ集団につけた。中盤はグリップ不足で5位に後退したものの、最後には盛り返して3位に食い込んだ。まさに驚異の復活。日本GP以来、今季2度目の表彰台を獲得したノリックの激闘31周がよみがえる。
 今回は、最後の最後まで気が抜けないヒヤヒヤのレースだった。とにかく抜きにくいサーキットで、反対にちょっとでもラインを外すと抜かれてしまう。抜き返しも大変。だから、スタートは絶対に失敗しないようにしようと、それだけを心掛けていた。

 8番グリッドからスタートして、1コーナーでジュニア(K・ロバーツJr)とコシンスキーの後ろにつけた時には、よっしゃ〜ッと思わず声が出てしまった。でも、予選から抱えていたフロントのグリップの問題がやっぱり解決していなくて、フィーリソグの悪さがどうも気にかかって仕方がなかった。

 それで1周目はやや抑え気味で走る。2周目からペースを上げようと思ったら、2コーナーでフロントがズリリリィ〜と大スライド。転倒寸前のスリップに遭って、あまりプッシュできないなと思ったんだ。

 そこで、とにかく自分のラインをしっかりキープして走ろうと思った。何とかトップグループにはついていけたし、我慢してチャンスを待った。そのうちに、予選で絶好調だったバロスに抜かれ、3列目から追い上げてきたクリヴィーレにも抜かれた。しかし、バロスがジュニアと接触してコースアウト。クリヴィーレがジュニアに追い付くと、トップの2台のペースが上がった。

 反対にコシンスキーがじりじりと落ちてきて、僕とチェカの前に立ちはだかる。3台でセカンドグループを形成することになったが、前のコシンスキーはタイヤの消耗が激しそうでつらそうだった。

 チャンスをうかがっているうちに、後ろのチェカにブレーキングで差されてしまった。あちゃ〜と思っているうちに、チェカが勝手にオーバーラン、続けてコシンスキーも立ち上がりでハイサイド気味になってオーバーランしたため、終盤になって難なくセカンドグループのトップに立つことができた。

 だが、チェカは執ように食らいついてきた。とにかく最終ラップの戦いになることは分かっていたし、絶対にラインを外さないようにと思った。ところが、コース中盤の下って上ってという左から左のコーナーでアウトにはらんでしまう。予想通りチェカがイン側に並んで来たが、次のシケインが右コーナーだったので、結果としてインを押さえて何とかクリア。あとは最終コーナーのブレーキングだけ。インを押さえるつもりでミドルラインから進入したら今度はアウトから並びかけて来る。なんてヤツと思ったけれど、またしてもインをピッタリと守った僕の作戦勝ち。本当にわずかの差でチェカを抑えきることができたんだ。

 久しぶりの表彰台。しかもチェカとの戦いに勝ったということもあって、ゴールした時は思わずガッツポーズ。優勝争いから離されてしまったのが残念だったけれど、まずまずのレースだった。

 前回のイギリスGPでは、僕には信頼してマシンを任せられるチーフメカニックがいないのが課題だと言った。今回は、チームと話し合って、スタッフも増強された。ヤマハからも今まで以上のバックアップをしてもらえて、本当に感謝している。今回はヤマハ同士で3位を争ったけれど、夏休み明けの次のチェコGP(8月22日決勝)では、ヤマハ同士で優勝争いがしたいと思った。

 それにしても疲れた。天気が良くて暑かったこともあるけど、観客の盛り上がりもすごくて、記者会見が終わってピットに戻るまでサイン攻め。いつになっても解放してくれなくて、頭がクラクラして貧血になりかけた。本当にピットに帰れるだろうかと心配になるほどだったんだ。

 来週はバレンシア(スペイン)でテストがある。日本に帰るのはその後になるけど、チェコからの後半7戦は毎回、表彰台に立てるようなレースがしたい。「3位で喜んでんじゃないぞ」って自分に言い聞かせているところだ。

■1999年7月21日掲載